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八王子麗は処女を喪失したい
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八王子麗は処女をやめたい
「君ってインフルエンザになっても、薬じゃなくて芋焼酎飲んで治しそうだよね」
何なのよ。それ。
風邪を引いたら普通に病院に行くし、薬だってちゃんと飲むわよ。
インフルエンザになった事は一度たりともないけれど、なったとしても芋焼酎で治すわけがない。
言い返そうと思ったら、ドヤ顔で追撃がきた。
「強気な女に僕は可愛気を見出せない」
何なのよ。この人は。
マッチングアプリを利用して、1回目のデートをした相手に言うセリフなのかそれは。
「男に選ばれたいならもっと、従順にならないと」
女に夢を見ているのかこの男は。
「なんで私が自分を曲げてまで、そんな事をしないとならないの?貴方はそこまでの男なの?」
言い返してから、私はやばいと口を押さえる。
ちょっと言いすぎたかもしれない。
チラリと男の顔を見ると、顔をどんどん青ざめさせていった。
まさか言い返すなんて思いもしなかった様子だ。
だんだん、腹が立ってきた。
「私が自分の思い通りにならないから、そうやって上から押さえつけるように物を言って、いい気分になりたかっただけでしょう?」
「……」
男は図星だったようで黙り込む。
今まで、色々な女性にも同じ事を言って心を抉って来たのかもしれない。
そもそも、これを言われたきっかけは肉体関係を求められて、慎重に考えたい。と、断ったからだ。
「小さい男……、身長もそうだけど、器も小さい」
トドメの一言に男は涙目になって逃げていった。
……当然、今回のマッチングもうまくいかなかった。
「……しなくてよかった。初体験があんなんだったら死ぬほど後悔するだろうし」
言ってから後悔した。
私がマッチングアプリを利用している理由は、処女を喪失するためだ。
あれから、思春期の失恋未満を経験してから、私は異性とは関わらないように生きてきた。
高校も大学も女子のみの学校を選び、変に逞しくなって大人になってしまった。
まだ青かった私は一生男と関わらないで生きていこうと思っていたが、やっぱり無理だった。
女性しかいない会社なんてない。そもそも就職難もあり仕事を選ぶ事すらできない。
なんとか、就職して男っ気のない日々を過ごして、気がつけば26歳になっていた。
この年になって気がついたのだ。
処女いらない。でも、恋はしたくない。
そこで、合理的に考えてマッチングアプリを利用しようと考えたのだ。
……出会う男性はクセが強くて、すぐに「やらせろ」と言ってくるような人ばかりだった。
つまり、相手を見つけるのが上手くいっていない。
これで三人目だ。
……恋愛に向かない私は、そのくせ他人の恋愛には興味があって、ラブロマンスや「腐れ縁」の恋バナを聞くのが大好きだ。
物語ではない、セックスはどんなものなのか、好奇心が強くあった。
物語では、多幸感と快楽でどうにかなってしまうヒロイン。
多幸感はなくても気持ちがいいなら経験してみたい。
恋はしなくてもセックスをするのは別にいいのではないか、と、考えるように至り。相手を見つけられなくて頭を抱えている。
どうせするなら、いい雰囲気でいい感じに優しくされたいと考えてしまうのはわがままなのだと思う。
だけど、譲れないところだってある。
自分勝手な人は避妊を怠るし、相手のことを思いやれない。すぐに「やらせろ」という男は間違いなくそれに当てはまると思っている。
一生に一度の事だし、二度とセックスをするつもりもないので、そこだけはどうしても譲れなかった。
「帰って、別の人探そう」
こうして、私は家に帰り再び、マッチングアプリを開いた。
今度こそ、と、鼻息を荒くさせて。
そこで、私は運命的な出会いをした。
そのお陰なのかフラれたというのに、週末は楽しくその人とメッセージでのやり取りをする事ができた。
ただ、今回は「いいな」と、思うよりも気が合いそうだな。という、印象の方が強かった。
何だか、当初の目的からズレているような気がしなくもないけれど、なんだかんだで、楽しいのでやり取りをしていた。
