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その8

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一週間の旅を終えて、私たちは無事に目的地アガンツへたどり着いた。標高が高く、天がもう少しで手に届きそうだった。ひょっとしたら、私を聖女にした神と対話することができるかも、なんて思ってみた。

アガンツは私が想像していたほど美しい町ではなかった。確かに一面が氷で覆われた世界である。王都での生活に慣れている皇帝陛下や軍人たちは、寒さに耐えられないのか、しきりにくしゃみをしていた。

「少し温めましょうか?」

私はそう言って、聖なる魂を用いた。あらゆる環境に適応する能力を使って、彼らが例え軽装であったとしても、寒さを感じないようにした。

「聖女様!おかげで温かくなりました!ありがとうございます!」

兵と言えども、寒さには勝てない。油断をすれば命とりになる。だから、私は今回も命の恩人になったわけだ。

「さて、まずはカーティス伯爵を探すことにしましょうか?」

私は、カーティス伯爵が残した書物を、予め侍従たちから受け取っていた。文章の内容を吟味して、その人物像を作り上げる。お粗末に思えるかもしれないが、意外と当たる。見当がつけば、後は出会った顔と見比べて判別する。まあ、本当は町の人に聞き込みするのが一番早いんだけど、他の地方から来た人間とすぐに打ち解けることは難しいから。時間がかかるので、私の能力で解決しようとするの。

「聖女様……おおよその見当はつきましたか?」

「そうね……たぶん、わかったわ。とりあえず歩いてみましょう」

カーティス伯爵の元にたどり着くのが、旅のゴールである。これは第二の局面だった。これからの方が難しいんだけど。

町を歩いていると、今まで立ち寄ったところと比較して、荒廃しているような感じがした。ある意味、人間的な匂いがした。町を守るはずの屈強な男たちが、道端に寝っ転がって酒を飲んでいた。私たちが通ると、

「おーい、そこのお嬢さんたち!俺たちと遊ばないか!」

なんて、声をかけてきた。これに、軍人たちがすぐさま反応した。

「貴様たち!」

二人はそう叫んで、ピストルを構え始めた。

「こちらにいらっしゃるお二方をどなたと心得ているんだ!」

私はすぐさま二人を制止した。私や皇帝に対する忠誠心は高く評価するが、いちいち騒動を起こしては、後々めんどくさくなるのだ。皇帝陛下はいざ知らず、私は多少侮辱されたとしてもすぐには怒らない。慣れているのだ。

半永久的に裏舞台に立ち続ければ、誰でもそうなる。だから、いくら私が皇帝陛下より偉くなったとしても、己惚れることはない。戦うのは自分の生命が危なくなったとき、とプログラムされている。

私は男たちの元に近づいた。

「聖女様!お待ちください!」

またしても、皇帝陛下の制止を振り切った。
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