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 そして、お茶会当日。

 当然のように、私は父にドレスを変更したことを責められていた。
 ドレスは用意したが、あとは、ノータッチで責めてくるなどと何と無責任なのだろうか。
 だから、デルドレーはメンヘラになってしまったのだ。
 この男のことを父親だと思うことを私はやめた。

「なぜそんな地味なドレスにした!」

 赤髪赤目という、脳をガンっと殴るような派手な色味にあのドレスはキツイ。似合わないにも程がある。
 目に入れる人も可哀想だが、それを着る私の精神的な苦痛はどのように保障してくれるのだろうか。
 目の前にいる血のつながりがあるだけの人が笑われるくらいなら、どうぞどうぞ。という気持ちなのだが、自分が笑われるのなら訳が違う。
 全力で阻止する。

「あんな、くそダサいドレスなんて着たら笑い物ですわ」

 私は怒られてもいいので、言いたいことを言うことにした。

「お前、今なんと言った?」

 父は、「ダサい」と貶されたことに腹を立てた様子で、私に食ってかかる。

「私の顔を見てください。キツイ顔をしておりますよね?あんな、ぶりっ子が着るようなドレスなんか似合わないどころか生物兵器ですよ」

「は?」

 思わぬ反論だからなのか、父はぽかんと口を開いた。
 普段なら、嫌であったとしてもデルドレーは、父の言う通りの事をしたのだろう。
 なんだか腹が立ってきたわ。

 好き勝手に言ってやろう。

「誰が選んだのかわかりませんけどね。顔とのバランスとか理解できないんですかね。センスがないどころか最悪です。あんなもん贈られるくらいなら布でも巻いておいた方がましです」

「最悪……」

 父はセンスが最悪と言われた事にショックを受けている様子だった。

「殿下に嫌われたくてあれを着るのでしたらわかりますが、アピールするのならあれは最低です。嫌われたいんですか?」

「最低……」

 父は俯いた。

「センスがないにしても、あそこまで酷いのでしたらいっそ可哀想ですわ」

「可哀想……」

「生まれてきた事を後悔した方がいいレベルのセンスのなさです」

「そこまで言う必要あるか?」

 父は明らかに凹んでいるが、だからなんだ。と、私は思っている。

「あんなもの着させられる私の方が可哀想ですわ」

「……」

 父は何も言えずに項垂れていた。
 私はそれを見て上機嫌になって馬車へと乗り込んだ。

 あとは、野となれ山となれだ。

 努力したところで無理なものは無理だし、しなくていい事はしなくてもいい。
 挨拶はして、あとは、お菓子だけ食べて帰ってくれば、やるべきことはやったとカウントしてもいいはずだ。
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