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私が学院から追放された理由…それは、私がスティーブンと人目を憚ることなくいちゃついていたからであった。
でも、それって私のせいじゃなくて、スティーブンのせいなのでは?そんな疑問を抱いたが、どのみち私に勝ち目はなかった。弁明しても、お父様は何も聞こうとしなかったから。
それだったら、お父様に言われた通り、この家から出ていく方がよいと思った。お父様の知り合い:辺境伯爵の住む田舎に送られることとなった。
「本来であれば修道院送りなのだが…せめてもの情けだ…」
お父様は父親としての威厳をアピールしたかったのだろう。父親として娘を守るわけではなくてね。
数日後、伯爵家から迎えが来た。私は元令嬢であり、所詮は平民の地位に成り下がった女である。だから、適当に扱われると思った。でも、実際は違った。
「お迎えに上がりました…アンナ様でお間違えありませんね?」
伯爵家の執事…だろうか?平民である私の名に敬称を付け、頭を下げている。こちらの方がかえって恐縮してしまうほどだった。私は慌てた。
「あの…そんな畏まらなくて結構ですから…所詮はもう平民でございますので…」
「いいえ、そういうわけには参りません。旦那様の指示でございますから…」
「旦那様…とおっしゃいますと、ひょっとして、こちらにいらっしゃるのですか?」
まさか、そんなことはないと思ったが確認のために尋ねてみた。
「はい、その通りでございます。旦那様?隠れてないで出てきたらいかがですか?ほらっ、これほど可愛らしいお嬢様なんて、見たことありませんよ…」
どうやら、旦那様は馬車に乗っているようだった。こんな私を迎えるために、わざわざ旦那様が出向いてくるだなんて…不思議な話だった。
「ほら、旦那様?隠れてないで、お顔を出しなさいな。お嬢様がお待ちですよ?」
執事が促すと、旦那様らしき男がゆっくりと馬車から降りてきた。
「初めまして…ロールス伯爵家の長男で、バートンと申します…」
男は妙に畏まっていた。
「元公爵令嬢のアンナと申します…よろしくお願いいたします…」
私は軽く挨拶をして、馬車に乗り込んだ。私を見送る人間はどこにもいなかった。変わりに執事の促しもあって、私はバートンと話を膨らませることが出来た。
「こんな私の相手をしてくださるなんて…光栄に思いますわ!」
バートンは私のことを心配してくれた。まあ、心配の多い人生であったことは間違いない。それが…これから段々と落ち着いてくるのだろうか。旅路が続いた。
でも、それって私のせいじゃなくて、スティーブンのせいなのでは?そんな疑問を抱いたが、どのみち私に勝ち目はなかった。弁明しても、お父様は何も聞こうとしなかったから。
それだったら、お父様に言われた通り、この家から出ていく方がよいと思った。お父様の知り合い:辺境伯爵の住む田舎に送られることとなった。
「本来であれば修道院送りなのだが…せめてもの情けだ…」
お父様は父親としての威厳をアピールしたかったのだろう。父親として娘を守るわけではなくてね。
数日後、伯爵家から迎えが来た。私は元令嬢であり、所詮は平民の地位に成り下がった女である。だから、適当に扱われると思った。でも、実際は違った。
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「あの…そんな畏まらなくて結構ですから…所詮はもう平民でございますので…」
「いいえ、そういうわけには参りません。旦那様の指示でございますから…」
「旦那様…とおっしゃいますと、ひょっとして、こちらにいらっしゃるのですか?」
まさか、そんなことはないと思ったが確認のために尋ねてみた。
「はい、その通りでございます。旦那様?隠れてないで出てきたらいかがですか?ほらっ、これほど可愛らしいお嬢様なんて、見たことありませんよ…」
どうやら、旦那様は馬車に乗っているようだった。こんな私を迎えるために、わざわざ旦那様が出向いてくるだなんて…不思議な話だった。
「ほら、旦那様?隠れてないで、お顔を出しなさいな。お嬢様がお待ちですよ?」
執事が促すと、旦那様らしき男がゆっくりと馬車から降りてきた。
「初めまして…ロールス伯爵家の長男で、バートンと申します…」
男は妙に畏まっていた。
「元公爵令嬢のアンナと申します…よろしくお願いいたします…」
私は軽く挨拶をして、馬車に乗り込んだ。私を見送る人間はどこにもいなかった。変わりに執事の促しもあって、私はバートンと話を膨らませることが出来た。
「こんな私の相手をしてくださるなんて…光栄に思いますわ!」
バートンは私のことを心配してくれた。まあ、心配の多い人生であったことは間違いない。それが…これから段々と落ち着いてくるのだろうか。旅路が続いた。
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