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妻からの手紙2

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 ところで、貴方に謝らないといけない事があるの。私、貴方には遺産を遺せないの
 自分の死を感じて、真っ先に考えたのは貴方の事よ。だけどね、もしも、私と同じような病気で治療さえ受けられれば、助かる命もあるんじゃないのかなと思ったら。その人達を助けたいと思ったの
 だから遺せる物は想い出しかないの。ごめんなさい。だけど、強い貴方なら大丈夫よね?

 私、貴方の事なら何でも知っているの

 まずは、帰り道でこっそり寄り道をしていること。結婚した時からそうよね?何を摘み食いしていたのかしら。うふふ
 美味しいものは沢山あるから仕方ないわよね。やっぱりもっと私も頑張るべきだったわね。どうも料理は苦手で、いつも貴方は私の作ったものを残したわよね
 あ、責めているわけじゃないわよ。怒っていないもの
 バーベキューでは全部ご飯を食べてくれたわね。凄く嬉しかったの。初めてだったんじゃないかしら

 ねえ、なぜ私は死ぬのかしら?
 突然そんな事を聞かれても貴方は困るわよね。わかってる。だけど、どうしても聞きたかったの
 貴方はそれを知っているはずよね?
 答えなくていいわよ。別に、だってもう、私はこの世にはいないもの
 それを知る手立てはないものね

 もうひとつ、貴方の部下の女の子はとても可愛らしい子ね
 あ、嫉妬しているわけではないわよ
 あの子と、猫の話でよく盛り上がっているそうね。バーベキューで聞いたの
 だけど、猫が居なくなったらしいわね
 早く見つかるといいけれど。ちょっと心配ね

 ねえ、貴方。私がなぜ死ぬのか知らないの?
 本当は知っているはずじゃないのかしら?
 貴方は私以上に何でも知っているはずでしょう?
 貴方はなぜ家に帰らなかったの?
 身体にいいからと言って用意してくれた食材は本当に良いものだったのかしら?
 貴方は私を殺したかったのでしょう?

 教えてくれなくても別にいいわ
 正直に白状すると、私は貴方に殺されたかったの。愛されないのならそれでもいいと思ったから
 だけど、他の女と浮気するのは許せないわ
 貴方が私を殺したという証拠は、父の会社に預けられている。だから、証拠隠滅しようとしても無駄よ

 見逃して貰えると思ったの?

 私は別に良かったのよ。だけど、貴方はあの可愛い部下の女の子とすぐ再婚する予定よね?
 そんな事、絶対にさせないわ。刑務所に入って頭を冷やした方がいいわよ。もし、そうなっても彼女は貴方を愛しているかしら?
 ごめんなさい。だけど、貴方が大好きなの。私は殺されても変わらず貴方の事を愛しているわ

 ねえ、ところで知っている?

 猫の肉ってリンが豊富に含まれているのよ。
 私の祖父が戦争で食べるものがなくて、猫を焼いて食べた話を聞かせてくれたの

 二人とも可愛がっていた猫のお肉を、美味しそうに食べていて、私とても嬉しかったの
 なんで気が付かなかったのかしら?あんなに可愛がっていたのに。不思議ね

 結局、愛なんてそういう身勝手なものなのよ

 うふふふ。やっぱり。二人ともあの猫のお肉を美味しそうに食べているのを見ていて、笑い出すのを我慢するのが大変だったわ

 私は貴方の幸せを願っているわ
 貴方の幸せは私の事を忘れず、ずっと愛し続ける事よ
 身勝手なんて言わせないわよ。貴方だってあの子のために私を殺したんだから



 私は、手紙を全てを読み切り。指先から震えて来るのがわかった。
「うそ、だろう?気がついていたなんて、そんなバカな」
 妻は従順な女だった。私の言うことは全て受け入れて、面白味のないつまらないただの女でしかなかった。
 あの女が、こんな事をするなんて。
「猫……?まさか」
 手紙には確かに私と彼女が猫を食べたと記されていた。あの時の肉は確かに固くあまり美味しくはなかった。
 しかし、最後の付き合いだと思って胃の中に押し込んだ記憶がある。
 それが、彼女の猫なら……。
「うっ……っ、あぁ」
 気がつけば胃の中の物を全て床に吐き出していた。
 そういえば、部下とも妻が亡くなってから一度も会っていない。連絡すら来ないのだ。
「何があった?彼女は?」

ドンドン!

 家のドアを力強く叩く音が聞こえる。きっと、ドアを開けると全てが終わるだろう。
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