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正直な話、皇帝陛下に直訴する文化がなかった。高位の貴族であれば多少はいいのかもしれないが、私のような元公爵令嬢であれば、基本的に聞いてくれることはないと思った。どうやら、私が思い描くほど、皇帝陛下は悪者ではなさそうだった。
「婚約破棄をそもそも提案したのが、ここにいます公爵スティーブンでございまして。その詳細な理由を聞かされることもなく、私は婚約破棄させられたわけでございます!」
本当に、今回は不可解だった。はめられたのではないか、と考えたくらいに。
「だから、私が君に婚約破棄を告げたのか?」
スティーブンは開き直った。自分に罪がないと言わんばかりに。さんざん私を弄んでおきながら、この態度は…許すことが出来なかった。
「あなたから直接ではないけれど……父はあなたから婚約破棄を突き付けられたと言っていたわ!」
スティーブンは反論した。
「この私がいつ、君の父上にお会いして、婚約破棄を告げた言うのだ?その証拠はあるのか???」
スティーブンはまた突拍子もないことを言い始めた。
「あなたのその発言を正面からとらえると……まるで、父が嘘を言っているように思えるわね。でもね、どうして父が私に嘘をつく必要があるのかしら?そんな必要……あるわけないでしょう?」
自分の娘の幸せを考えない親はいない……お父様がそんな人間でないことを私は知っていた。
「証拠がない以上、何らかの理由で君の父上がでっち上げた可能性もあるだろう!!!」
スティーブンがヒートアップする中、皇帝陛下が冷静に介入してきた。
「一般的に考えて……自分の娘が不利になるよう働きかける父親はいないと思うがね……」
皇帝陛下は私の主張に近かった。スティーブンは不利だった。
「となると……スティーブンに非があるということになるのか……」
「お待ちください、皇帝陛下!」
スティーブンは反論を試みた。
「どうして、私の発言を信じてくださらないのですか!」
理屈だって反論することが出来なかった。そこに……新たな女が姿を現した。
「お待ちになって!」
私は見たことがなかった。スティーブンの知り合いだろうか?女癖の悪いスティーブンのことだから不思議ではなかった。それにしても……私と同じで皇帝陛下に意見しようとするのだから、それなりに肝が据わっているのだと思った。普通は出来ないからね。そういうことは。
「君は……何者だね?」
「初めまして。公爵令嬢のスピカと申します。理由あって参上いたしました。ご無礼をお許しください……」
スティーブンの顔色が若干悪くなったように感じた。この女……何かを知っているのか?私は女の発言を注意深く聞くことにした。
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本当に、今回は不可解だった。はめられたのではないか、と考えたくらいに。
「だから、私が君に婚約破棄を告げたのか?」
スティーブンは開き直った。自分に罪がないと言わんばかりに。さんざん私を弄んでおきながら、この態度は…許すことが出来なかった。
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スティーブンは反論した。
「この私がいつ、君の父上にお会いして、婚約破棄を告げた言うのだ?その証拠はあるのか???」
スティーブンはまた突拍子もないことを言い始めた。
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「一般的に考えて……自分の娘が不利になるよう働きかける父親はいないと思うがね……」
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「となると……スティーブンに非があるということになるのか……」
「お待ちください、皇帝陛下!」
スティーブンは反論を試みた。
「どうして、私の発言を信じてくださらないのですか!」
理屈だって反論することが出来なかった。そこに……新たな女が姿を現した。
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「君は……何者だね?」
「初めまして。公爵令嬢のスピカと申します。理由あって参上いたしました。ご無礼をお許しください……」
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