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 王家主催のお茶会とは、文字通り王家が主催のお茶会のことだ。
 そこには、所謂お見合い的な側面もある。
 というよりも、王族に見合う令嬢たちを値踏みするためのものだ。
 そして、見繕った令嬢を他の貴族に奪われないために牽制するような場でもある。

 いいところだけつまみ食いして、残り滓だけであとは好き勝手にやれ。という意味もあるのだろう。
 舐め腐っている。

 小説が始まったのは、デルドレーが18歳の時からだ。
 そのため、この場でデルドレーがどのような立ち振る舞いをしたのか全くわからない。

 知ったところで、自分にそれができるのかは微妙だが。

 父親に言われるままに、周囲を牽制しつつもクリストファーに必死にアピールしたのだろうか。
 もしそうなら、結果的に婚約者になれなかったデルドレーはあまりにも気の毒だ。
 ただ、物語が始まる前まで、クリストファーにアピールをしていたわりには、作中彼女は彼に興味のない様子だった。

「作者がかなり適当な人だったから、その辺も忘れて書いていた可能性が高そうだよね」

 どんなふうに、立ち振る舞ったとしても私が選ばれることはないだろう。

 国が安定していなかった父の時代とは違い。今は安定している。
 クリストファーに過ぎる権力を与えたら、どうなるのだろう。当人にそのつもりはなくても、周囲はどう考えるのか。
 国王としてもほどほどに後ろ盾のある家門と婚姻をさせたいだろう。

 第一王子と私が婚姻するならまだしも、彼はすでに婚姻している。

「デルドレーは、物語が始まるまでどうやって生きてきたのかな」

 ふと、そんな疑問が過ぎる。
 私にはデルドレーがオスカーを好きな理由がわからなかった。
 物語の始まりの時はすでにオスカーとデルドレーは婚約関係にあったのだ。

 なぜ、そうなったのかという描写は全くなかった。
 
「いい加減な作者め……」

 私は諸悪の根源でもある作者に憤っていた。
 怒ったところで何の意味もないのだけれど、とにかく、オスカーの幸せのために自分はどうすればいいのか考える必要があった。

「責任取るために廃人と結婚なんて可哀想だよ」

 とりあえずお茶会をどう乗り越えるのか、一番最初にしなくてはいけないことはそれだった。

「お茶会のドレスってこれなの?」

 私は、ビアが用意したドレスにめまいを覚えた。
 まんま、クリストファーの瞳の色のドレスにふんだんにヒラヒラのフリフリのレースがあしらわれている。
 デイジーのような可愛らしい顔立ちをしている少女ならこれも似合うだろう。
 しかし、私の顔はキツく。こんなものを着たら恥をかくだけだ。
 しかも、クリストファーへのアピールが高火力すぎて、少し、いや、かなり気持ち悪い。

「シンプルなものを、これはちょっとないわよ。センスどころか神経というか頭がおかしいレベルよ。絶対似合わないわよ。これ」
 
 ドレスを選んでくれたビアには申し訳ないが、私がドレスを替えるようにビアに頼むと不満そうな顔よりも、安堵した様子でドレスを見繕ってくれた。

 おそらく父が用意したのだろう。

 頭も悪ければセンスもないなんて、いいところが何一つないなんて、可哀想だと私は思った。
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