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「え? 何のこと?」
「とぼける必要はないよ。本当はわかっているはずだろう?」
「うーん、なんのことやらわからないわね~?」
「リリアーナ・ハーデス公爵令嬢殿?」
その言葉を聞いた瞬間、リリアーナの表情が変わった。
「っ!」
「やはりそうだったか」
「……いつ気づいたのかしら?」
「最初から違和感はあったんだよ。まず最初におかしいと思ったことは君の態度だ」
「私の態度が変だって言うの?」
「あぁそうだとも。今日の君はどこかおかしかった」
「どこがかしら?」
「いつもより口数が少ないことだ。あと笑顔も少なかった気がする」
「そうかしら?」
「あぁ、間違いない。それともう一つあるぞ」「まだあるの?」
「あぁ。ダンスが苦手なことを隠していたことだ」
「……えっと、それだけかしら?」
「ああ、これだけだが?」
不思議そうに首を傾げるレオンハルトを見て、リリアーナは思わずため息をついた。
「はぁ、やっぱりバレちゃってたか。私の演技力もまだまだね……」
「どういう意味だい?」
「そのままの意味よ。私はあなたの言った通り、今日はあまり喋らなかったし、笑わなかった。それにダンスもあまり得意じゃないし、あなたをリードすることもできなかった。全部わざとやった事よ」
「なぜそんな事をしたんだい?」
「それは……」
リリアーナは一瞬躊躇ったが、すぐに覚悟を決めて話し始めた。
「あなたに興味を持ってもらう為よ」
「興味?」
「そうよ。今日一日一緒に過ごしてみてわかったわ。あなたはとても魅力的な人だと」
「……ありがとう」
突然褒められて少し照れるレオンハルトだったが、リリアーナの次の言葉で一気に冷静になる。
「だから思ったの。この人を誰にも取られたくないって」
「……つまり君が言いたいのはこういうことかい? 俺の恋人になりたいと」
「……はい」
顔を真っ赤にして俯きながら答えるリリアーナ。しかしそれとは対照的に、レオンハルトの顔色はどんどん悪くなっていく。
(まさか本当に告白されるとは……。しかも相手はあのリリアーナ嬢だ。とても魅力的だと思うが、俺は彼女の気持ちに応えることはできない)
「……悪いが」
「無理よね」
「……は?」
予想外の返事に、今度はレオンハルトの方が固まってしまった。
「ごめんなさい。あなたは今好きな人がいて、その子のことを忘れられないんでしょう? なら私が横取りするのは違うものね」
「……君は一体何を言っているんだ? 俺に恋人はいない」
「嘘よ。だってさっきからずっと一人の女の子を見つめているわ」
「……は? 俺が?」
「そうよ」
「……誰を?」
「さっきからずーっとあなたに見られている子がいるでしょう? ほら、あそこの壁際で一人でいる金髪の子よ」
「……あれが?」
「えぇそうよ。あんな可愛い子に好かれて羨ましいわ~」
リリアーナの指差す先にいたのは、確かにアルヴィンだった。
「あれ? 気づいていなかったの?……まあいいわ。とにかく私は諦めるつもりはないから」
そう言って立ち去ろうとするリリアーナの腕を、レオンハルトは咄嵯に掴んでいた。
「待ってくれ!……その前に一つだけ聞かせてくれないか?」
「何かしら?」
「どうしてそこまでして俺のことが知りたいんだい?」
その質問に対して、リリアーナは満面の笑みを浮かべて答えた。
「一目惚れしたのよ」
「……は?」
「初めて会った時から、私はあなたのことを好きになってしまったの。でも仕方がないわね。だってこんなに素敵な男性なんだもの。惚れてしまうのは当然だわ」
リリアーナは真剣に答えた。何も迷うことなく、ただ一点を見つめていた。
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