3 / 15
3
しおりを挟む
「それでは……今を持ちまして、私はこの場を去ってもよろしゅうございますね???」
ポワソン様があまりにも優柔不断でムカついたので、これ以上この空間にいたくありませんでした。
「まあ、もう少し待ってくれないか???」
葛藤と戦うポワソン様……でも、本当に関係なかったのですよ。私には。
「何を待つ必要があるんですか!!!」
私は思わず声を荒げてしまいました。こんな声を出すことがなかったので、ポワソン様はびっくりしているようでした。
「いいや、私の表現が悪かった。婚約破棄はその……まだ正式に決まったわけではなくて……」
「あら、決まっていないのですか???だって、双方が納得しているんですから、これ以上議論する必要はないのでは???」
「まあ、普通はそうなんだが……」
ポワソン様は明らかに慌てておりました。彼の今の心持ちを読み取ろうとも考えましたが、止めておきました。だって、他人の考えていることをスキャンするの、結構疲れるんですよ。自分の利益になることだったら、多少の疲労を覚悟してでもやりますよ。でもね、いまさらこんな男の考えが分かったところで、どうにもなりませんからね。
「それでは……ご苦労様でした……」
「いや、だから少し待ってくれと……」
ほんの一瞬だけ、彼の考えていることをキャッチしました。そこには、他の女の姿がちらほらと浮かんでおりました。なるほど、今日の交尾要員は公爵令嬢のステイシーとキャサリンだと分かりました。彼女たちは既にそれぞれの部屋で待機しています。でも、あまりにも私とポワソン様の話が長いものだから、少しイライラして、この部屋の前までやって来たようでした。
そして……大変な話を聞いてしまったと。私とポワソン様の婚約話がなくなってしまう……これは彼女たちにとっては大きなチャンスでした。次の婚約者に選ばれれば……それは家にとって大変な名誉ですからね。つまり、もちろん今日の二人に限らず、彼を取り巻く令嬢たちに同じ権利があるわけです。最初に身籠るのは一体誰なのか……それでおおよその勝負は決着することでしょう。
「ポワソン様!!!」
私は思わず言ってしまいました。
「いま、あなた様が考えていることを当ててみましょうか???」
私はイジワルな女なのでしょうか???自分ではいまいち分かりません。でもね、仕方ないと思うんですよ。だって、みんなが私どもを敵に回したがるから。だとしたら、もはや誰も信じることなんてできないじゃないですか。
「私と婚約破棄して今晩はフリー……外に控えている二人の令嬢……さあ、どちらから最初に抱こうか……違いますか???」
こんなことを言いだすものですから、ポワソン様はますます驚いてしまいました。まあ、無理もありません。当然のことだと思います。
「どうして……そんなことが分かるんだ???」
「まあ、なんとなく漠然とですね」
「はあっ……そうなのか……」
(やばいやばい……このことが皇帝陛下にばれてしまったら、それこそ私はどんなふうになってしまうのだろうか???ああ、非常にまずいことになってしまうな……)
「いまさら慌てる必要はないと思いますよ???」
「どうして……」
「もうこんな議論はお終いにしましょう。さあ、とっととそこの二人と夜をともにすればいいじゃないですか。誰も文句は言いませんよ」
私がこう言うと、例の二人は部屋の中に入ってきて、一瞬私の方を見ました。そして、すぐさまポワソン様の元に駆けより、
「王子様!!!」
と猫のように甘く囁くのでした。
「ねえ、今晩は私たちの相手をして下さるのでしょう???」
「ああっ、あああああっ…………」
これが本意……でも、この世界は少しずつまずい方向に動き出そうとしておりました。当然、誰も気が付きませんでしたけれども。
ポワソン様があまりにも優柔不断でムカついたので、これ以上この空間にいたくありませんでした。
「まあ、もう少し待ってくれないか???」
葛藤と戦うポワソン様……でも、本当に関係なかったのですよ。私には。
「何を待つ必要があるんですか!!!」
私は思わず声を荒げてしまいました。こんな声を出すことがなかったので、ポワソン様はびっくりしているようでした。
「いいや、私の表現が悪かった。婚約破棄はその……まだ正式に決まったわけではなくて……」
「あら、決まっていないのですか???だって、双方が納得しているんですから、これ以上議論する必要はないのでは???」
「まあ、普通はそうなんだが……」
ポワソン様は明らかに慌てておりました。彼の今の心持ちを読み取ろうとも考えましたが、止めておきました。だって、他人の考えていることをスキャンするの、結構疲れるんですよ。自分の利益になることだったら、多少の疲労を覚悟してでもやりますよ。でもね、いまさらこんな男の考えが分かったところで、どうにもなりませんからね。
「それでは……ご苦労様でした……」
「いや、だから少し待ってくれと……」
ほんの一瞬だけ、彼の考えていることをキャッチしました。そこには、他の女の姿がちらほらと浮かんでおりました。なるほど、今日の交尾要員は公爵令嬢のステイシーとキャサリンだと分かりました。彼女たちは既にそれぞれの部屋で待機しています。でも、あまりにも私とポワソン様の話が長いものだから、少しイライラして、この部屋の前までやって来たようでした。
