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「なかなか笑わない子供だな……」

皇帝陛下が私を見た時の第一声だったそう。赤ん坊で生まれたてのときなんて、普通笑っていないはずだ。

でもまあ、王子って冠の影響かは知らないが、人生楽しいと思う瞬間はあまりなかったのも事実。皇帝陛下をはじめ、厳格な教育者たちに四方を囲まれてしまって、本当に自由がないんだ。年上も年下も、みんな私のことをスミス様と呼ぶ。別に偉いわけじゃない。王家の血筋にたまたま産まれただけのことなんだ。平民に生まれれば、私の相手をする人間なんて、きっとどこにもいないってことになるんだろう。それは容易に想像がつくことだ。

まあいい。今ではおかげさまで少し幸せになった。思えば、私のそばにはいつも一人の彼女が立っていた。まあ、男って生き物はなかなか感情を素直に表現することができないからついつい回りくどくなってしまうのだ。彼女の名前はマリアという。神様の元に生まれたったかのような姿……とまでは残念ながら言えない。もう少し足は短いほうがいいとか、胸の強調が足りないとか、髪が短すぎるとか、いちゃもんをつけようと思えば、いくらでもある。私の好みはだいぶうるさいと思う。

実際のところ、私の好みをすべて満たす女は幾人か存在する。でもね、そうだとしても私が将来婚約者に選ぶとしたら、マリアに決めているんだ。初めて会った時から……あれはまだ、私が5歳ころだったか。マリアは当然覚えていないと思う。話しかけなかったし、私が一方的に彼女のことを見ていただけだから。

彼女の父親は厳格な教育者であり(正直私は好きではなかったし、彼も私のことを嫌っていたはずだ)、私の教育を皇帝陛下が任せていた。そして、時折マリアを王宮に連れてくることがあった。マリアはいつも、王宮の中庭にある噴水をじっと見つめていた。その姿がなんともかわいらしくて、子供心ながら好きだと思ったんだ。

「スミス様!!!!どうして、あなた様はいつもいつも、外ばかり見ておられるのですか???どうして、勉強に集中できないのですか???」

そうなると、マリアの父親はたいてい、私のことを叱った。教育者って、本当に頭が固い連中なんだよね。そもそも、5歳の子供に難しい本を読ませるとか、外国語の勉強をさせるとか、宇宙と神の原理を学ぶとか、そんなことはできっこないんだ。皇帝陛下が無理やりさせているだけのことで、本来はおかしいと思うんだ。

でも、5歳の子供が大人に歯向かうことはできない。だから、仕方なく大人の言うことは聞くようにしていた。でも、休憩時間になると、私はずっとマリアのことばかり見ていたんだ。あれだけ可憐な少女を見たことがなかったから。
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