第一王子と見捨てられた公爵令嬢

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本来であれば、主人とメイドの恋愛というのはご法度であり、それは誰もが分かっていることだった。でも、今回はそんな流れも許容されてしまうのではないか……と危惧する者も一定数いた。

私はまだザイツ様の妃だった。でも、昼に顔を合わせても、夜に顔を合わせても、とうとう声をかけてくれなくなってしまった。あの一件以来、私たちの夫婦関係はすっかり冷え切ってしまったのだ。

そして、噂の通り、やや積極的なメイドたちがザイツ様の元に集まるという現象が起きたわけだ。

「ねえねえ、ザイツ様。今夜は私のお相手をして下さいませんか？？？」

上目遣いに迫って来るメイドたち……彼女たちは真面な教育を受けていないから、自分たちのやっていることがどれほど愚かなことなのか分かっていないのだ。

「いや、私は既に婚約している身だから……」

もちろん、ザイツ様はメイドたちの誘いを断る。と言うか、そのままメイドたちの波に飲み込まれてしまうのだったら、最初から私と婚約する必要なんてなかったということになる。私よりも美しい令嬢なんていくらでもいるのだから。その人たちの誰かと婚約すれば……何も問題なかったはずなのだ。

だって、いくら綺麗ごとを言ったって、結局は男なんだから。男はより美しい女を求める……それは当たり前のことだろう。

「ねえ……ザイツ様？？？？？」

「お待ちください！！！！」

ザイツ様はとうとう怒ってしまった。その気持ちが、私にはなんとなく分かった。でも、どっちみち私の力で解決できる問題ではなかった。だから……もうどうしようもなかったのだ。

「こうなったら……強行突入するしかないかしら？？？」

中には過激なメイドたちもいて、ザイツ様が心を開かない以上、自分たちから乗り込むしかないと考える者もいたようだった。まあ……その時私は落ち込んでいたし、それが事実でも結果としてザイツ様が幸せになるんだったら、あながち悪くはない……なんて考えるようにもなっていた。