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 デビュタントのお披露目に参加するということは、つまり、ライザと顔を合わせる事だってあるということだ。
 ライザとフレディが恥という言葉を知っていたら、わざわざ私たちに声をかけてくるということはしないはずだ。
 私はそう思っていた。
 あろう事か、ライザはわざわざ私達に声をかけてきた。
 こういう時に限ってレオナルドは、発表のために第二王子と話し込んでいた。
 優しいナイジェルがやんわりと迷惑だと伝えても引き下がる様子はなかった。

「お姉様。もういいんです。その場所を私に返してください」

 自分がナイジェルの婚約者になるのが当然だと言わんばかりのライザに私は絶句した。

「それにしても、お姉様、珍しくセンスのいいドレスをお召しになっているのですね。以前着ていた目立たない物の方がずっとお似合いですわよ」

 お前には、あの野暮ったい酷いドレスを着ていろ。と、はっきりと言われて。
 やはり、ライザはわざとそうなるように仕向けたのだと思った。

「……ライザ、そのドレスは貴女と同じ仕立て屋で作った物なのよ」

「ああ、そういえばそうでしたね。紹介して差し上げますか?」

「結構よ。あのドレスを着て、貴女の引き立て役になんてなりたくないもの」

 私がキッパリと断るとライザは、少し驚いていた。
 屋敷に居た時は、何を言っても何をしても無駄だと思っていた。
 誰もがライザの味方で……。
 だけど、今は違う。

「ところで、今まで通りにしませんか?ねえ、私の方がナイジェル様に相応しいですわ」

「……ライザ、やめなさい」

 尚も言い募るライザに、私は強く注意した。
 自分のしている事が恥晒しもいいところで、この日を楽しみにしてきた令嬢の迷惑になっているという自覚はないのだろうか。
 そばにいるフレディに目を向けると、顔を赤らめて目を逸らした。婚約者という立場ならなぜ止めないのだろうか。
 
「ここは、私の誕生パーティーでも、家族だけのお茶会でもないの。馬鹿みたいに騒ぐのをやめてちょうだい。他の令嬢がいるのよ。デビュタントを心待ちにしていた人たちの嫌な思い出になるような事をしたら許さない」

「自分の方が立場が上だと思っているの?」

 ライザは、小声で私に聞こえるようにそう言って馬鹿にした。
 その直後、みるみる表情を曇らせていき、涙を両目に溢れさせる。

「お姉様は、そうやって傲慢に権力を利用して私に意地悪をするのね」

 はらはらと涙をわざとらしく流す姿は同情を誘う。
 ライザはいつも自分に目を向けさせるために上手に立ち回ってきた。
 うまくいっていたのは、ライザを愛する両親とフレディがいたからこそだ。
 この場では非常識極まりない行動でしかない。
 私の周りの人たちもライザの様子が少しおかしい事に気がつき始めている。
 こんな事をしても恥をかくだけなのに。

「ライザ、貴女、自分が恥ずかしい事をしている自覚はあるの?」

 思わず出た言葉に、ライザは涙を出すのをやめてぽかんとした顔をしてきた。

「もしも、この場で今から一度でも話しかてきたら、縁を切ります。二度と話すつもりはありません」

 また何か言い出す前に私は宣言した。

 どのみち無視したところで、ライザは何かしらアクションをしてくるはずだ。
 わたしは、ここで、 騒ぎを起こすのはどうしても嫌だった。
 もしも、ナイジェルに捨てられたとしてもどんなに生活が困窮しても、ライザやギレット家に頼る事なんて絶対にしないだろう。
 そんな事をするくらいなら死んだ方がマシだ。それくらいの気持ちで言ってやった。

「ナイジェル様、この女は貴方の権力を利用して」

 ライザは、まるで私がナイジェルの権力を使っているかのように訴えかけてきた。

「私も同意見だが……、消えてくれないか?そこの婚約者君。黙ってないでこの馬鹿をなぜ止めない?」

 ナイジェルは、ライザとは会話できないと思ったのかフレディに声をかけていた。

「次に何かしてきたら摘み出してやる」

 ナイジェルの一言で、ライザとフレディはすごすごと去っていった。
 




 
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お読みくださりありがとうございます

相続トラブルで病んでいて、しばらく休みます
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