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その3

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そんな二人の姿を遠目から見ていたネロが、怒り出した。

「ビッキー、いい加減にしないか!!!」

ネロはビッキーの胸倉をつかんだ。

「何をするんですか!」

ビッキーの怒りの矛先は、元々ネロに向いていた。ビッキーは、ネロの右腕を力強く握りしめた。

「痛い…痛いぞ!」

「痛くて結構ですよ。私の心はもっと痛いんですから!」

末梢の小さな動脈がピキピキと裂け始めて、血が流れ始めた。

「ビッキー!止めるんだ!」

皇帝がビッキーを止めようとしたが、ビッキーは言うことを聞かなかった。

「私が、この一年間、どんな思いで頑張ってきたのか、あなたたちは分からないのでしょう!女の幸せなんてのはね、もっと打算的なものなんですよ!恋に浮かれていたら、そのまま婆さんになって死んでしまいます。だから……少しでも力のある男に嫁ぐのが、私たち令嬢の生きる術なんですよ!!!」

ビッキーのこうした吐露に賛成する令嬢は多かった。ビッキーから酷い攻撃を受けて、今ではゴキブリのように地面を這いつくばっているレイチェルさえも、

「同感です」

とコメントした。これに困惑したのがネロだった。

「……とすると、私が愛そうとした女たちは、皆、この程度だったのか?」

ネロは頭を抱えて、地面に寝っ転がった。それは、まだ自分で生きる術を知らない赤ん坊のようだった。

「いやだ……こんな世界は狂っているじゃないか……私はただ、人間を心の底から愛そうとしただけなんだ……。それなのに、どうして、いつもいつもこうなるんだろうか?何か間違ったのか……?」

地球のように頭をくるくると回しているネロの首元に、怒り狂ったビッキーが飛びついた。

「こうなったら……金で精算してもらいましょうか?」

ビッキーは、一つ間違えばそのままネロを殺してしまう勢いだった。



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