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お茶会が終わり、ローディンはダイアナの部屋に呼び出された。
今日のお茶会は挨拶も含めてチネロが何を考えているのか知りたくて行われた。
異性で年齢の近いローディンよりも、母親世代のダイアナの方が話しやすいと思ったからその役目を彼女にお願いしたのだ。
「彼女は、何もしないそうよ」
「そう、ですか……」
ダイアナに教えられて、ローディンは少しだけ落胆した。
なんとなく予想はできていたけれど、やはり、彼女だけが一方的に辛い思いをするのは、ローディンには納得が出来なかった。
「家族や義理の母に迷惑をかけたくないんですって」
あの家で3年間耐えてきたチネロの気丈さを考えると、苦しみや悲しみを全て飲み込むのだろうとローディンは思った。
「そんな理由で彼女は泣き寝入りするのですか」
「彼女の気持ちもわからなくわないわよ。家格の上の人間と裁判で争うのよ?それに、義理の母は、母親のように彼女を可愛がっていたそうよ」
『そんな理由』と、ローディンは言ったけれど、弱ったメリッサの事を思い出すと、彼女のことを思って何も言わない事に決めたチネロの気持ちが少しだけわかる気がした。
彼女は母親を亡くしている。だからこそ、メリッサの事も大切に思っているのだ。
わかっている。わかっているのだけれど、ローディンの心の中と、チネロの考えは相反していて折り合いがつけられそうにない。
「だからって」
「オグト家がついているとはいえ、やりにくい事には変わりないわよ。それに、義理のお母様はかなり身体が弱っているんでしょう?今回の事が負担にならなければいいのだけれど」
チネロにとっては、家族とメリッサの存在が心の支えでもあり、弱みでもあった。
「そうね。きっと、『あえて、しない』事も強さだと思うわよ」
「僕は納得できません」
「納得したいのは貴方じゃないわ。自分の罪悪感を彼女になすりつけないで」
ダイアナに言われて、ローディンは自分の罪悪感をセインを罰することで解消させたいと深層心理で望んでいた事に気がつく。
まずは、チネロが安心して生きられる事が第一なのに、ローディンはセインを訴えた時の証言や証拠の準備ばかり考えていた。
「それは」
「私は、彼女の思う通りにさせてあげたいと思う。だけど、あちらから何もしてこない前提で、そう思ってるの」
だけど、修道院に入りたい。ひっそりと消えたい。なんてあんまりだ。
チネロには幸せになる権利がある。
ローディンはチネロを修道院に入れる事だけは阻止したかった。
「じゃあ、修道院に入れるつもりなんですか?」
「人生に選択肢はたくさんあっていいと私は思うわ。だからね、離縁届を出したら旅行にでも行ってきなさい。そのついでに、チネロさんの逢いたい人に会ってきてもいいわよ」
ダイアナの言葉はあまりにも気軽なもので、思いつくままにトランクをまとめて旅行にでも行けと言っているように思えた。
「は?」
「綺麗なものを見て、心が癒されたら身の振り方も決まるでしょうよ。結婚だけが幸せではないし」
そう言われてローディンはどこかで、チネロを結婚させようと考えていた。
チネロは結婚なんてしたくないから、修道院に入りたいと言い出したのかもしれない。
もし、そうなら、修道院に行く以外に彼女の身の振り方を考えてもらうのもいいのかもしれない。
それにしても、母親は、なかなか酷いことを言うとローディンは思った。
「お母様が言うと説得力がありますね」
ローディンとその兄の父親はクズだった。婿養子の立場で愛人を作っていたのだ。
「何か守りたいものがあると人は強くなれるのよ」
手切金の札束で父親の顔面を叩き、追い出した時のダイアナは戦の神のように力強かった。
父親は、それ以来この屋敷には来なかった。
「それは、」
「貴方に言っているのよ」
ローディンは、その言葉の意味をまだ理解できなかった。
今日のお茶会は挨拶も含めてチネロが何を考えているのか知りたくて行われた。
異性で年齢の近いローディンよりも、母親世代のダイアナの方が話しやすいと思ったからその役目を彼女にお願いしたのだ。
「彼女は、何もしないそうよ」
「そう、ですか……」
ダイアナに教えられて、ローディンは少しだけ落胆した。
なんとなく予想はできていたけれど、やはり、彼女だけが一方的に辛い思いをするのは、ローディンには納得が出来なかった。
「家族や義理の母に迷惑をかけたくないんですって」
あの家で3年間耐えてきたチネロの気丈さを考えると、苦しみや悲しみを全て飲み込むのだろうとローディンは思った。
「そんな理由で彼女は泣き寝入りするのですか」
「彼女の気持ちもわからなくわないわよ。家格の上の人間と裁判で争うのよ?それに、義理の母は、母親のように彼女を可愛がっていたそうよ」
『そんな理由』と、ローディンは言ったけれど、弱ったメリッサの事を思い出すと、彼女のことを思って何も言わない事に決めたチネロの気持ちが少しだけわかる気がした。
彼女は母親を亡くしている。だからこそ、メリッサの事も大切に思っているのだ。
わかっている。わかっているのだけれど、ローディンの心の中と、チネロの考えは相反していて折り合いがつけられそうにない。
「だからって」
「オグト家がついているとはいえ、やりにくい事には変わりないわよ。それに、義理のお母様はかなり身体が弱っているんでしょう?今回の事が負担にならなければいいのだけれど」
チネロにとっては、家族とメリッサの存在が心の支えでもあり、弱みでもあった。
「そうね。きっと、『あえて、しない』事も強さだと思うわよ」
「僕は納得できません」
「納得したいのは貴方じゃないわ。自分の罪悪感を彼女になすりつけないで」
ダイアナに言われて、ローディンは自分の罪悪感をセインを罰することで解消させたいと深層心理で望んでいた事に気がつく。
まずは、チネロが安心して生きられる事が第一なのに、ローディンはセインを訴えた時の証言や証拠の準備ばかり考えていた。
「それは」
「私は、彼女の思う通りにさせてあげたいと思う。だけど、あちらから何もしてこない前提で、そう思ってるの」
だけど、修道院に入りたい。ひっそりと消えたい。なんてあんまりだ。
チネロには幸せになる権利がある。
ローディンはチネロを修道院に入れる事だけは阻止したかった。
「じゃあ、修道院に入れるつもりなんですか?」
「人生に選択肢はたくさんあっていいと私は思うわ。だからね、離縁届を出したら旅行にでも行ってきなさい。そのついでに、チネロさんの逢いたい人に会ってきてもいいわよ」
ダイアナの言葉はあまりにも気軽なもので、思いつくままにトランクをまとめて旅行にでも行けと言っているように思えた。
「は?」
「綺麗なものを見て、心が癒されたら身の振り方も決まるでしょうよ。結婚だけが幸せではないし」
そう言われてローディンはどこかで、チネロを結婚させようと考えていた。
チネロは結婚なんてしたくないから、修道院に入りたいと言い出したのかもしれない。
もし、そうなら、修道院に行く以外に彼女の身の振り方を考えてもらうのもいいのかもしれない。
それにしても、母親は、なかなか酷いことを言うとローディンは思った。
「お母様が言うと説得力がありますね」
ローディンとその兄の父親はクズだった。婿養子の立場で愛人を作っていたのだ。
「何か守りたいものがあると人は強くなれるのよ」
手切金の札束で父親の顔面を叩き、追い出した時のダイアナは戦の神のように力強かった。
父親は、それ以来この屋敷には来なかった。
「それは、」
「貴方に言っているのよ」
ローディンは、その言葉の意味をまだ理解できなかった。
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