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「何が言いたいの?」
『俺の事好きだろ?』と、言われたらどうしよう。否定したところで正己は信じても、彼の嫉妬深い恋人は信じないだろう。
いもしない浮気相手だと私の事思うかもしれない。
『俺の事好きなんて見損なった。二度と会うつもりはない』
正己にそんな事を言われたら、いや、それくらいしないともう、諦めがつかないかもしれない。
「彼氏がいるのか?」
「は?」
思いもやらない言葉に、私は目を見開いた。
何言ってるんだ。私ほど男の影がない女はない。
「いないわよ」
私はとっさに否定をする。
気付かれなくて良かった。良かったけれど、彼の鈍さに苦笑いが出てくる。
考えてみれば、10年以上も私の気持ちに気が付かなかったのだから、鈍くて当然かもしれない。
「本当に?」
「本当よ」
「でもさ、お前、27なのにまだ彼氏が居ないのか?」
余計なお世話だ。
私はなりふり構わず。好きでもない男と付き合いたいわけではないのだ。
それに、告白された事もないし。
派手な正己とは違い。私は太っているし分厚いメガネのせいで野暮ったく見える。
親以外の人間に可愛いと言われた事はない。
マイルドにモテない事を指摘されて口調が思わず荒くなる。
「なんですって!?」
「俺がだれか紹介しようか?」
紹介されたところで、その人とうまくいかなければ、その人とも正己とも後々気まずくなるじゃないか。
そんなリスクは犯したくない。
「結構よ」
「でもさ、やっぱり寂しいんだろ?結婚したら俺は構えなくなるし」
『構えなくなる』その言葉が、なぜか胸に引っかかる。
「寂しくなんか無いわ」
「じゃあ、紹介したい」
「嫌だって言ってるでしょ」
しつこく食い下がる正己に、私の苛立ちが強くなっていく。
いつもなら、こんな事を彼は言ってこないのに、なぜこんなにも今日は口うるさいくらいに言ってくるのだろう?
「理沙さんが、俺と由寿の関係を疑っている」
全てに合点が行った。理沙の疑いを晴らすために、私にしきりに異性を紹介したいと食い下がってきたのか。
「疑うも何も何もないじゃない」
「でも、理沙さんが由寿に彼氏が出来ないと認めないって言ってる」
「一生認めて貰えなくていいわよ」
「そんな事言うなよ」
認めないってなんなのよ。
理沙は、私の交友関係にも口出しをしたいのだろうか?なぜそんな事をしたいの?
面倒くさい。
「黙っていたけど。私、彼氏いるの」
口からポロリと出た嘘に、思わず舌打ちしたくなった。
こんな嘘すぐにばれてしまう。わかってるのに、そもそも、親しい異性なんて数えるほどしかいない。
「本当か?」
「ええ、そうよ」
嘘と言えるわけもなく、私は嘘を重ねていく。
「じゃあ、連れてきてくれよ。無理ならそっちに行くから」
「嫌よ」
いない彼をどうやって連れてくればいいのだろうか?
「なんでだよ。彼氏なんて嘘なんだろ?素直に男を紹介されろよ」
さっき、彼氏が居るだろう?と聞いてきたのも忘れて正己はそんな事を言い出す。
言っていることが無茶苦茶だ。
「連れて行くも何も、嫌なもんは嫌なの」
「とにかく俺は、そっちに行くからな」
そう言って正己は、一方的に電話を切ってしまった。
『俺の事好きだろ?』と、言われたらどうしよう。否定したところで正己は信じても、彼の嫉妬深い恋人は信じないだろう。
いもしない浮気相手だと私の事思うかもしれない。
『俺の事好きなんて見損なった。二度と会うつもりはない』
正己にそんな事を言われたら、いや、それくらいしないともう、諦めがつかないかもしれない。
「彼氏がいるのか?」
「は?」
思いもやらない言葉に、私は目を見開いた。
何言ってるんだ。私ほど男の影がない女はない。
「いないわよ」
私はとっさに否定をする。
気付かれなくて良かった。良かったけれど、彼の鈍さに苦笑いが出てくる。
考えてみれば、10年以上も私の気持ちに気が付かなかったのだから、鈍くて当然かもしれない。
「本当に?」
「本当よ」
「でもさ、お前、27なのにまだ彼氏が居ないのか?」
余計なお世話だ。
私はなりふり構わず。好きでもない男と付き合いたいわけではないのだ。
それに、告白された事もないし。
派手な正己とは違い。私は太っているし分厚いメガネのせいで野暮ったく見える。
親以外の人間に可愛いと言われた事はない。
マイルドにモテない事を指摘されて口調が思わず荒くなる。
「なんですって!?」
「俺がだれか紹介しようか?」
紹介されたところで、その人とうまくいかなければ、その人とも正己とも後々気まずくなるじゃないか。
そんなリスクは犯したくない。
「結構よ」
「でもさ、やっぱり寂しいんだろ?結婚したら俺は構えなくなるし」
『構えなくなる』その言葉が、なぜか胸に引っかかる。
「寂しくなんか無いわ」
「じゃあ、紹介したい」
「嫌だって言ってるでしょ」
しつこく食い下がる正己に、私の苛立ちが強くなっていく。
いつもなら、こんな事を彼は言ってこないのに、なぜこんなにも今日は口うるさいくらいに言ってくるのだろう?
「理沙さんが、俺と由寿の関係を疑っている」
全てに合点が行った。理沙の疑いを晴らすために、私にしきりに異性を紹介したいと食い下がってきたのか。
「疑うも何も何もないじゃない」
「でも、理沙さんが由寿に彼氏が出来ないと認めないって言ってる」
「一生認めて貰えなくていいわよ」
「そんな事言うなよ」
認めないってなんなのよ。
理沙は、私の交友関係にも口出しをしたいのだろうか?なぜそんな事をしたいの?
面倒くさい。
「黙っていたけど。私、彼氏いるの」
口からポロリと出た嘘に、思わず舌打ちしたくなった。
こんな嘘すぐにばれてしまう。わかってるのに、そもそも、親しい異性なんて数えるほどしかいない。
「本当か?」
「ええ、そうよ」
嘘と言えるわけもなく、私は嘘を重ねていく。
「じゃあ、連れてきてくれよ。無理ならそっちに行くから」
「嫌よ」
いない彼をどうやって連れてくればいいのだろうか?
「なんでだよ。彼氏なんて嘘なんだろ?素直に男を紹介されろよ」
さっき、彼氏が居るだろう?と聞いてきたのも忘れて正己はそんな事を言い出す。
言っていることが無茶苦茶だ。
「連れて行くも何も、嫌なもんは嫌なの」
「とにかく俺は、そっちに行くからな」
そう言って正己は、一方的に電話を切ってしまった。
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