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ナイジェル1
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ナイジェル 1
ナイジェル・シズリーは、辺境伯のたった一人の嫡男として生まれた。
シズリー家は、王族の血を引き代々辺境の地を魔獣たちから守っている。
シズリー家の強さは「化け物」そのものだ。
貴族たちは、シズリー家を「化け物」と揶揄する。そして、それは事実でもあった。
シズリー家の強さの理由は、「竜の血」を受け継ぐからだ。
血は少しずつ薄まっているものの、それでも強大な力だ。この「竜の血」は、強さを与える反面危険なものでもあった。
「竜の血」は、暴走する。
血の暴走を防ぐ方法は一つだけ、番を見つけ出す事だ。
ナイジェルの父は、歴代のシズリー家の中でも「竜の血」の影響を受けずに弱かった。
番を見つける事は出来ず。それでも、ナイジェルの母と結ばれた。
彼は穏やかな性格をしていて、とても優しかった。
そんな彼ですらも「血の暴走」からは逃れられなかった。
それは、じわじわと身体を蝕んでいった。
肌は爛れ落ち、全身を駆け巡る激痛に、穏やかだった性格は消え去った。
母はそれに耐えきれず逃げた。
爛れ落ちた肌の後に出てきたものは、トカゲの鱗のような肌だった。その頃には、父は狂人になっていた。
ナイジェルは、穏やかだった父が狂い死ぬまでの全てを見てきた。
父の姿を見たナイジェルは、人前に姿を現す事を嫌がった。
しかし、彼も魔力の発現が起こった。
本来なら、王都に行き学園に通い魔力のコントロールを学ぶはずだった。
しかし、国王が気を遣い王城でそれを学ぶ事になった。
結果的に、その特別扱いのせいで第一王子セルドリスに嫌われる事になった。
まさか、嫌がらせのために王命で結婚相手を決めるなどと誰が思うのだろうか。
「困ったな」
ナイジェルは、王命の記された手紙を読んで額を押さえた。
「ギレット家は、令息と令嬢二人いたはずだ」
ナイジェルの記憶が正しければ、令息と末っ子の令嬢には婚約者がいなかったはずだ。
令息との婚約はありえないので、末っ子の令嬢と婚姻する事になりそうだ。
「そういえば、ギレット家のレオナルドは、ロシェルと一緒に研究をしていたな」
王城で弟のように可愛がっていたロシェルの事をナイジェルは思い出した。
直接の面識はないが、ロシェルの仲間ならきっと人柄がいいはずだ。
その家の者の人柄がいいかは別の話だが。
末っ子令嬢は、この国で一番美しいと言われているらしい。
「可哀想に」
ナイジェルは、ライザに対して同情した。
嫌がらせの王命で、勝手に「化け物」と婚姻させられる事になるのだから。
まだ、正式に婚約者は決まっていないが、ライザと婚姻する事になるだろう。
ナイジェルは、あえてギレット家から、誰と婚姻するかの返事を急かす事はしなかった。
セルドリスの嫌がらせの縁談を国王が止めてくれるのを期待していたのもあった。
しかし、王命は取り消される事はなかった。
国王も国王でナイジェルの血を引く子供が欲しかったのだ。
少しして、ギレット家から、ライザを婚約者として据えるつもりだったが、アストラに変更したと返事が来ても怒りはわかなかった。
同情する相手が、ライザからアストラへと変わっただけだった。
シズリー家が途絶えないように、子供を一人だけ申し訳ないが産んでもらい離縁しようと、ナイジェルは考えていた。
「血の暴走」で、息を引き取る日まで苦しみ続けた父を知っているナイジェルは、配偶者に期待はしていなかったし、早く解放してあげたいとすら思っていた。
誰にも迷惑をかけずにひっそりと死にたい。
ナイジェルはずっとそんなことを考えて生きてきた。
しかし、そんな価値観はアストラから届いた手紙によって全てがひっくり返った。
お読みくださりありがとうございます
感想、お気に入り登録、エールありがとうございます!
ナイジェル・シズリーは、辺境伯のたった一人の嫡男として生まれた。
シズリー家は、王族の血を引き代々辺境の地を魔獣たちから守っている。
シズリー家の強さは「化け物」そのものだ。
貴族たちは、シズリー家を「化け物」と揶揄する。そして、それは事実でもあった。
シズリー家の強さの理由は、「竜の血」を受け継ぐからだ。
血は少しずつ薄まっているものの、それでも強大な力だ。この「竜の血」は、強さを与える反面危険なものでもあった。
「竜の血」は、暴走する。
血の暴走を防ぐ方法は一つだけ、番を見つけ出す事だ。
ナイジェルの父は、歴代のシズリー家の中でも「竜の血」の影響を受けずに弱かった。
番を見つける事は出来ず。それでも、ナイジェルの母と結ばれた。
彼は穏やかな性格をしていて、とても優しかった。
そんな彼ですらも「血の暴走」からは逃れられなかった。
それは、じわじわと身体を蝕んでいった。
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母はそれに耐えきれず逃げた。
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しかし、彼も魔力の発現が起こった。
本来なら、王都に行き学園に通い魔力のコントロールを学ぶはずだった。
しかし、国王が気を遣い王城でそれを学ぶ事になった。
結果的に、その特別扱いのせいで第一王子セルドリスに嫌われる事になった。
まさか、嫌がらせのために王命で結婚相手を決めるなどと誰が思うのだろうか。
「困ったな」
ナイジェルは、王命の記された手紙を読んで額を押さえた。
「ギレット家は、令息と令嬢二人いたはずだ」
ナイジェルの記憶が正しければ、令息と末っ子の令嬢には婚約者がいなかったはずだ。
令息との婚約はありえないので、末っ子の令嬢と婚姻する事になりそうだ。
「そういえば、ギレット家のレオナルドは、ロシェルと一緒に研究をしていたな」
王城で弟のように可愛がっていたロシェルの事をナイジェルは思い出した。
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その家の者の人柄がいいかは別の話だが。
末っ子令嬢は、この国で一番美しいと言われているらしい。
「可哀想に」
ナイジェルは、ライザに対して同情した。
嫌がらせの王命で、勝手に「化け物」と婚姻させられる事になるのだから。
まだ、正式に婚約者は決まっていないが、ライザと婚姻する事になるだろう。
ナイジェルは、あえてギレット家から、誰と婚姻するかの返事を急かす事はしなかった。
セルドリスの嫌がらせの縁談を国王が止めてくれるのを期待していたのもあった。
しかし、王命は取り消される事はなかった。
国王も国王でナイジェルの血を引く子供が欲しかったのだ。
少しして、ギレット家から、ライザを婚約者として据えるつもりだったが、アストラに変更したと返事が来ても怒りはわかなかった。
同情する相手が、ライザからアストラへと変わっただけだった。
シズリー家が途絶えないように、子供を一人だけ申し訳ないが産んでもらい離縁しようと、ナイジェルは考えていた。
「血の暴走」で、息を引き取る日まで苦しみ続けた父を知っているナイジェルは、配偶者に期待はしていなかったし、早く解放してあげたいとすら思っていた。
誰にも迷惑をかけずにひっそりと死にたい。
ナイジェルはずっとそんなことを考えて生きてきた。
しかし、そんな価値観はアストラから届いた手紙によって全てがひっくり返った。
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