そうこうしている間に、休日は終わってしまった。
「君ってインフルエンザになっても、薬じゃなくて芋焼酎飲んで治しそうだよね」
何なのよ。それ。
風邪を引いたら普通に病院に行くし、薬だってちゃんと飲むわよ。
インフルエンザになった事は一度たりともないけれど、なったとしても芋焼酎で治すわけがない。
言い返そうと思ったら、ドヤ顔で追撃がきた。
「強気な女に僕は可愛気を見出せない」
何なのよ。この人は。
マッチングアプリを利用して、1回目のデートをした相手に言うセリフなのかそれは。
「男に選ばれたいならもっと、従順にならないと」
女に夢を見ているのかこの男は。
「なんで私が自分を曲げてまで、そんな事をしないとならないの?貴方はそこまでの男なの?」
言い返してから、私はやばいと口を押さえる。
ちょっと言いすぎたかもしれない。
チラリと男の顔を見ると、顔をどんどん青ざめさせていった。
まさか言い返すなんて思いもしなかった様子だ。
だんだん、腹が立ってきた。
「私が自分の思い通りにならないから、そうやって上から押さえつけるように物を言って、いい気分になりたかっただけでしょう?」
「……」
男は図星だったようで黙り込む。
今まで、色々な女性にも同じ事を言って心を抉って来たのかもしれない。
そもそも、これを言われたきっかけは肉体関係を求められて、慎重に考えたい。と、断ったからだ。
「小さい男……、身長もそうだけど、器も小さい」
トドメの一言に男は涙目になって逃げていった。
……当然、今回のマッチングもうまくいかなかった。
「……しなくてよかった。初体験があんなんだったら死ぬほど後悔するだろうし」
言ってから後悔した。
私がマッチングアプリを利用している理由は、処女を喪失するためだ。
あれから、思春期の失恋未満を経験してから、私は異性とは関わらないように生きてきた。
高校も大学も女子のみの学校を選び、変に逞しくなって大人になってしまった。
まだ青かった私は一生男と関わらないで生きていこうと思っていたが、やっぱり無理だった。
女性しかいない会社なんてない。そもそも就職難もあり仕事を選ぶ事すらできない。
なんとか、就職して男っ気のない日々を過ごして、気がつけば26歳になっていた。
この年になって気がついたのだ。
処女いらない。でも、恋はしたくない。
そこで、合理的に考えてマッチングアプリを利用しようと考えたのだ。
……出会う男性はクセが強くて、すぐに「やらせろ」と言ってくるような人ばかりだった。
つまり、相手を見つけるのが上手くいっていない。
これで三人目だ。
……恋愛に向かない私は、そのくせ他人の恋愛には興味があって、ラブロマンスや「腐れ縁」の恋バナを聞くのが大好きだ。
物語ではない、セックスはどんなものなのか、好奇心が強くあった。
物語では、多幸感と快楽でどうにかなってしまうヒロイン。
多幸感はなくても気持ちがいいなら経験してみたい。
恋はしなくてもセックスをするのは別にいいのではないか、と、考えるように至り。相手を見つけられなくて頭を抱えている。
どうせするなら、いい雰囲気でいい感じに優しくされたいと考えてしまうのはわがままなのだと思う。
だけど、譲れないところだってある。
自分勝手な人は避妊を怠るし、相手のことを思いやれない。すぐに「やらせろ」という男は間違いなくそれに当てはまると思っている。
一生に一度の事だし、二度とセックスをするつもりもないので、そこだけはどうしても譲れなかった。
「帰って、別の人探そう」
こうして、私は家に帰り再び、マッチングアプリを開いた。
今度こそ、と、鼻息を荒くさせて。
そこで、私は運命的な出会いをした。
そのお陰なのかフラれたというのに、週末は楽しくその人とメッセージでのやり取りをする事ができた。
ただ、今回は「いいな」と、思うよりも気が合いそうだな。という、印象の方が強かった。
何だか、当初の目的からズレているような気がしなくもないけれど、なんだかんだで、楽しいのでやり取りをしていた。
そうこうしている間に、休日は終わってしまった。
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