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レオナルド1

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レオナルド1


 三人称視点です

 レオナルド・ギレットは、凡庸でどうしようもない両親から生まれたことが信じられないくらいに、賢く心の優しい子供だった。
 物心がついた頃から、アストラとライザが差をつけられて育てられていることにもすぐに察して、両親に抗議するくらいのまともな神経を持ち合わせていた。

 アストラを守れるのは僕しかいない。

 そう思い常に彼女を守るように行動していたが、賢い少年は才能にも溢れていた。
 彼は生まれながらに魔力を持っていた。

 魔力を持つものは総じて王都に行き、そのコントロール方法を身につける決まりがある。
 魔力の暴走により自傷や他害の可能性があるからだ。
 レオナルドの魔力の発現は12歳になってからだ。

 両親は、レオナルドに魔力がある事を知るとどこか安堵した顔をしていた。

 アストラへの態度についてレオナルドは何度も苦言を呈すので、その度に両親は辟易としていたのだ。

 レオナルドは、不安を覚えながら王都へと向かった。

 13になり領地へと帰ると、恐れていたことがすでに起こっていた。

 ネグレクトだ。
 アストラが高熱を出したタイミングで、「わざと」ライザが体調を崩したのだ。
 当然、両親はアストラを気にかけることなどせず。
 アストラは、あと少しで死ぬところだったらしい。
 ライザの仮病の診察をした医師が、気になってアストラのところに行くと熱で弱り果てていた所を発見した。
 そのせいで、アストラの髪の毛は真っ白になったようだ。

 高熱で記憶が混濁して、レオナルドとの記憶が一部を残して全て抜け落ちていた。

 レオナルドは、慌てた。
 誰もアストラを守ってくれそうにない。
 コックには、何があってもアストラの食事は用意するように指示した。守れなかったら解雇すると脅しまでつけた。
 侍女には、変な固定概念を持っていないであろう、新人のクラリスをつけた。もちろん、アストラの専属になってもらうために手当もつけた。

 そして、自分の代わりに、アストラを守れる男を婚約者にしないといけない。

 幸い親友に、正義感が強く誠実なフレディがいたので、彼に「アストラを守ること」を条件として、破格の待遇で婚約を取り付けた。
 裏切ったら地獄を見せてやる。と、伝えるとデンプシー夫妻は震え上がっていた。

 両親は基本的にアストラの事などどうでもいいと思っていたので、格下の裕福でもない伯爵家との婚約に対して反対もしなかった。

 レオナルドは、フレディの事をよく知っていたので、安心してアストラを任せる事にした。

 そして、レオナルドは王都に戻り、自分の確固たる地位を作るために奔走をした。

 両親を早く引きずり下ろすためには、何かしらの能力を示さなくてはならない。
 幸い優秀な第二王子が側近にと声をかけてくれた。
 彼はある研究をしていて、レオナルドもそれに協力をしていた。
 そのせいで、第一王子に目をつけられるとは思いもしなかったが。

 ライザとナイジェルとの婚約が決まった時は、両親とついでに追い出す手間が省けたとレオナルドは思っていた。
「化け物」とナイジェルを揶揄する貴族はいるが、竜の血の暴走が抑えられている状態の彼はとても美しく、温厚で優しく優良物件だった。
 レオナルドはライザのことを好きでなかったが、不幸になって欲しいとは思っていなかった。というよりも、どうでもいいと思っていた。

 自分の研究の成果が、結果ライザの幸せになるのは少しモヤモヤするが、仕方ない。

 レオナルドは知らなかった。アストラがどんな扱いを受けているのか、そして、フレディは約束を反故にしてライザに入れ上げている事も。

 それを知った時には、全てが手遅れだった。

「ねえ、レオナルド」

 レオナルドのところに、いつものように第二王子がやってきた。
 彼は集中力が切れると誰彼構わず話しかけるという悪癖を持っていた。
 だから、レオナルドは不機嫌さを隠すことなく返事をした。

「何でしょうかロシェル殿下。どうでもいい雑談とか時間の無駄なのでやめてもらえませんか?」

 フルスロットルに不機嫌なレオナルドに、ロシェルは苦笑いを浮かべた。

「聞いておいた方がいいと思うよ」

「何です?」

 いつもならウザ絡みして来るロシェルだが、今回はそんな様子がないので、レオナルドは本当に用事があるのではと思い始めるようになった。
 
「君の目に入れても可愛い妹は、アストラ嬢の方だったよね」

 確認するようなロシェルに、レオナルドはまた不機嫌になった。
「僕も妹が欲しい」と、ロシェルが言い出すと思ったからだ。

「あ、殿下には勿体無い妹なので差し上げません。妹が欲しいなら皇后陛下にお願いすればよろしいかと。精力剤作りますか?両陛下に盛ればワンチャンいけますよ」

「いや、そういう話じゃなくてね」

 ロシェルは適当に返してきたレオナルドに苦笑いを浮かべる。

「何ですか」

「ナイジェル兄さんの婚約者がアストラ嬢になっているんだ」

 聞きたくなさそうなレオナルドに、ロシェルは言いにくそうにとんでもないことを言い出した。





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