婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟

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8(バートン視点)

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 アンナとの関係がどんどん深まっていく。僕はどのタイミングで正式にプロポーズすればいいのか悩んでいた。一緒の家に住んでいるんだから、事実上婚約しているようなものだ。

 お父様、お母様公認で…女性と話すのが苦手だったのに、アンナと話すのは平気!素直に話すことが出来るんだ。こういうのを幸せって言うんだろうか。もっともっと、幸せな時間が続けばいいなって思った。でもね、僕の経験からすれば、こういう幸せは案外簡単に壊れてしまうのだ。最初から考えるなって怒られるかもしれない。それでも…僕はほとんどネガティブだから。


「バートン!出世の報告だ!」

 新たな物語はお父様の報告から始まった。

「出世ですか?」

「ああ、そうだ。辺境から王宮に行くことの出来るチャンスだ!」

「王宮…ですか?」

「そうだ、いやあっ、実にめでたい話だ!」

 どうして出世するのか、その詳細は不明だった。でも、王宮から正式に発表された辞令なので、間違いはないと思った。


「これって…受けないとダメですか?」

 念のため、お父様に質問してみた。

「…お前のことだからそう言うと思った。だがな、結論から言うとダメだ!」

「やっぱり……」

 出世については、僕の意思ではなくてお父様が決めた通りになるようだった。

「お前は…これから家族が増えるだろう。こんな田舎に留まるよりも…出世してもっと高い地位に昇り詰めるんだ。理想が具現化するのは…お前がもっと偉くなったときだ……」

「ええ、それは結構ですが……1つ懸念がございまして」

「アンナのことか?」

 お父様は全て見通していたようだ。

「夫の出世を喜ばない妻は……この世界にはいないと思うのだが?」

「ですから、僕たちはまだ婚約していません!!!」

「まあまあ、細かい話はなしだ。今後そうなると言っているだけだ。それで……言った通りでお前がアンナを愛し、アンナがお前を心の底から愛するとしたら……お前と一緒にアンナは王宮に戻ることになるな…」

「それは…彼女にとって大きな負担ではないですか?」

「仮にそうだとして…お前が心配する必要があるのか?もしも…お前が王宮に行くことを反対したり…自分は行かないと言い出したら、その時は縁がなかったと諦めるしかないな……」

 お父様は僕の幸せを考えているのだろう。まあ、お父様が考える幸せと僕が考える幸せに大きな違いがあるような感じはしたのだけど…。


 どのタイミングでアンナにこの話をするか…考えるほど時間は経過していく。荷造りが進み、王宮へ旅立つまで残り1週間に差し掛かった。アンナと出会ってちょうど3週間が経過した頃合いであった…。


 僕はアンナを呼び出して、新しい人生の話をすることにした。

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