怪異遭遇歴

なたね

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コラム 便利屋

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ここで我々怪異解決屋の同盟関係にある者を紹介しよう。「便利屋」だ。

便利屋(仮の名でこう呼んでいる)は片手が義手であることが特徴の男だ。生い立ち等、彼自身のことを教えてくれたことはほぼない。

「この間教えたじゃないか!俺は祖先がかの有名な麻薬王で、そいつが残した膨大な財産を隠し持ってるって!」

いや、違ったぞ。先週は不動産王の息子、先々週は歴史から抹消された民族の末裔だ。

「お、よく覚えてるなあ。でも実はそれは全部嘘で、実は俺は地底人だ」

…とこんな感じだ。どうしたらこんな嘘がぽんぽんと思いつくのか。こんなお調子者だが次のような能力を持っている。

実用的・現実的なものから魔法のような非現実的なものまで作ることができる。怪異解決屋とは開業当初から良好な関係にあり、怪異解決の手助けをしてくれている。出会いについてはすべて語ると本が一冊できてしまうので割愛させてもらう。彼専用の作業場を解決屋には設けており、そこで日々開発が行われている。市場に出回ると政治的・経済的に悪用されかねないものも作ることができてしまうので、本人や当従業員など一部の者にのみ使用を許すこととしている。
一方で、手先が器用で俊敏すぎるので暇つぶしにムダなものまで作ってしまう。しかし不思議なことに彼が作成したものが一度も役に立たなかったことがない。今原稿を書いている私の横でも何か作成している。

「今はな、穴を開けなくても付けられるピアスを作ってるんだよ」

もう既に市場に出回っているのでは。マグネットのやつとか。

「ちがうちがーう(腕で×を作る)。これはピアスをつけたいところに針を向けると差し込む直前に穴が空くんだ。お休みの日のお出かけにぴったりだろ?」

それ、下手したら凶器と化すだろう。あとで回収させてもらう。

「ちょちょちょっと待ってよー!そりゃあ危ないに決まってるから穴が空く体の部位は限られるように作ってるぞお?だから、部位ごとに作っていくつもりだ!」

…こんな風にいつも何かを作り出すと我々も止められない。
しかし幾度となく彼の道具には助けられてきた。いつかこのピアスが役に立つこともあるのだろう。今後もよろしく頼む。
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