2 / 14
その2
しおりを挟む
全く以て理不尽だ。何故そんな事を言われなければならないのか全く分からない。さっきも言った通り、私はそもそも、彼と婚約した覚えなんてないのだ。だから、婚約破棄なんてこともありえないのだ。
他の男性と親しくしているのに嫉妬したから?だけど、ちゃんとした理由があるんだ。私はお父様に剣を習っている。お兄様には勉強を教えてもらっている。他にも色々あるが、どれもこれも正当な理由で行っている事だ。だから私は悪くない。悪いのは全部レオンハルト様なのだ。なのにどうして婚約破棄されなければいけないのか。全く納得いかない。そもそも何でレオンハルト様との仲を疑われなくてはいけないのか。これほどまでに繰り返すのはばかばかしいかもしれないが、やっぱり私は最初から無実なのだ。私は他の男性と仲良くしたって、それは彼にとってはどうでもいい問題だと思う。
しかしながら、婚約破棄となってしまうと、いくら言いがかりだとしても、それは絶大なる効果を発揮することになるわけだ。そして、私はこの地位を危ぶまれてしまうわけだ。
そもそも、私は浮気をしている訳ではないのだ。たまに街に出かけるくらいいいじゃないか。それもダメだというなら、一体何をすれば良かったと言うのだ。レオンハルト様はまるで私が悪者みたいな言い方をしていたが、それは違うと思う。このまま話が進んでしまったら、私は被害者であるはずだ。何もしていないのにいきなり婚約破棄されるなんておかしい。絶対に許せない。
どこからか、怒りが込み上げてきた。そして、思わず声に出てしまったのだ。
「絶対復讐してやる!!!!!!!!!!」
独り言だったつもりなのだが、知らないうちに誰かの耳に届いていたらしい。
「ええええええええええええっ???????????」
突然の声に驚いて振り返る。するとそこには見知らぬ少年がいた。
「あー、やっぱりお前か……」
私は思わず質問してしまった。
「どちらさまですか???????????」
「俺だよ。フリッツ・フォン・ベルベット」
「……ああああああっ!!!!!!!」
「やっと思い出したか。ああ、長いな……」
目の前にいる人物を見て、私はようやくその正体を思い出した。
そうだ、彼は確か隣国の王子だ。以前一度だけ会った事がある。だが、その時はあまり話さなかったし、向こうも興味なさげだったので名前までは覚えていなかったのだ。
どうしてこの場所で隣国の王子と再会することになったのか……普通ならば疑問に感じるところなのだが、このときはそんなことを考えている余裕なんてなかった。
「久しぶりだな」
「……ああ、そうですねえっ……」
なんだか、返事が難しいと感じた。一応挨拶をしてみたが、どうやら彼も同じようで、表情は特に変わらない。
「ところで、さっき何か言ったか?」
「あー、うん……ええっと……」
「何かあったのか?」
「いや、特には何もございませんけれども……」
(今度こそ復讐してやるって呟いただけなんだけどね)
「それより、何か用でもあるのですか?」
「ん?別に。たまたま通りかかっただけだよ」
偶然を装いながらも、本当は待ち伏せしていたみたいなのだが、それは言わずにおく。
「でも、本当に久しぶりに見たな。元気そうでよかったよ」
「そう見えますか?」
「まぁな。ちょっと心配だったから様子を見に来たんだよ」
「心配だったですって?私のことが?」
フリッツ王子の言葉に首を傾げる。だって、1度しか会ったことのない人間を心配することなんて、普通はないだろう。私を心配してくれたという事は、やはりそれなりに好かれていると思ってもいいのだろうか。あくまでも勝手な想像にはなってしまうのだが。でもまあ、そう考えると少しだけ心が温かくなって来るような気がする。
そしてそのまま二人でしばらく他愛のない話をする。フリッツ様は私が思っていたよりもずっと話しやすかった。元々人当たりの良い方ではあったのだが、前回はもっと素っ気ないというか無関心といった感じだったように思う。それが今ではこんなにも普通に接してくれる。それは私にとってとても嬉しい出来事であった。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎて行くもので、そろそろ帰らないと日が暮れてしまう。
また明日も会う約束をした私は、名残惜しく思いつつもその場を離れる事にした。だが、いざ別れようとした時、突然腕を強く掴まれる。何事かと思い顔を上げると、いつの間に近づいて来たのか、すぐそこにフリッツ様の顔があった。思わず息を飲むほど整った容姿にドキリとする。だが、次の瞬間、私はとんでもない勘違いをしていた事に気付いた。彼の瞳には怒りが宿っていたからだ。
「お前、誰だ?」
「えええええええっ?????????」
「なんであいつと同じ匂いがすんだ?」
フリッツ王子の顔がだんだんと強張った。やっぱり、私にはその理由が分からなかった。
他の男性と親しくしているのに嫉妬したから?だけど、ちゃんとした理由があるんだ。私はお父様に剣を習っている。お兄様には勉強を教えてもらっている。他にも色々あるが、どれもこれも正当な理由で行っている事だ。だから私は悪くない。悪いのは全部レオンハルト様なのだ。なのにどうして婚約破棄されなければいけないのか。全く納得いかない。そもそも何でレオンハルト様との仲を疑われなくてはいけないのか。これほどまでに繰り返すのはばかばかしいかもしれないが、やっぱり私は最初から無実なのだ。私は他の男性と仲良くしたって、それは彼にとってはどうでもいい問題だと思う。
