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 帰り道、リーヌスとミランダの事を考えてぼんやりとしているとフランツが心配そうに声をかけてきた。

「どうしたんだ?」

 声をかけられて躊躇いつつも、打ち明けることにした。
 フランツなら噂ではなくて、私の言うことを信じてくれると思うから。

「……あのね、ミランダさんとリーヌスが婚約解消したみたいで」

「そうらしいね」

「知っていたの?」

 フランツが知っていることに驚いた。
 しかし、彼のことだから、私に気を遣ってあえて言わなかったのだと思う。
 それどころか、耳に入らないようにしていた可能性もある。

「まあ、わざわざ言う必要もないと思ったんだ」

「そう」

「言わなくて不満?」

 そんな些細なことをなぜ不満に思うのか。

「そんな事ない。二人のことすっかり忘れてたから」

「二人の事を変に意識したから可哀想だなと思ってあえて言わなかった」

 もう、吹っ切れた事なのに、余計に気を遣わせてしまったようだ。

「そんな気がした。最近は毎日が楽しくて嫌なこともすっかり忘れてたの。フランツのおかげよ。ありがとう」

 やはり、フランツはとてもいい人だと思った。

「そ、そうかな?」

「うん」

 フランツだから、安心して不安に思っていることを相談できる。

「信じてもらえないかもしれないんだけど」

「どうした?」

「リーヌスがミランダさんに迫って婚約解消になったって噂があるみたい」

「ミランダさんにそういう事をしたということは、私との関係も疑われているみたいで」

 信じて欲しい。と、言うにはあまりにもわがままな気がしてそれ以上は言えなかった。

「……信じるよ。エーデルがそんな事してるなんて僕は思わないよ」

 フランツは、当然のように私のことを信じてくれた。
 話してよかったと思う。

「ありがとう」

「深く考えすぎないほうがいい。きっと、テストが近いから嫌がらせでそんな噂を流しているんだと思うよ」

「そうかもしれないわ」

 言われてみればその通りかもしれない。
 ミランダは、私を追い詰めたいがためにこんなことをしているのだろう。

「大丈夫、僕がついているし他にも味方がいるから」

「ありがとう」

 だからといって、それに屈したくはない。

「テスト頑張ろうね。きっといい結果が出ると思うよ」

「頑張ろう」

「実は、僕は今回はとっても自信があるんだ。ライバルはミランダだけじゃないから」

 フランツはそう言って不敵に笑う。

「そうね。お互いにライバルよね」

 気がつけば、ミランダとリーヌスのことは頭からすっぽりと抜け落ちていた。

 当然のようにテストは実力の全てを出し切ることができた。
 協力しあい全てを出し切り、順位の事なんてもうどうでも良くなっていた。

 そして、結果発表の日。

 私は、緊張の中フランツと登校した。

 張り出された結果をフランツと手を繋ぎ確認する。
 テストの総合順位の一位に名前を記されていたのは。

 ミランダではなかった。
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