上 下
1 / 24

1

しおりを挟む
「マリア、早く起きるんだ!!!」

今日は日差しがポカポカ……いつまでも寝ていられる、なんて思った矢先のことだった。

「いつまで寝ているんだ!!!」

この声は……想像通りお父様だった。随分と血相を変えて……別に最近悪いことはしたないんだけど、何か問題だっただろうか。

「ごめんなさい……なにかしましたか、わたし???」

「何を寝ぼけているんだ!!!大事な話がある!!!」

声がどんどんどんどん大きくなるので、私はやっとのことで目を覚ました。

「大事な話???それは一体なんですか???」

「ようやく目が覚めたか。ああ、それにしてもお前の顔ときたら……もう少し何とか収まりよく出来ないものかねええっ」

お父様はいつも、私の容姿を見て嘆いている。まあ、公爵令嬢の娘は大抵美しいものだが、私はどうやら例外の方だ。全く美しくない。

「私も……ときどき考えるのですが、やっぱりこの問題はどうもならないんでしょうねえ……」

「おいおい、そこで開き直られても困るんだよな……」

お父様は随分と困惑しているようだった。まあ、当然か。

「それはそうと、大事な話って、なんですか???」

まだ本題に入っていなかった。

「ああ、そうだな。マリア!!!お前はこれからザイツ様の妃になるのだ!!!」

「へええっ???」

「まだ寝ぼけているのか???」

「いいえ、そう言うわけではございませんで……あの、お父様にこのような言い方をするのは大変失礼であることを承知の上で申し上げますが……私のことを揶揄っていらっしゃるのですか???」

だって、そうとしか思えなかった。確かに私は公爵令嬢で間もなく成人を迎えるわけで、婚約者を決める段階になっているのは事実である。ただ……うん、公爵令嬢の相手として、それ相応の身分ある貴族様の元へ嫁ぐことになるんだけど……それがあのザイツ様だなんて……そんなことをいきなり言われてしまうと、信じることができないってわけなのだ。

「揶揄う???私がお前に冗談を言って、なんの得があると言うんだ???何も無いだろう???」

お父様は終始真面目だった。

「まあ、それもそうですが……」

「だから、お前は第一王子ザイツ様の妃になるんだ!!!」

「あの……どうして私なんですか???」

最大の疑問……だって、女としてなんの魅力もないこの私が、将来の皇帝になる第一王子ザイツ様の元に嫁ぐだなんて……やっぱりおかしいと思ったのだ。

「それは……このまま国家を維持するのに、お前のような女のほうが都合がいいからだ」

都合がいい……そうそう、大人たちは自分たちの都合だけで勝手に話を進めたがるものなのだ。私たちに決定する権利はないんだ。でも、そのおかげで生かされていると考えれば、それはそれで仕方のないことなのだ。

お父様の決定に口を挟むことはできない……でもやっぱり、その理由は知りたかった。

都合がいいとは、一体どういうことなのだろうか???

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな令嬢

緑谷めい
恋愛
 ボージェ侯爵家令嬢アンヌはアシャール侯爵家令嬢オレリアが大嫌いである。ほとんど「憎んでいる」と言っていい程に。  同家格の侯爵家に、たまたま同じ年、同じ性別で産まれたアンヌとオレリア。アンヌには5歳年上の兄がいてオレリアには1つ下の弟がいる、という点は少し違うが、ともに実家を継ぐ男兄弟がいて、自らは将来他家に嫁ぐ立場である、という事は同じだ。その為、幼い頃から何かにつけて、二人の令嬢は周囲から比較をされ続けて来た。  アンヌはうんざりしていた。  アンヌは可愛らしい容姿している。だが、オレリアは幼い頃から「可愛い」では表現しきれぬ、特別な美しさに恵まれた令嬢だった。そして、成長するにつれ、ますますその美貌に磨きがかかっている。  そんな二人は今年13歳になり、ともに王立貴族学園に入学した。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

誰がゲームの設定に従うと思いまして?

矢島 汐
恋愛
いい加減に、してほしい。この学園をおかしくするのも、私に偽りの恋心を植え付けるのも。ここは恋愛シミュレーションゲームではありません。私は攻略対象にはなりません。私が本当にお慕いしているのは、間違いなくあの方なのです―― 前世どころか今まで世の記憶全てを覚えているご令嬢が、今や学園の嫌われ者となった悪役王子の名誉と秩序ある学園を取り戻すため共に抗うお話。 ※悪役王子もの第二弾

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

変装して本を読んでいたら、婚約者さまにナンパされました。髪を染めただけなのに気がつかない浮気男からは、がっつり慰謝料をせしめてやりますわ!

石河 翠
恋愛
完璧な婚約者となかなか仲良くなれないパメラ。機嫌が悪い、怒っていると誤解されがちだが、それもすべて慣れない淑女教育のせい。 ストレス解消のために下町に出かけた彼女は、そこでなぜかいないはずの婚約者に出会い、あまつさえナンパされてしまう。まさか、相手が自分の婚約者だと気づいていない? それならばと、パメラは定期的に婚約者と下町でデートをしてやろうと企む。相手の浮気による有責で婚約を破棄し、がっぽり違約金をもらって独身生活を謳歌するために。 パメラの婚約者はパメラのことを疑うどころか、会うたびに愛をささやいてきて……。 堅苦しいことは苦手な元気いっぱいのヒロインと、ヒロインのことが大好きなちょっと腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID261939)をお借りしています。

処理中です...