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唐突な縁談話
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数日後、とんでもないことが起こった。
私宛に縁談話が来たのだ。
「ポーリーン。驚かないで聞いて欲しいんだけど」
「お父様。何よもったいぶって」
「お前に縁談話が持ち込まれたんだが」
長い前振りとともに繰り出された単語に私は驚いた。
いつかくる物だとは思っていたけれど、こんなにも呆気なくその日が来るとは思わなかった。
「……そう、どんな物好きなの?」
できれば、知っている人がいいな。たまに家に帰るのを許してくれる人だったらいいな。
そんな淡い期待を持ちながら、次の言葉を待つ。
「それが……」
まさかな人物の名前に、私は思わず大きな声を上げた。
「えぇえ!?」
「そんなに驚く事かしら」
母は私の驚きにのほほんと笑っていた。
「そうですよね。領地もご近所ですし、何か事業を始めるならまだしも、よく知っている子が一番だと思いますわ」
それに、クロエも当たり前だと言わんばかりに頷いた。
周囲は意外とそうなる物だと思っているようだ。
私とトリスタンとは違って。
ただ、考えてみると確かにそのとおりなのかもしれない。
「つまり消去法で決まったのね」
「いや、それは違う!」
私の結論にロータスは、かなり食い気味に否定した。
その勢いに、周囲はかなり驚いていた。
兄がこんなにも大きな声を出すのは珍しいのだ。
「ロータス落ちついて、まあ、こちらで何か考えを巡らせてもあまり意味のないことですし」
「そうね。で、ポーリーンはどう考えてるの?」
母に問いかけられて、私は答えに詰まる。
どうするべきかなんてわからない。
「どうって」
立場が上のあちらからの縁談話を断ることなんてできない。
「断りたいならそうしてもいいぞ」
「あなた、でも、そんな事したら」
「そんな事で怒るような人たちじゃないからな」
確かに、断ったとしてトリスタンの家の人たちが怒るようには思えない。
残念がるかもしれないけれど。
「あ、誰か好きな人とかいるのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど」
狭い交友関係では、そういった相手すらいない。
「じゃあ、受けるのか?トリスタンは、少し口うるさいがいい奴だぞ、ポーリーンの事を大切にしてくれるはずだ」
「そんなの一番よく私が知ってるわよ!お兄様よりも付き合いが長いもの!」
兄以上にそれは、わかっている。
でも、だからこそ。なぜ、私なのだろうか。
他にいい人だっているはずだ。今はいなくてもこれから先に出会うかもしれない。
それを考えたら結論を決めるのはあまりにも早くないだろうか。
「わ、私トリスタンに話を聞いてくる!何かの間違いかもしれないから。向こうが嫌がってるかもしれないし!」
「いや、間違いなく間違いじゃないから」
ロータスは、なんだか意味のわからない事を言っている。
どういう意味なのか。
どちらにしても、考えたところで当事者に聞かないと答えなんてわかるはずがない。
「今から、トリスタンのところにいってくるから!」
私は走り出していた。
~~~
お読みくださりありがとうございます
ネタバレに突っ込む感想が来て、ヒュッってなってます
反映させような悩んでます
それでも、感想もらえると嬉しいです
エール、お気に入り登録ありがとうございます!
おかげさまで、ホットの10位に一度だけ食い込む事ができました!
ありがとうございます!
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「ポーリーン。驚かないで聞いて欲しいんだけど」
「お父様。何よもったいぶって」
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いつかくる物だとは思っていたけれど、こんなにも呆気なくその日が来るとは思わなかった。
「……そう、どんな物好きなの?」
できれば、知っている人がいいな。たまに家に帰るのを許してくれる人だったらいいな。
そんな淡い期待を持ちながら、次の言葉を待つ。
「それが……」
まさかな人物の名前に、私は思わず大きな声を上げた。
「えぇえ!?」
「そんなに驚く事かしら」
母は私の驚きにのほほんと笑っていた。
「そうですよね。領地もご近所ですし、何か事業を始めるならまだしも、よく知っている子が一番だと思いますわ」
それに、クロエも当たり前だと言わんばかりに頷いた。
周囲は意外とそうなる物だと思っているようだ。
私とトリスタンとは違って。
ただ、考えてみると確かにそのとおりなのかもしれない。
「つまり消去法で決まったのね」
「いや、それは違う!」
私の結論にロータスは、かなり食い気味に否定した。
その勢いに、周囲はかなり驚いていた。
兄がこんなにも大きな声を出すのは珍しいのだ。
「ロータス落ちついて、まあ、こちらで何か考えを巡らせてもあまり意味のないことですし」
「そうね。で、ポーリーンはどう考えてるの?」
母に問いかけられて、私は答えに詰まる。
どうするべきかなんてわからない。
「どうって」
立場が上のあちらからの縁談話を断ることなんてできない。
「断りたいならそうしてもいいぞ」
「あなた、でも、そんな事したら」
「そんな事で怒るような人たちじゃないからな」
確かに、断ったとしてトリスタンの家の人たちが怒るようには思えない。
残念がるかもしれないけれど。
「あ、誰か好きな人とかいるのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど」
狭い交友関係では、そういった相手すらいない。
「じゃあ、受けるのか?トリスタンは、少し口うるさいがいい奴だぞ、ポーリーンの事を大切にしてくれるはずだ」
「そんなの一番よく私が知ってるわよ!お兄様よりも付き合いが長いもの!」
兄以上にそれは、わかっている。
でも、だからこそ。なぜ、私なのだろうか。
他にいい人だっているはずだ。今はいなくてもこれから先に出会うかもしれない。
それを考えたら結論を決めるのはあまりにも早くないだろうか。
「わ、私トリスタンに話を聞いてくる!何かの間違いかもしれないから。向こうが嫌がってるかもしれないし!」
「いや、間違いなく間違いじゃないから」
ロータスは、なんだか意味のわからない事を言っている。
どういう意味なのか。
どちらにしても、考えたところで当事者に聞かないと答えなんてわかるはずがない。
「今から、トリスタンのところにいってくるから!」
私は走り出していた。
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