上 下
2 / 2

バンドって…最高っっ……!!!

しおりを挟む
まずは俺が、バンドに関わるまでの話をしよう。

幼い頃から俺は、好きな物や趣味が無かった。周りの人間との共通の話題が無かった俺は、もちろん友達がいる訳もなく、常に一匹狼で生活していた。
「いつまでこんなことしてんだ俺…」
大学入試も控えている、高校3年生の俺は未だに進路を決めれずにいた。
「……あーもう、寝て忘れようこんなこと」
そう思った矢先、
「ピンポーン!!」
家のベルが鳴った。俺の家に来る相手は1人しかいない。俺はすぐに訪問者がわかったので家の鍵を開け、迎え入れた。
「ちょっと詩音!いつまでだらだらしてんのよ!」
顔を合わせた瞬間怒ってきたこいつは、俺の彼女である彩音だ。
「いいじゃねーか休日ぐらい…」
進路について悩み続けて、疲労も溜まっていた俺は、正直イライラしていた。そんな心の内を読み取ったのかわからないが、
「あっ…もしかして…まだ進路迷ってるのー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる彩音。
「……まぁ、そんなとこだ」
そう答えるしかなかった俺は悔しかった。
「なるほどねぇ…そんな感じだろうと思って今日きたんだよねっ!って事で、今から詩音をある所に連行します!」
唐突の言葉に困惑した俺は、
「………え?」と言うしかなかったが、次の瞬間には俺は、彩音に捕獲され、
「さ!行くよ!早く早く!」
急かされながら俺達が向かった先は、、、
……………小さな四角い建物?
「あ?どこだここ」
来たことのない場所に戸惑う俺だったが、そんな事も気に留めず、ズンズン建物に入り、俺を引っ張っていく彩音。
「さぁ!着いたよ!」
俺の目の前に、硬く閉ざされた扉があり、周りは謎の地響きが伝わってきている。
「詩音!この扉…開いてみて…!」
「……あぁ」
恐る恐る扉を開く。ギシギシッという鈍い音と共に、俺の目の前には見たことのない景色が広がっていた。ステージ上で楽器を持って演奏する男女5人組。その5人組の目の前で熱狂している多くの人達。そして、楽器の音、マイクを持ち歌い、盛り上げる声、黄色い歓声をあげる観客達。全て俺には未知の世界に溢れていて、言葉に表せないほど感動してしまっていた。
「…な、なんだこれっ!!!!」
「ね?凄いでしょ!この盛り上がり!悩みも全部吹き飛んじゃうよね!!」
この時、初めて俺はバンドというものに興味を惹かれ、俺がやりたいのはこれだ!これなら俺は生きていけるっ!と直感で感知してしまった。そう思った俺はすぐに行動に移した。バンドの演奏が終わり、観客達が帰る中、俺はバンドの中でも1番の輝きを見せていた男性ボーカルの人に咄嗟に声をかけてしまった。
「あのっ!俺…こんなにワクワクしたの初めてで…なんていうかっ…あなたみたいになりたいっ!」咄嗟の事に相手も驚いたのだろう。目を点にして俺を見ていたが、すぐに笑顔に変わり、
「そうか…なら、1つだけ、この世界で生きていく為に俺が大切にしている信条を教えてやる。」
「それは…なんですか…」
「それはな、自分の気持ち全てを歌の歌詞に込めて、目の前の1人1人全てに自分の気持ち全てを伝える意思を持つ事だ。お前は今、俺に自分の気持ちをはっきりと伝えてくれた。そこでもうお前はボーカリストとしての一歩を踏み出したんだ!断言する。お前は将来、絶対にビッグになれるぜ!」
熱い言葉に俺は何も言えず、ただ呆然として、知らぬ間に涙が流れていた。
「お、俺!絶対にビッグになってみせます!そして、あなたに追いついて、追い越してみせます!!!」
俺は何も考えられず、ただこの言葉を発してしまっていた。
「おぉ!その意気だ!ところで名前を聞いていなかったな、名前はなんだ」
「し、詩音です!」
「詩音か…いい名前だな…よし!詩音!俺は少し先で待ってる。いくらかかってもいい。絶対に俺に追いついて、そして追い越してみせろ!」
そう言い残して男性は去っていった。


これが俺とバンドの出会いだ。この男性に話しかけなかったら今の俺はないだろうな。今でもこの記憶は、俺の中の大切なもの、そして男性ボーカリストとの『約束』として未だに心に残っている。そして永遠に消えることはないだろうな。


さて、次はバンドと出会ってからの俺の成長と、今のバンドメンバーとの出会いを話そうとするかな。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

High-/-Quality

hime
青春
「…俺は、もう棒高跳びはやりません。」 父の死という悲劇を乗り越え、失われた夢を取り戻すために―。 中学時代に中学生日本記録を樹立した天才少年は、直後の悲劇によってその未来へと蓋をしてしまう。 しかし、高校で新たな仲間たちと出会い、再び棒高跳びの世界へ飛び込む。 ライバルとの熾烈な戦いや、心の葛藤を乗り越え、彼は最高峰の舞台へと駆け上がる。感動と興奮が交錯する、青春の軌跡を描く物語。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

愛の音楽

ガラスの惑星
青春
一人ひとりの音が交差する。楽器と奏者を繋ぐ物語。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

再会した幼馴染みが子供を作ろうと迫ってくる

ひゃみる
青春
無心新太(なごころあらた)は両親が事故で亡くなってから心を閉ざしてしまう。 自宅にいると両親の死がフラッシュするため、地元を離れて一人暮らしを始めた。 そんな中、幼馴染みである佐伯亜里菜(さえきありな)が新太に会いに引っ越してきた。 まだ心を閉ざしている新太を心配しつつも、亜里菜は前から好きだったと告白をする。 告白されてもキスされても何も感じない新太は断るも亜里菜は諦めない。 新太が最も大切なのか家族であり、それを知っている亜里菜は新しい家族を作ればいいと妊娠させてほしいと迫ってきて…… 夏休み終わって新学期が始まり、亜里菜は転校してきて新太と同じクラスになる。 そして亜里菜と一緒にいる内に新太は少しずつ心を開いていく…… ブクマと☆をつけてくれると嬉しいです。 この小説はカクヨムでも掲載します。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

処理中です...