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「じゃあね、レオンハルト様。また会いましょう」
呆然とするレオンハルトを残して、リリアーナはその場から離れていった。
「な、なんだったんだ今のは……」
一人残されたレオンハルトは、ただその場で佇むしかなかった。
「お兄様!!!!!!」
「ん?」
「次は私と一緒に踊ろうね?」
「あぁいいぞ」
そう言うと、妹のクリスティーナは嬉しそうに笑って去っていった。
「ふぅ~疲れましたぁ」
「そうだな」
「ちょっと休憩してくる」
「あぁ行ってこい」
そう言うと、クリスティーナは飲み物を取りに行った。
すると今度は、また別の女が近寄ってくるのだった。
「大丈夫ですか?」
「何がだ?」
「いえ、少し顔色が悪いような気がしたので……」
「そうか?」
「はい。もしかしたら体調が優れないのでは?」
「心配することはない。それよりお前の方こそどうなんだ?」
「私ですか?」
「ああ、先程からあまり喋っていないだろう」
「……実は少し緊張しているんです」
「なぜだ? 舞踏会は初めてではないはずだが」
「それはそうなのですが……やはり慣れません」
「そうなのか」
「はい。ですが、いつまでもこうしていたらダメですね。せっかくレオンハルト様にエスコートしてもらっているというのに」
「別に気にすることは無いと思うがな」
「そういうわけにはいきません。今日くらいはしっかりしないと」
「あまり無理をする必要はないが……まあいいか」
それからしばらくの間は他愛もない話をしていたが、不意にあることを思い出して口を開いた。
「ところで、リリアーナ嬢とは上手くいったのか?」
「……えっ!?︎」
「……まさか何もしていないということはないだろう」
「そ、それはもちろんですよ。一緒にダンスをしたり、お茶を飲みながら話をしたりしました」
「……それだけか?」
「は、はい」
「……本当か?」
「ほ、本当に決まってますよ」
「……怪しいものだな」
「そんなことありません」
「……まあいい。だが、もし何かあった時は覚悟しておくことだ」
「……は、はい。肝に命じておきます」
「……それと、今日の夜会が終わったら俺の部屋に来るように」
「え? ど、どうしてですか?」
「……さっき言ったことを忘れたか?」
「……あっ」
「……わかったなら早く行け」
「は、はい」
顔を真っ赤にして走り去っていくアルヴィンを見て、レオンハルトはため息をついた。
(全く、世話の焼けるやつだ)
レオンハルトはいつまでも心を休めることができなかった。
呆然とするレオンハルトを残して、リリアーナはその場から離れていった。
「な、なんだったんだ今のは……」
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そう言うと、妹のクリスティーナは嬉しそうに笑って去っていった。
「ふぅ~疲れましたぁ」
「そうだな」
「ちょっと休憩してくる」
「あぁ行ってこい」
そう言うと、クリスティーナは飲み物を取りに行った。
すると今度は、また別の女が近寄ってくるのだった。
「大丈夫ですか?」
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