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その7

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「こちらに向かっていらっしゃるお方に申し上げる!私たちが視界に入ったら、走ることなく、ゆっくりと通過して頂けないだろうか?また、武器をお持ちの場合は、しまって頂きたいと思う。敵とみなした場合は、こちらから攻撃する。以上!」

軍人たちが、警告を出した。しかし、来客は一向に速さを変えずに突っ込んでくるようだった。

「聖女様。武器の使用許可を」

「もう少しお待ちなさい。私がいいと言うまで、使用を禁止します!」

私は毅然と振る舞った。

「畏まりました!」

軍人たちは、ピストルの照準をしっかり前方に合わせたまま待機した。

来客の距離が近づいてきたので、私はその顔を想像することができた。やはり、子供だった。そして、敵意はやはりなかった。

「子供です!敵意はないのです!さあ、ピストルをしまって!威嚇は無用です!」

「しかしながら、聖女様!」

「私の指示を聞きなさい!」

この時初めて、私は声を荒げたのだと思う。皇帝陛下も驚いて、

「聖女様の命令に従いなさい!」

と、私の主張に理解を示してくれた。


しばらくして、本当に子供がやってきた。軍人たちは、言葉と視線を合わせなかった。私は馬車から顔を出して、

「一人で旅をしているの?偉いわね」

と声をかけた。

「ありがとう」

少年はそう答えて、足早に去っていった。

「私の言った通りね。これで分かって頂けたでしょうけれど、私には予知能力があるの。だから、どうか私を信じてちょうだい。そうすれば、アガンツまで安全に旅をすることができるから」

私がこう言うと、3人とも理解してくれた。


それ以降、旅は万時順調だった。外の世界を知らない皇帝陛下や軍人たちは、一般人が近寄ってくると、なにか対処に困る場面が生じた。でも、そういうときは、私が助け船を出して、その場を乗り切ることができた。

自分で言うのもなんだが、私は弱き民の心に寄り添うのが得意だった。例えば、泥まみれになった農民たちの輪に入って、得意な踊りを披露しようとすると、皇帝陛下は、

「お止め下さい!」

と、しきりに自制を求めた。こうした民と交わることに抵抗を持つのはわかった。

「でも、これが聖女たる由縁なのですから。民を助けることが、帝国の繁栄に最も大事なことなんですよ?わかりませんか?」

私は、こっそりと聖なる魂を使うこともあった。命をつなぐほどのレベルではないが、彼らの営みがもう少し豊かになるように、最大限気持ちをこめてみた。

「いずれ、この地は豊作になります。私はいま、神に祈りを捧げました。皆さんの生活がより良いものとなりますように!」

道中、町に立ち寄っては、踊りを披露し、聖なる魂を分け与えた。聖女らしいことをしたと思えば、旅はもっともっと楽しくなった。一週間があっという間に過ぎていった。
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