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24 フランツ
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初めてエーデルの出会ったのは、王立学園の入園式でだった。
この国では珍しい黒い髪の毛と赤い瞳はとても人目を引いた。
綺麗な人だな。と、初めは思っていた。
ただ、「綺麗なだけの人」を僕はいくらでも見ている。
すぐに忘れるだろう。と、僕は思っていた。しかし、その考えはすぐに外れた。
エーデルはとても賢い女性だった。
テストの総合順位を見た時、僕はエーデルという少女を意識するようになった。
「万年二位」だと揶揄されても、彼女はへこたれない。腐る事もなく前を見据えて努力を続ける。
そんな姿を見て、僕はとても好感を持っていた。
「万年二位のくせに」という、誰かの揶揄する言葉を聞くたびに僕は腹が立って仕方なかった。
揶揄する奴よりもエーデルの方がはるかに成績がいいのに。
気がつけば僕はエーデルの事を好きになっていた。
けれど、彼女には婚約者候補がいた。
それでも、エーデルに近づきたくて、迷惑そうな顔をしているのが分かっていても声をかけていた。
たぶん、彼女は幼馴染のリーヌスと結婚するのだろう。
そう思っていた。しかし、ある日、僕は思わぬ幸運を掴む事になった。
リーヌスがミランダと婚約したのだ。
だから、僕はすぐにエーデルの両親に婚約の打診をした。
返事は予想通りのもので、「エーデルとの相性を見て考える」だった。
だから、僕はエーデルと少しでも仲良くなりたくて、一緒に勉強をしたりして距離を詰めていった。
エーデルはとてもいい子で、仲良くなればなるほど好きになっていくのを感じた。
それと同時に、不安になることがあった。ミランダのことだ。
昔からそうだったが、なんでも自分の思い通りにする事ができると考えている節が彼女にはある。
僕に婚約を打診して断られた時、彼女は断られると思っていなかった様子だった。
僕が拒んだせいで、ミランダは僕に執着心を持つようになった。
不名誉な噂を流したのもミランダだ。その証拠を押さえようにも巧妙でそれができなかった。
そのミランダが入園した時からエーデルを目の敵にしている。
僕はミランダがエーデルに何かしないかという不安があった。
味方は作ったが、不安が尽きなかった。
そして、その不安は的中した。
エーデルがテストでミランダを追い越した日、それが起きた。
授業を終えて、いつものように図書室に行く準備をしていた。
そこにやってきたのはミランダとステラだ。
「フランツ」
「ミランダ嬢なんの用だ」
ミランダは、余裕そうに微笑んでいる。
「あら、冷たいのね。悲しいお知らせをしにきたの」
「は?」
「エーデルさん、リーヌスさんと不貞しているわよ。フランツ、可哀想に……だけど」
「黙れ!」
みるみると血の気が引いていくような気がした。
「エーデルさんとリーヌスは図書室にいるわ。でも、もう遅いわよ」
ミランダのバカにするような笑い声を背に僕は図書室へと走り出した。
「エーデル!」
僕がエーデルの名前を叫んで図書室のドアを開けると、そこには信じられない光景が待っていた。
この国では珍しい黒い髪の毛と赤い瞳はとても人目を引いた。
綺麗な人だな。と、初めは思っていた。
ただ、「綺麗なだけの人」を僕はいくらでも見ている。
すぐに忘れるだろう。と、僕は思っていた。しかし、その考えはすぐに外れた。
エーデルはとても賢い女性だった。
テストの総合順位を見た時、僕はエーデルという少女を意識するようになった。
「万年二位」だと揶揄されても、彼女はへこたれない。腐る事もなく前を見据えて努力を続ける。
そんな姿を見て、僕はとても好感を持っていた。
「万年二位のくせに」という、誰かの揶揄する言葉を聞くたびに僕は腹が立って仕方なかった。
揶揄する奴よりもエーデルの方がはるかに成績がいいのに。
気がつけば僕はエーデルの事を好きになっていた。
けれど、彼女には婚約者候補がいた。
それでも、エーデルに近づきたくて、迷惑そうな顔をしているのが分かっていても声をかけていた。
たぶん、彼女は幼馴染のリーヌスと結婚するのだろう。
そう思っていた。しかし、ある日、僕は思わぬ幸運を掴む事になった。
リーヌスがミランダと婚約したのだ。
だから、僕はすぐにエーデルの両親に婚約の打診をした。
返事は予想通りのもので、「エーデルとの相性を見て考える」だった。
だから、僕はエーデルと少しでも仲良くなりたくて、一緒に勉強をしたりして距離を詰めていった。
エーデルはとてもいい子で、仲良くなればなるほど好きになっていくのを感じた。
それと同時に、不安になることがあった。ミランダのことだ。
昔からそうだったが、なんでも自分の思い通りにする事ができると考えている節が彼女にはある。
僕に婚約を打診して断られた時、彼女は断られると思っていなかった様子だった。
僕が拒んだせいで、ミランダは僕に執着心を持つようになった。
不名誉な噂を流したのもミランダだ。その証拠を押さえようにも巧妙でそれができなかった。
そのミランダが入園した時からエーデルを目の敵にしている。
僕はミランダがエーデルに何かしないかという不安があった。
味方は作ったが、不安が尽きなかった。
そして、その不安は的中した。
エーデルがテストでミランダを追い越した日、それが起きた。
授業を終えて、いつものように図書室に行く準備をしていた。
そこにやってきたのはミランダとステラだ。
「フランツ」
「ミランダ嬢なんの用だ」
ミランダは、余裕そうに微笑んでいる。
「あら、冷たいのね。悲しいお知らせをしにきたの」
「は?」
「エーデルさん、リーヌスさんと不貞しているわよ。フランツ、可哀想に……だけど」
「黙れ!」
みるみると血の気が引いていくような気がした。
「エーデルさんとリーヌスは図書室にいるわ。でも、もう遅いわよ」
ミランダのバカにするような笑い声を背に僕は図書室へと走り出した。
「エーデル!」
僕がエーデルの名前を叫んで図書室のドアを開けると、そこには信じられない光景が待っていた。
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