しかしながら、婚約破棄となってしまうと、いくら言いがかりだとしても、それは絶大なる効果を発揮することになるわけだ。そして、私はこの地位を危ぶまれてしまうわけだ。
そもそも、私は浮気をしている訳ではないのだ。たまに街に出かけるくらいいいじゃないか。それもダメだというなら、一体何をすれば良かったと言うのだ。レオンハルト様はまるで私が悪者みたいな言い方をしていたが、それは違うと思う。このまま話が進んでしまったら、私は被害者であるはずだ。何もしていないのにいきなり婚約破棄されるなんておかしい。絶対に許せない。
どこからか、怒りが込み上げてきた。そして、思わず声に出てしまったのだ。
「絶対復讐してやる!!!!!!!!!!」
独り言だったつもりなのだが、知らないうちに誰かの耳に届いていたらしい。
「ええええええええええええっ???????????」
突然の声に驚いて振り返る。するとそこには見知らぬ少年がいた。
「あー、やっぱりお前か……」
私は思わず質問してしまった。
「どちらさまですか???????????」
「俺だよ。フリッツ・フォン・ベルベット」
「……ああああああっ!!!!!!!」
「やっと思い出したか。ああ、長いな……」
目の前にいる人物を見て、私はようやくその正体を思い出した。
そうだ、彼は確か隣国の王子だ。以前一度だけ会った事がある。だが、その時はあまり話さなかったし、向こうも興味なさげだったので名前までは覚えていなかったのだ。
どうしてこの場所で隣国の王子と再会することになったのか……普通ならば疑問に感じるところなのだが、このときはそんなことを考えている余裕なんてなかった。
「久しぶりだな」
「……ああ、そうですねえっ……」
なんだか、返事が難しいと感じた。一応挨拶をしてみたが、どうやら彼も同じようで、表情は特に変わらない。
「ところで、さっき何か言ったか?」
「あー、うん……ええっと……」
「何かあったのか?」
「いや、特には何もございませんけれども……」
(今度こそ復讐してやるって呟いただけなんだけどね)
「それより、何か用でもあるのですか?」
「ん?別に。たまたま通りかかっただけだよ」
偶然を装いながらも、本当は待ち伏せしていたみたいなのだが、それは言わずにおく。
「でも、本当に久しぶりに見たな。元気そうでよかったよ」
「そう見えますか?」
「まぁな。ちょっと心配だったから様子を見に来たんだよ」
「心配だったですって?私のことが?」
フリッツ王子の言葉に首を傾げる。だって、1度しか会ったことのない人間を心配することなんて、普通はないだろう。私を心配してくれたという事は、やはりそれなりに好かれていると思ってもいいのだろうか。あくまでも勝手な想像にはなってしまうのだが。でもまあ、そう考えると少しだけ心が温かくなって来るような気がする。
そしてそのまま二人でしばらく他愛のない話をする。フリッツ様は私が思っていたよりもずっと話しやすかった。元々人当たりの良い方ではあったのだが、前回はもっと素っ気ないというか無関心といった感じだったように思う。それが今ではこんなにも普通に接してくれる。それは私にとってとても嬉しい出来事であった。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎて行くもので、そろそろ帰らないと日が暮れてしまう。
また明日も会う約束をした私は、名残惜しく思いつつもその場を離れる事にした。だが、いざ別れようとした時、突然腕を強く掴まれる。何事かと思い顔を上げると、いつの間に近づいて来たのか、すぐそこにフリッツ様の顔があった。思わず息を飲むほど整った容姿にドキリとする。だが、次の瞬間、私はとんでもない勘違いをしていた事に気付いた。彼の瞳には怒りが宿っていたからだ。
「お前、誰だ?」
「えええええええっ?????????」
「なんであいつと同じ匂いがすんだ?」
フリッツ王子の顔がだんだんと強張った。やっぱり、私にはその理由が分からなかった。
11
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
辺境伯は王女から婚約破棄される
高坂ナツキ
恋愛
「ハリス・ワイマール、貴男との婚約をここに破棄いたしますわ」
会場中にラライザ王国第一王女であるエリス・ラライザの宣言が響く。
王宮の大ホールで行われている高等学校の卒業記念パーティーには高等学校の卒業生やその婚約者、あるいは既に在学中に婚姻を済ませている伴侶が集まっていた。
彼らの大半はこれから領地に戻ったり王宮に仕官する見習いのために爵位を継いではいない状態、つまりは親の癪の優劣以外にはまだ地位の上下が明確にはなっていないものばかりだ。
だからこそ、第一王女という絶大な権力を有するエリスを止められるものはいなかった。
婚約破棄の宣言から始まる物語。
ただし、婚約の破棄を宣言したのは王子ではなく王女。
辺境伯領の田舎者とは結婚したくないと相手を罵る。
だが、辺境伯側にも言い分はあって……。
男性側からの婚約破棄物はよく目にするが、女性側からのはあまり見ない。
それだけを原動力にした作品。
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる