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サイモンとの再会は思いがけず早かった。
王都に着いた早々に、私は彼の部下に配属された。
私は、正直に言うと彼との再会をとても楽しみにしていた。
というのも、彼の一言のおかげで私の人生観は180°変わったようなものだから、並々ならぬ憧れを抱いていたのだ。
自分よりも少し年上の男性が見るからにエリートで、「女性も働いているから王都に来るといい」などと言われて、憧れを持たない方が無理な話だ。
すでに私は顔合わせの前から、調査官のサイモンが上司であることを聞かされていた。
貴方の言葉に勇気をもらってここにきた。
すぐには即戦力にならないけれど、できることをコツコツとやっていきます。
そう言おうと思っていた。
しかし、サイモンは私を見るなり信じられないほどに冷めた目を向けてきた。
銀色の髪の毛と藍色の瞳のせいで余計に冷たく見える。
「……女か、どうせ、結婚相手を見つけにきたのだろう?文官なんてやらずに雑用でもしていればいい」
吐き捨てるような呟きに、私は悲しさよりも怒りが込み上げてきた。
「わ、私に王都でも働いている女性がいると聞いたから来たのに!」
「……」
サイモンは黙り込んだ。突然感情的になった私に呆れているのかもしれない。
「な、何よ。その言葉を信じてやってきたのに、わ、私の事を馬鹿にしているのね」
「あ、いや、その」
「優しい言葉を吐いて、そうやって人のことを馬鹿にして、都会の連中って最悪!どうせ私の事を見下しているんでしょう?」
都会云々関係なく。少なくともサイモンは私の事を馬鹿にしているのだけはわかった。
「た、確かに私は働いた事もないから、すぐに即戦力になんてならないわよ。でも、だからってやった事もない人を邪険にして追い払うなんて、前の王政と同じよ!」
言いながら涙が出て来た。
どうせ、感情的になった私を「だから女は」と言って嘲笑うのだ。
そう思っていたが、彼の反応は私の予想に反していた。
「わ、悪かった!」
サイモンはすぐさま私に頭を下げた。
「本当にすまない。君の意志や働きも見てすらいないのに、勝手に決めつけて一方的に侮辱してすまなかった」
とりあえず謝っているのではなく。心から謝っているのは伝わって来た。
「な、泣かないでくれ。すまない。僕は人の心の機微を察するのが下手で、気分を害する事を言ってしまう事があるんだ」
申し訳なさそうに謝るサイモンを見て、何となく、私の役割は彼のそういった面のフォローをする事なのだろう。と、察した。
そして、その通りだった。
彼には情けや容赦という言葉は存在しなかった。
「税を納める事ができない?土地を没収しろ」
これは、税を納める事ができなかった貴族に放った一言だ。
「話だけでも?言い訳など不要。聞く価値があるか?私の時間を無駄にする対価を払うなら聞いてやってもいいが」
と、まあ、この調子だ。
ただし、この貴族は後から不正が発覚したので、泳がせておくためにこういった言動をしたのだとわかっていたが。
問題があるとしたら、これを誰の前でも平気でやってしまうところだった。
そのせいで、彼は酷い人間だと周囲から思われていたのだ。
ただ、優秀なのは確かなので宰相の地位にすぐに登り詰めた。
~~~
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サイモンとの再会は思いがけず早かった。
王都に着いた早々に、私は彼の部下に配属された。
私は、正直に言うと彼との再会をとても楽しみにしていた。
というのも、彼の一言のおかげで私の人生観は180°変わったようなものだから、並々ならぬ憧れを抱いていたのだ。
自分よりも少し年上の男性が見るからにエリートで、「女性も働いているから王都に来るといい」などと言われて、憧れを持たない方が無理な話だ。
すでに私は顔合わせの前から、調査官のサイモンが上司であることを聞かされていた。
貴方の言葉に勇気をもらってここにきた。
すぐには即戦力にならないけれど、できることをコツコツとやっていきます。
そう言おうと思っていた。
しかし、サイモンは私を見るなり信じられないほどに冷めた目を向けてきた。
銀色の髪の毛と藍色の瞳のせいで余計に冷たく見える。
「……女か、どうせ、結婚相手を見つけにきたのだろう?文官なんてやらずに雑用でもしていればいい」
吐き捨てるような呟きに、私は悲しさよりも怒りが込み上げてきた。
「わ、私に王都でも働いている女性がいると聞いたから来たのに!」
「……」
サイモンは黙り込んだ。突然感情的になった私に呆れているのかもしれない。
「な、何よ。その言葉を信じてやってきたのに、わ、私の事を馬鹿にしているのね」
「あ、いや、その」
「優しい言葉を吐いて、そうやって人のことを馬鹿にして、都会の連中って最悪!どうせ私の事を見下しているんでしょう?」
都会云々関係なく。少なくともサイモンは私の事を馬鹿にしているのだけはわかった。
「た、確かに私は働いた事もないから、すぐに即戦力になんてならないわよ。でも、だからってやった事もない人を邪険にして追い払うなんて、前の王政と同じよ!」
言いながら涙が出て来た。
どうせ、感情的になった私を「だから女は」と言って嘲笑うのだ。
そう思っていたが、彼の反応は私の予想に反していた。
「わ、悪かった!」
サイモンはすぐさま私に頭を下げた。
「本当にすまない。君の意志や働きも見てすらいないのに、勝手に決めつけて一方的に侮辱してすまなかった」
とりあえず謝っているのではなく。心から謝っているのは伝わって来た。
「な、泣かないでくれ。すまない。僕は人の心の機微を察するのが下手で、気分を害する事を言ってしまう事があるんだ」
申し訳なさそうに謝るサイモンを見て、何となく、私の役割は彼のそういった面のフォローをする事なのだろう。と、察した。
そして、その通りだった。
彼には情けや容赦という言葉は存在しなかった。
「税を納める事ができない?土地を没収しろ」
これは、税を納める事ができなかった貴族に放った一言だ。
「話だけでも?言い訳など不要。聞く価値があるか?私の時間を無駄にする対価を払うなら聞いてやってもいいが」
と、まあ、この調子だ。
ただし、この貴族は後から不正が発覚したので、泳がせておくためにこういった言動をしたのだとわかっていたが。
問題があるとしたら、これを誰の前でも平気でやってしまうところだった。
そのせいで、彼は酷い人間だと周囲から思われていたのだ。
ただ、優秀なのは確かなので宰相の地位にすぐに登り詰めた。
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