恋の終わらせ方

毛蟹葵葉

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そして、日曜日。待ち合わせの駅の改札口の前。
待ち合わせの時間よりも早く到着した私は、ぼんやりと高梨を待っていた。きっと彼は予定時間か、それよりも早い時間に来てくれるだろう。

「雨、降るかしら。降ったらいけるところが限られてくるわね」

天気予報は雨になっていて、駅に行くまでに何度も空を見たが、雲に覆われた空はいつ雨が降り出してもおかしくなかった。
徒歩で駅まで来たけれど、帰りは土砂降りにならなければいいが。
傘は持ってきたが、タクシーを拾わないといけないかも。
それよりも、高梨だ。彼を土砂降りの中で帰らせるのはなんだか申し訳ない。
雨が降ったからと言って、会う約束を断わる理由にはならないけれど。
高梨は雨が降った程度でドタキャンなんてしない。
嫌な事を思い出しそうだ。

「待った?」

聞き覚えのある。低くそれでいて透明感のある声がして、私は顔を上げた。
目が合うと、今日会えた事が信じられないと言わんばかりに、嬉しそうに高梨は微笑んだ。
その笑顔を見ると、なぜか胸の奥底から暖かくなってくるような気がした。穏やかな高梨と過ごすと、ささくれだった気持ちが少しずつ落ち着いていく。
小さな事に喜びを見出す彼は一緒にいると気が楽で、肩に力を入れなくてすむ。
嫌だと思った事を無理して笑って許したり。そんな必要の無い人だ。彼は私の嫌がる事を絶対にしない。

ずっと私の大切な友達だ。それを、変えるつもりはない。

「由寿さんって格好だね」

私はあまり気負わず。仕事に行く時とほぼ変わらない服装をしていた。
身体にあまりフィットしない、ベージュのシャツに黒のロングスカートだ。
違いがあるとしたら、万年ズボンのわたしが珍しくスカートを穿いているくらいか。あとは、仕事ではまず身につけない、お気に入りのネックレスを付けている。
高梨と会う時は、どうしても服装に頭を悩ませる。気合いを入れる必要はないけれど、あまりに身なりに気を遣わないのは失礼な気がする。

「あぁ、だけど、いつも以上にお洒落してくれてる。ありがとう」

彼はいつも私の小さな、悪くない変化に気がつくのだ。
高梨のいいところは人を貶さない所だ。何かしら良いところを見つけ出して必ず褒めてくれる。
今日の服装もデートをするにはいいとは言えたものではないはずなのに、私がそれなりに気を使ってくれた事が嬉しいと言わんばかりにものを言ってくれる。

なんでこんなに、いい人がモテないのかしら?

私は不思議で仕方なかった。

高梨はというとシンプルな服装をしていた。
無難そうなカーキのポロシャツに黒色のカーゴパンツだ。
しかし、高身長で手足の長い高梨はもともとスタイルが良いせいか、よくにあっている。

これじゃ、モデルと土偶ね。

私との対比はあまりにも残酷だ。
私が三歩後ろを歩いても、同じ人間を名乗るのは失礼な気すらする。
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