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第1章 魔女になりたくて
第1話 ひまわりの魔法
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その日はよく晴れた心地の良い日でした。私が誰ですかって?私はヴィリ王国のサントスに住んでいるヤフナです。
それだけじゃ誰か分からない?まあそうですね、強いていうなら私には2人のかわいい娘がいます。2人ともライトグレーよりも若干白っぽい長い髪で、少しツンツンしてて冷たい時もあるけど根はやさしいこです。ただ、そのうち1人はもうこの家には住んでいません。
まあそんな話は今は関係ない話です。昨日の昼、私はある人物と会いました。その人の名前はアルマと言います。アルマはもう何十年も前からの付き合いですから、どんな相談にも乗ってくれます。まあ私の方が立場上…なんでもないです。
「急に呼びだしてどうしたんですか?」
アルマは不機嫌そうに言いました。それもそのはず、アルマは旅の途中でここから馬車で1ヶ月はかかるであろう街にいたのですから。え?どうやって来たのかって?まあいずれ分かるんじゃないんですか?そんな焦らなくても。
「私が呼び出したのはあなたに1つ依頼をしようと思ってね」
「依頼…ですか?」
「そうよ。依頼」
「どんな依頼ですか?」
「内容は簡単よ。明日1日、正確にはこの街に帰ってくるまで。私の娘の護衛をしてほしいの。ただし"あれ"を使うまでは娘の前に現れちゃだめよ。ずっと隠れて、気配を消してついていくの」
「"あれ"ってなんですか?っていうか娘さんの護衛ならあなたがやればいいじゃないですか。師匠」
「"あれ"っていったら1つしかないでしょう?これよこれ」
私は杖を見せます。
「"あれ"ってそういうことね。でも逆を言えば"それ"を使う時には娘さんの前に出てもいいってことなの?」
「むしろ出てほしいのよ。あの子にもあの子と同じ道を、そして私みたいな生き方をしてほしいの」
「親バカってやつですか?」
「今からあなたのバッチを取りあげてもいいんですよ?」
「ごめんなさい。でも私でいいんですか?」
「この依頼の意味がわからないかしら?」
「んー…まぁとりあえずいいです。ちなみに報酬の方は…?」
「金貨2枚でどう?」
「10枚とかにした方がいいと思います」
「2枚」
「10枚」
「2枚」
「9枚」
「2枚」
「8枚」
「2枚」
「あー、もういいです。2枚で引き受けます。ただしもし何が起こっても責任は持ちませんよ?」
「娘の身が安全なら何が起こってもいいですよ」
「ほんとにあなたは親なんですか?」
「親ですよ。親だからこそです」
「そんなもんなんですかね」
ですよ。アルマ。
そうして翌日。予定通り娘は家を出て行きました。それを見て私はすぐにアルマに連絡し、アルマも後を追って行ってしまいました。
さてこれで私はもうやることはありませんね。ゆっくりと娘が帰ってくるのを待ちましょうか。
北の門を出てから一体どれだけ歩いたでしょう。太陽が空の1番高いところにあったはずなのにもう西の空が赤く染まり始めています。私も疲れて来てしまいました。このままだと今日、家に帰れなくなってしまうかもしれない。
でもまだひまわり畑には辿り着いていません。これではなんのために街の外に出たのか、分からなくなってしまいます。そのため私は歩き続けました。
そういえばさっきから道という道が無く、藪の中を歩いているんですけど、後ろの方から薮を掻き分けてついて来ている人かわいるような気がします。気のせいですかね?
