上 下
18 / 27

18

しおりを挟む
18


 フランツとの関係は良好そのものだ。
 一緒に学園に行き。放課後になったら図書室に行って勉強する。
 フランツに教えてもらうと、わからないところがよくわかる。
 そして、フランツも同じように感じてくれているようだった。
 二人で勉強しながら思った事がある。

「みんなで、勉強会しない?」

 それは、二人だけで勉強するのでなく、何人かで勉強する事だった。
 フランツの教え方はとても上手で、私がそれを独占するのは勿体無い気がしたのと。
 結局、私は狭い世界にいるのだと思うようになったからだ。
 そう、フランツとステラ以外に友達がいない。

「え?」

 私の提案にフランツは明らかに戸惑っている。
 彼の性格だったら「いいね」と、言ってくれそうな気がするのに。

「わからないところとか教えて欲しい人もいると思うんだよね」

「なるほど、でも、僕たちが教えてもらうことはないと思うんだけど」

 なんだか、やりたくなさそうな雰囲気を出すフランツに違和感を覚えながらも私は説得する言葉を連ねる。

「損得勘定でやるわけじゃないし、私はいいかなって思うんだ。教える事も勉強になるし。やりたい」

「でもさ、誰かに構ってたら成績下がるかもよ。一位取るのが目標なんでしょ?」

「そうだけど、気がついたんだよね。卒業したら一位も二位もあまり関係ないんだって、いい成績だったことには変わらないし、それにこだわらないで他の人と交流したいなって思ってて」

「……そうだね。確かに。うん、いいんじゃないかな」

「何か不満でもある?」

 明らかに不満そうなフランツに、私はその理由を聞く。

「二人きりの時間が無くなるのが嫌だ」

 確かに放課後に勉強会をしたら、フランツと二人きりで過ごす時間は無くなってしまう。

「別にいいじゃない。学園がない日に出かければ」
 
「……!」

 私の提案にフランツは喜色満面で頷く。
 話し合い。今週末に一緒に出かけることになった。

 次の日、私はまず最初にステラに声をかけることにした。
 あれからかなり仲良くなれた気がする。お互いに相性で呼ぶくらいには。
 
「ステラ、あのね。これから放課後に勉強会をするつもりなんだけど、もしよかったら参加してくれるかな?」

「えっ、いいの?フランツさんとエーデルが教えてくれるなら助かる!絶対に行くから!」

 ステラは二つ返事で喜んでくれた。

「もし、お友達とかいて一緒にしてもいいって思う子いたから声かけてくれるかな?」

「うん!一緒にやりたい子多いと思う」

 ステラは、そう言ってくれるが実際はどうなるのかわからないので少しだけ不安だ。

「でもいいのかな?」

「何が?」

「だって、勉強会っていうカップルの時間を邪魔しちゃってフランツさん怒らない?」

 ステラはこういったことへの気遣いができるタイプのようだ。
 もしも、困ったことがあったら相談しよう。

「大丈夫だと思う。今度デートに行くし」

「嘘!その話聞かせてよ!」

 ステラは、私の話に食いついた。

 どこに行くかも聞かれて、来ないでね。と、念押しして、少し困りながらも答えた。

 学園生活というものは、たぶん、こういった物なのだと思う。
 勉強ばかりではなくて周囲に気を向ける事。頑張ることは頑張って、今を楽しむ。
 それが大切なのだと思う。順位なんて関係ない。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

あなたの1番になりたかった

トモ
恋愛
姉の幼馴染のサムが大好きな、ルナは、小さい頃から、いつも後を着いて行った。 姉とサムは、ルナの5歳年上。 姉のメイジェーンは相手にはしてくれなかったけど、サムはいつも優しく頭を撫でてくれた。 その手がとても心地よくて、大好きだった。 15歳になったルナは、まだサムが好き。 気持ちを伝えると気合いを入れ、いざ告白しにいくとそこには…

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

王女と婚約するからという理由で、婚約破棄されました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のミレーヌと侯爵令息のバクラは婚約関係にあった。 しかしある日、バクラは王女殿下のことが好きだという理由で、ミレーヌと婚約破棄をする。 バクラはその後、王女殿下に求婚するが精神崩壊するほど責められることになる。ミレーヌと王女殿下は仲が良く婚約破棄の情報はしっかりと伝わっていたからだ。 バクラはミレーヌの元に戻ろうとするが、彼女は王子様との婚約が決まっており──

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

死に戻り令嬢の華麗なる復讐

水無瀬流那
恋愛
「おねが、い、しにたくな、」 最後に見えたのは、それはそれは嬉しそうに笑う妹の顔だった。  そうして首を切り落とされて死んだはずの私はどうやら過去にループしてきたらしい!?  ……あぁ、このままでは愛していた婚約者と私を嵌めた妹に殺されてしまう。そんなこと、あってはなるものか。そもそも、死を回避するだけでは割に合わない。あぁ、あの二人が私に与えた苦しみを欠片でも味わわせてやりたい……っ。  復讐しなければ。私を死に追いやったあの二人に。もう二度と私の前に顔を表さなくなるような、復讐を―― ※小説家になろうでも掲載しています ※タイトル作品のほかに恋愛系の異世界もので短めのものを集めて、全部で4本分短編を掲載します

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

あなたに婚約破棄されてから、幸運なことばかりです。本当に不思議ですね。

香木あかり
恋愛
「今まではお前が一番美人だと思っていたけれど、もっと美人な女がいたんだ。だからお前はもういらない。婚約は破棄しておくから」 ヘンリー様にそう言われたのが、つい昨日のことのように思い出されます。別に思い出したくもないのですが、彼が我が家に押しかけてきたせいで思い出してしまいました。 婚約破棄されたのは半年も前ですのに、我が家に一体何の用があるのでしょうか。 「なんでお前なんかが……この数ヶ月の出来事は全て偶然なのか?どうしてお前ばかり良い目にあうんだ!」 「本当に不思議ですねー。あなたに婚約を破棄されてから、良いことばかり起きるんですの。ご存じの通り、我が領地は急激な発展を遂げ、私にも素敵な婚約話が来たのです。とてもありがたいですわ」 子爵令嬢のローラ・フィンレーは、第三王子のヘンリーに婚約を破棄されて以来、幸運なことばかり起きていた。 そして彼女が幸運になればなるほど、ヘンリーは追い詰められていくのだった。

処理中です...