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私はとりあえず、自分の進むべき道を選択しました。彼が本当に私のことを愛しているか、それを確かめようと思いました。
「アンソニー様はどこにいらっしゃいますか」
もちろん反応はありませんでした。ですから、王宮の方へ向かって歩き始めたわけです。
「あれって、ひょっとするとお妃様じゃないかしら」
私の姿を見て気づく人もいたようでした。でも、私は何も答えませんでした。もしも、正確に正体がばれてしまったら、このまま歩き続けることが不可能なのではないかと考えたからです。
「確かに、どこかで見たことがあると思ったけど。あれは確かにお妃様でしょう」
噂であれば、それは問題ないようです。彼ら彼女たちの妄想の世界で終わってしまうから。でも、私が認めてしまったら、そこで人だかりができてしまいます。そして、私は引き返すしか選択肢がなくなってしまうわけです。
「どちらにいかれるのだろうか」
人々の関心を忘れることにはなりました。でも、私が過ぎ去ってしまったら、彼らにとってはまた日常が待っているだけなのです。
大部分の人にとっては、私はどうでもいい存在なのです。でも、私の正体を本当に知っている人にとってみれば、これは大変な問題であり、私の足を止める必要があったわけです。
「恐れながら、お妃様!!!!!」
これはちょっとまずいと思いました。最初はとぼけようと思いました。向こうがかわしてくれれば、それで問題ないと思ったからです。
「なんのことでしょうか。人違いではないですか。私はお妃様なんかではありませんよ」
「いいえ、そのような事は決してございません。あなた様はどこから見てもお妃様でございます……」
「そんなわけないですよ。お妃様がこんなところ歩いているわけないじゃないですか」
「普通に考えればそういうことになるでしょう。ですが、世の中には普通でないことも十分にあるわけです」
「そうだとしても、私はお妃様ではありませんよ。単なるさすらい人です」
「さすらい人だとしたら、これからどこへ行くんですか???王宮を警備する人間として確認する義務があります」
いちいちめんどくさいと思いました。ですが、これが彼らの仕事なわけです。ある意味、彼らの仕事を邪魔しているようなものですね。
「分りましたよ。では、正体をあかしましょう」
もちろん、名乗るつもりはありませんでした。何とかして、この場所から逃げようと思っておりました。
「公爵令嬢のマリアと申します。王宮会議メンバーであられるエッシェンバッハ公爵と面会するために参りました」
エッシェンバッハ公爵と言うのは、実在する貴族でした。アンソニー様の側近として絶大なる権力を持ってんだと言われております。実際、私は彼のことを知っておりました。もちろん、マリアと言う女はなかったでしょうけれど。
「エッシェンバッハ公爵と面会……わかりました。どうぞお通り下さい」
この程度のことで通してくれるんだとしたら、ずいぶん甘い警備だと思いました。もちろん、簡単に済めばそれで良いと言うわけなんですけれどもね。
「ひょっとして、あれはお妃様ではありませんか」
「そうかもしれないな。でも、本人が否定しているから、多分違うじゃないか。エッシェンバッハ公爵に会うと言っていたし」
「なるほど。それにしても、今日の会議はずいぶんと長いですね」
「確かに、本来ならとっくに終わっている時間だよな」
「何か紛糾しているんですかね」
「あの会議に限ってそんな事はないと思う」
「まあ、確かに。アンソニー様の独壇ですからね」
私はどんどん道を進みました。そして、会議の場所までようやくたどり着くことができました。そこには、たくさん知っている人たちがいました。彼女たちは私のことを見て驚いたはずです。
「クレア様???どうしてこちらに???」
メイドたちは驚いておりました。あの部屋から抜け出せたこと、そして、ここにいること。全てが不思議で仕方なかったのでしょう。皆さんが想像しているほど弱い人間では無いんですよ。
「アンソニー様はどこにいらっしゃいますか」
もちろん反応はありませんでした。ですから、王宮の方へ向かって歩き始めたわけです。
「あれって、ひょっとするとお妃様じゃないかしら」
私の姿を見て気づく人もいたようでした。でも、私は何も答えませんでした。もしも、正確に正体がばれてしまったら、このまま歩き続けることが不可能なのではないかと考えたからです。
「確かに、どこかで見たことがあると思ったけど。あれは確かにお妃様でしょう」
噂であれば、それは問題ないようです。彼ら彼女たちの妄想の世界で終わってしまうから。でも、私が認めてしまったら、そこで人だかりができてしまいます。そして、私は引き返すしか選択肢がなくなってしまうわけです。
「どちらにいかれるのだろうか」
人々の関心を忘れることにはなりました。でも、私が過ぎ去ってしまったら、彼らにとってはまた日常が待っているだけなのです。
大部分の人にとっては、私はどうでもいい存在なのです。でも、私の正体を本当に知っている人にとってみれば、これは大変な問題であり、私の足を止める必要があったわけです。
「恐れながら、お妃様!!!!!」
これはちょっとまずいと思いました。最初はとぼけようと思いました。向こうがかわしてくれれば、それで問題ないと思ったからです。
「なんのことでしょうか。人違いではないですか。私はお妃様なんかではありませんよ」
「いいえ、そのような事は決してございません。あなた様はどこから見てもお妃様でございます……」
「そんなわけないですよ。お妃様がこんなところ歩いているわけないじゃないですか」
「普通に考えればそういうことになるでしょう。ですが、世の中には普通でないことも十分にあるわけです」
「そうだとしても、私はお妃様ではありませんよ。単なるさすらい人です」
「さすらい人だとしたら、これからどこへ行くんですか???王宮を警備する人間として確認する義務があります」
いちいちめんどくさいと思いました。ですが、これが彼らの仕事なわけです。ある意味、彼らの仕事を邪魔しているようなものですね。
「分りましたよ。では、正体をあかしましょう」
もちろん、名乗るつもりはありませんでした。何とかして、この場所から逃げようと思っておりました。
「公爵令嬢のマリアと申します。王宮会議メンバーであられるエッシェンバッハ公爵と面会するために参りました」
エッシェンバッハ公爵と言うのは、実在する貴族でした。アンソニー様の側近として絶大なる権力を持ってんだと言われております。実際、私は彼のことを知っておりました。もちろん、マリアと言う女はなかったでしょうけれど。
「エッシェンバッハ公爵と面会……わかりました。どうぞお通り下さい」
この程度のことで通してくれるんだとしたら、ずいぶん甘い警備だと思いました。もちろん、簡単に済めばそれで良いと言うわけなんですけれどもね。
「ひょっとして、あれはお妃様ではありませんか」
「そうかもしれないな。でも、本人が否定しているから、多分違うじゃないか。エッシェンバッハ公爵に会うと言っていたし」
「なるほど。それにしても、今日の会議はずいぶんと長いですね」
「確かに、本来ならとっくに終わっている時間だよな」
「何か紛糾しているんですかね」
「あの会議に限ってそんな事はないと思う」
「まあ、確かに。アンソニー様の独壇ですからね」
私はどんどん道を進みました。そして、会議の場所までようやくたどり着くことができました。そこには、たくさん知っている人たちがいました。彼女たちは私のことを見て驚いたはずです。
「クレア様???どうしてこちらに???」
メイドたちは驚いておりました。あの部屋から抜け出せたこと、そして、ここにいること。全てが不思議で仕方なかったのでしょう。皆さんが想像しているほど弱い人間では無いんですよ。
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