その後も歩き続けて、薮を抜けた頃には日が暮れて空は青く、そして部分的に真っ黒に染まっていました。
どうやら今日は月も見えないようで、空には星以外の明かりはありません。これではろくに進めません。
ただどうやら気がつかないうちに目的地には着いていたようです。目の前には暗くてわかりにくいものの私と同じくらいの背丈のある植物がありました。ただどの花も東側を向いていて、手前からでは側面しか見えません。仕方ないので東側に回ってみることにしました。
私はふと背後に人の気配を感じました。
そしてそれとは別にひまわり畑の中の方から何か触れてはいけないような気配、というか気概を感じました。こう、背後の人とは違い、明らかな悪意のある生物がいる気がします。憎悪というかそんな感じの何かに溢れた生き物だと思います。私は怖くなって逃げ出しました。
すると背後の人も走り出しました。もしかしてグルなのではと思いました。背後の人は私をここに誘導し、ひまわり畑の中の人?と協力して私からお金になりそうなものを奪ったり、殺したりしようとしているのでは?と。
しかしその予想は外れました。私は背後で走っていたはずの人がひまわり畑の中に入って行くのを確かに見たのです。
ただ、走りながら振り返った瞬間に見えただけですが。その次の瞬間、ひまわり畑の中から何かが空中に飛び出しました。それは1人のほうきに乗った、
魔女でした。
その魔女はひまわり畑の真ん中に向かって雷を落としたり氷の魔法を出したりしています。一体何をしているのでしょうか?私はこの状況を何も理解できませんでした。
というか目の前にいる魔女がそれはそれは自分の理想の姿というか、まあ要するに将来あんな魔女になりたいと、私の中で決意してしまったのです。
空を自由に飛び回り、魔法を放つその姿は7歳の私の目を奪うには十分すぎるものでした。
しばらく魔女に見惚れていましたが、やがて魔法を打つのをやめて、地上に降りて来ました。私はあの魔女と話がしたいと思い、魔女が着地した方に向かいました。
ただそこには魔女の姿はありませんでした。
そのかわり、近くにひまわり畑を横断できる道がありました。
私は興味本位でその道に入ってみました。その道を進むとひまわり畑の真ん中に広場がありました。ベンチが2,3個あるのと、あとはひまわりのお化けみたいなのが倒れていました。
それはとても恐ろしい姿をしていました。大きな牙、3mくらいある胴体、複雑で気持ち悪い根、ところどころ赤くなった茎。きっとあの魔女はこの化け物を倒してくれたのでしょう。ただ、今の私には目の前のそれのインパクトが強すぎてそのままベンチに倒れてしまいました。なので後のことは覚えていません。
「私も、あの魔女さんみたいな人に、魔女に、なりたい…な……」
という自分の口から無意識に出た言葉を除いて。
それだけじゃ誰か分からない?まあそうですね、強いていうなら私には2人のかわいい娘がいます。2人ともライトグレーよりも若干白っぽい長い髪で、少しツンツンしてて冷たい時もあるけど根はやさしいこです。ただ、そのうち1人はもうこの家には住んでいません。
まあそんな話は今は関係ない話です。昨日の昼、私はある人物と会いました。その人の名前はアルマと言います。アルマはもう何十年も前からの付き合いですから、どんな相談にも乗ってくれます。まあ私の方が立場上…なんでもないです。
「急に呼びだしてどうしたんですか?」
アルマは不機嫌そうに言いました。それもそのはず、アルマは旅の途中でここから馬車で1ヶ月はかかるであろう街にいたのですから。え?どうやって来たのかって?まあいずれ分かるんじゃないんですか?そんな焦らなくても。
「私が呼び出したのはあなたに1つ依頼をしようと思ってね」
「依頼…ですか?」
「そうよ。依頼」
「どんな依頼ですか?」
「内容は簡単よ。明日1日、正確にはこの街に帰ってくるまで。私の娘の護衛をしてほしいの。ただし"あれ"を使うまでは娘の前に現れちゃだめよ。ずっと隠れて、気配を消してついていくの」
「"あれ"ってなんですか?っていうか娘さんの護衛ならあなたがやればいいじゃないですか。師匠」
「"あれ"っていったら1つしかないでしょう?これよこれ」
私は杖を見せます。
「"あれ"ってそういうことね。でも逆を言えば"それ"を使う時には娘さんの前に出てもいいってことなの?」
「むしろ出てほしいのよ。あの子にもあの子と同じ道を、そして私みたいな生き方をしてほしいの」
「親バカってやつですか?」
