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「だいぶ、会っていないだろう?」

「……はい」

 ナイジェルにそう言われて、私は頷くしかできない。
 もう、ずいぶんとレオナルドと会っていない。

「実は、君のお兄さんと定期的に連絡は取っていた」

 連絡を取り合っていた理由は、仕事上の事かそれとも私のことなのか、どちらなのか。

「そうだったんですね」

「一度、お兄さんと、話してみたらどうだ?」

 そう言われても、レオナルドと何を話せばいいのだろうか。
 私は、熱に浮かされて記憶が混濁したあの日から、レオナルドの事を他人のように思っていた。
 熱から冷めた私に必死で声をかけてくれた時も、怒られているのだと思ってしまい避けてしまった。
 今更、どんな顔をしてレオナルドの顔を見ればいいのだろうか。
 レオナルドは私の事を許してくれないかもしれない。
 
「兄さんは私と会ってもいいと言ってくれましたか?」

「アストラの事を心配していたよ。嫌われても仕方ないとわかっていても、それでも顔を見たいと手紙には書かれてあったよ」

 会ってもいいのだろうか、と、私は思った。
 あの日、兄を拒絶したくせにどんな顔をして会えばいいのだろうか。
 でも、私はナイジェルの言葉を信じようと思った。

 ナイジェルの性格上。私とレオナルドが話すべきだと考えて、話を受けたのだと思うのだ。

「ああ、それでもアストラが会いたくないなら、関わらないようにするよ」

 会うべきだと言いつつも、私の気持ちを最優先してくれるナイジェル。

「会います」

 私は、逃げずに向き合うべきだと思った。

「レオナルドは、2週間後にやってくるよ」

「わかりました」

 なかなか急だなと私は思った。

「何でも、家でゴタゴタしていて、王城まで両親が乗り込んで来たらしくて、逃げるために来るみたいだ」

 ナイジェルの簡単な説明からでも、何かとんでもない事が起こっているような気がする。
 両親はレオナルドに会いに王城に行く事なんて今まで一度たりともなかった。
 わざわざ「乗り込む」だなんて、レオナルドが両親が困る事をした以外に考えられない。

「何があったんだろう」

「さぁ?私はわからないな。レオナルドから聞けばいいよ」

 私の疑問にナイジェルは、素知らぬ顔で笑っている。確かにその通りだ。
 今まで離れていた月日を埋めるには、少しでも時間を共にして話すべきだと思う。

「そうですね。確かに」

「……心配かもしれないけど、大丈夫、私が付いているから」

 ナイジェルは、そっと私の手を握りしめてくれた。

「アストラ様が傷つく事があったら、レオナルド様は私直々に領地からつまみ出すので安心してください」

 マリカがそういって鼻息を荒くする。

「それ、私が言いたかった……」

 しょんぼりしたナイジェルの呟きがおかしくて、気がついたら私は声を出して笑っていた。

「まだ、何もしていないのに、つまみ出すとか言われてレオナルド様が可哀想」

 マリオが気の毒そうな顔をしている
 確かにその通りだと思った。
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