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「お前たちはまもなく死ぬ……空から落ちてくる鋼に頭を撃ちぬかれて……」

「またおかしなことを言っているさ……そんなこと、本当に起こるわけ……」

その瞬間、物体が空から落下してきた。その結果、私を一番好き勝手に犯した男が即死した。

「おい、どうしたんだ!!!」

他の男たちがすぐさま駆け寄った。無駄だった。

「くそ……どういうことだ!!!」

「誰かがわざと落としたんじゃないか???」

「ああ、その可能性はあるな。確か、前も命を狙われたことがあったっけ……」

そう言って、男たちは空になるべく近い場所へ走っていった。


マリアとヒースだけがその場所に残った。

「ひょっとして、あなたの仕業なの???」

マリアにはなんとなく分かった。

「どうしてそう思うんだ???」

「あなたの目を見ていれば、なんとなく……」

「そうか……ひょっとして、君も魔法を使えるのか???」

「魔法……ああ、そんな学問もあったわね。最も、私は最初から諦めていたけれど……」

「まあ、君ほど美しい人間にはそんなもの不要なんだろうね。公爵令嬢マリア……」

「あら、どうして私のことを知っているのかしら???ああ、正確には元公爵令嬢だけどね……」


普通ならば驚くべきところだが、マリアは大して驚かなかった。これも、最初からなんとなく分かっていた。ヒースと呼ばれしこの男は森羅万象を心得ていて、全てを自らの魔法で操作することができる……そんな人間がこの世界に一人くらいはいるとどこかの本に書いてあった。

そして……その男こそが目の前にいるヒースなのだと直感したのだ。

「相当の魔法使いなのね、あなたは」

「世界に干渉することを許された魔法使い……とでも言えばいいだろうか」

「そしたらば、あなたは人間じゃなくて聖者……いや、そんな存在を通り越して魔王かもね……」

「おやおや、ご推察の通りだ……」

「本当に???」

これは少し意外な展開だった。

「どうやら君とは話が合いそうだな……」

ヒースは一度だけ笑った。

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