「今からあなたのバッチを取りあげてもいいんですよ?」
「ごめんなさい。でも私でいいんですか?」
「この依頼の意味がわからないかしら?」
「んー…まぁとりあえずいいです。ちなみに報酬の方は…?」
「金貨2枚でどう?」
「10枚とかにした方がいいと思います」
「2枚」
「10枚」
「2枚」
「9枚」
「2枚」
「8枚」
「2枚」
「あー、もういいです。2枚で引き受けます。ただしもし何が起こっても責任は持ちませんよ?」
「娘の身が安全なら何が起こってもいいですよ」
「ほんとにあなたは親なんですか?」
「親ですよ。親だからこそです」
「そんなもんなんですかね」
ですよ。アルマ。
そうして翌日。予定通り娘は家を出て行きました。それを見て私はすぐにアルマに連絡し、アルマも後を追って行ってしまいました。
さてこれで私はもうやることはありませんね。ゆっくりと娘が帰ってくるのを待ちましょうか。
北の門を出てから一体どれだけ歩いたでしょう。太陽が空の1番高いところにあったはずなのにもう西の空が赤く染まり始めています。私も疲れて来てしまいました。このままだと今日、家に帰れなくなってしまうかもしれない。
でもまだひまわり畑には辿り着いていません。これではなんのために街の外に出たのか、分からなくなってしまいます。そのため私は歩き続けました。
そういえばさっきから道という道が無く、藪の中を歩いているんですけど、後ろの方から薮を掻き分けてついて来ている人かわいるような気がします。気のせいですかね?
その後も歩き続けて、薮を抜けた頃には日が暮れて空は青く、そして部分的に真っ黒に染まっていました。
どうやら今日は月も見えないようで、空には星以外の明かりはありません。これではろくに進めません。
ただどうやら気がつかないうちに目的地には着いていたようです。目の前には暗くてわかりにくいものの私と同じくらいの背丈のある植物がありました。ただどの花も東側を向いていて、手前からでは側面しか見えません。仕方ないので東側に回ってみることにしました。
私はふと背後に人の気配を感じました。
そしてそれとは別にひまわり畑の中の方から何か触れてはいけないような気配、というか気概を感じました。こう、背後の人とは違い、明らかな悪意のある生物がいる気がします。憎悪というかそんな感じの何かに溢れた生き物だと思います。私は怖くなって逃げ出しました。
すると背後の人も走り出しました。もしかしてグルなのではと思いました。背後の人は私をここに誘導し、ひまわり畑の中の人?と協力して私からお金になりそうなものを奪ったり、殺したりしようとしているのでは?と。
しかしその予想は外れました。私は背後で走っていたはずの人がひまわり畑の中に入って行くのを確かに見たのです。
ただ、走りながら振り返った瞬間に見えただけですが。その次の瞬間、ひまわり畑の中から何かが空中に飛び出しました。それは1人のほうきに乗った、
魔女でした。
その魔女はひまわり畑の真ん中に向かって雷を落としたり氷の魔法を出したりしています。一体何をしているのでしょうか?私はこの状況を何も理解できませんでした。
というか目の前にいる魔女がそれはそれは自分の理想の姿というか、まあ要するに将来あんな魔女になりたいと、私の中で決意してしまったのです。
空を自由に飛び回り、魔法を放つその姿は7歳の私の目を奪うには十分すぎるものでした。
しばらく魔女に見惚れていましたが、やがて魔法を打つのをやめて、地上に降りて来ました。私はあの魔女と話がしたいと思い、魔女が着地した方に向かいました。
ただそこには魔女の姿はありませんでした。
そのかわり、近くにひまわり畑を横断できる道がありました。
私は興味本位でその道に入ってみました。その道を進むとひまわり畑の真ん中に広場がありました。ベンチが2,3個あるのと、あとはひまわりのお化けみたいなのが倒れていました。
それはとても恐ろしい姿をしていました。大きな牙、3mくらいある胴体、複雑で気持ち悪い根、ところどころ赤くなった茎。きっとあの魔女はこの化け物を倒してくれたのでしょう。ただ、今の私には目の前のそれのインパクトが強すぎてそのままベンチに倒れてしまいました。なので後のことは覚えていません。
「私も、あの魔女さんみたいな人に、魔女に、なりたい…な……」
という自分の口から無意識に出た言葉を除いて。
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