そして……大変な話を聞いてしまったと。私とポワソン様の婚約話がなくなってしまう……これは彼女たちにとっては大きなチャンスでした。次の婚約者に選ばれれば……それは家にとって大変な名誉ですからね。つまり、もちろん今日の二人に限らず、彼を取り巻く令嬢たちに同じ権利があるわけです。最初に身籠るのは一体誰なのか……それでおおよその勝負は決着することでしょう。
「ポワソン様!!!」
私は思わず言ってしまいました。
「いま、あなた様が考えていることを当ててみましょうか???」
私はイジワルな女なのでしょうか???自分ではいまいち分かりません。でもね、仕方ないと思うんですよ。だって、みんなが私どもを敵に回したがるから。だとしたら、もはや誰も信じることなんてできないじゃないですか。
「私と婚約破棄して今晩はフリー……外に控えている二人の令嬢……さあ、どちらから最初に抱こうか……違いますか???」
こんなことを言いだすものですから、ポワソン様はますます驚いてしまいました。まあ、無理もありません。当然のことだと思います。
「どうして……そんなことが分かるんだ???」
「まあ、なんとなく漠然とですね」
「はあっ……そうなのか……」
(やばいやばい……このことが皇帝陛下にばれてしまったら、それこそ私はどんなふうになってしまうのだろうか???ああ、非常にまずいことになってしまうな……)
「いまさら慌てる必要はないと思いますよ???」
「どうして……」
「もうこんな議論はお終いにしましょう。さあ、とっととそこの二人と夜をともにすればいいじゃないですか。誰も文句は言いませんよ」
私がこう言うと、例の二人は部屋の中に入ってきて、一瞬私の方を見ました。そして、すぐさまポワソン様の元に駆けより、
「王子様!!!」
と猫のように甘く囁くのでした。
「ねえ、今晩は私たちの相手をして下さるのでしょう???」
「ああっ、あああああっ…………」
これが本意……でも、この世界は少しずつまずい方向に動き出そうとしておりました。当然、誰も気が付きませんでしたけれども。
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
妹に婚約者を寝取られましたが、私には不必要なのでどうぞご自由に。
酒本 アズサ
恋愛
伯爵家の長女で跡取り娘だった私。
いつもなら朝からうるさい異母妹の部屋を訪れると、そこには私の婚約者と裸で寝ている異母妹。
どうやら私から奪い取るのが目的だったようだけれど、今回の事は私にとって渡りに舟だったのよね。
婚約者という足かせから解放されて、侯爵家の母の実家へ養女として迎えられる事に。
これまで母の実家から受けていた援助も、私がいなくなれば当然なくなりますから頑張ってください。
面倒な家族から解放されて、私幸せになります!
【完結】断罪されるのは寧ろあなた達の方ですよね?
美兎
恋愛
「エアリス・ヴァイオラ!貴様がライラ・オーキッド男爵令嬢に数々の悪事を行ったその醜い心根に私は失望した!よってこの場を持ってお前と婚約を破棄する!!」
ざわざわと喧騒の中、人一倍大きな声でそう言いきったのはダスティ・クーズスト侯爵令息という一人の男だった。
わたくしを断罪するおつもりなんでしょうけれども、そう簡単にはいきませんよ。
相応の報いを頂いて貰います。
ショートショート。本編三話、ざまぁ三話で完結予定です。
※ざまぁでは暴力表現やグロ表現がありますので、ご注意ください。
わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。
和泉 凪紗
恋愛
伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。
三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。
久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。
【完結】お前の妹と婚約破棄する!と言われても困ります。本人に言ってください
堀 和三盆
恋愛
「カメリア・アイオーラ伯爵令嬢! 悪いがお前の妹との婚約は破棄させてもらうっ!!」
王家主催の夜会が始まるや否や、王太子殿下が私に向かいそう宣言した。ざわめく会場。人々の好奇の視線が私に突き刺さる。
そして私は思う。
(ああ……またなの。いい加減、本人に言ってくれないかしら)
妹は魅了のスキル持ち。婚約者達は本人を目の前にすると言えないからって姉である私に婚約破棄を言ってくる。
誠実さが足りないんじゃないですか? 本人に言ってください。
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)
青空一夏
恋愛
従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。
だったら、婚約破棄はやめましょう。
ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!
悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる