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第15章 遥か彼方、わすれもの

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「…ただし。俺はもう、ここに戻ってくる気はない。もう二度とだ」

 リュウが静かに、だけど熱を帯びた声で念を押す。
 今度こそもう二度と。この世界に戻ってこられる可能性のないことを。

 旧校舎のプールはもうすぐ取り壊される。夏休みにはいってすぐ。おそらく明日にはもう――
 リュウの言っていた話が本当なら、この世界にはトリティアの開けたという“穴”が、まだいくつかは残っているのかもしれない。
 だけどあたしが行き来していたのはあの場所だけ。おそらく何か、条件があるのだ。これまでのトリティアが居た時のように。
 もし本当に、あと、一度だけ。
 シェルスフィアに行けたとして――

 今度こそ。選ばなければいけない。
 この世界を、この場所を、家族や友達や大事な人たちを。
 自らの意思と覚悟を持って、あたしに捨てられるのか。リュウのように。

 ――お母さんが、死んだ時。
 もう二度と会えないということは、死んでしまうのと同じことだと、遥か昔に思っている自分が居た。
 遠い遠い場所にいる大事なひと。会えない時間が長い時をかけて、ゆっくりと自分の内側なかからその存在を、殺すのだろう。

 会えなくても、どこかで生きていてくれさえすれば、それで良いだなんて。きみが幸せで居てくれれば良いなんて、そんな大人にはなれない。
 傍に居たかった。近くに居たかった。死ぬならせめてあたしの隣りで、最期にはその瞳に、あたしを映してほしい。
 それがどんなに身勝手で傲慢な望みか、解っていても。それを願わずには居られないから。だから人はきっと、傍に居る理由を必死に探して、見つけて。そうして共に生きようとするんだ。それが、きっと――
 
 きみを思い出にできたとして。それでも最期にはきみを思い出して、あたしも…同じ場所に向かうのだろうか。
 ――でも。あたし達は。あたし達が向かう先は、きっと。
 同じじゃない。

 世界は、越えられない。
 あたし達は同じ世界では、生きられない。

「……!」

 それでも。
 あたしは……!


「…行かないで」


 そう、呟いたのは。
 ずっと隣りに居た、七瀬だった。

「…七瀬…」

 ずっと、聞いていたのか。
 途中からすっかり失念していた。すぐ近くに居たことを。
 周りに居た他のみんなは、あたし達を気にしながらも既に自分たちの会話に夢中になっている中。七瀬は、ずっと。

「また、どこか遠くに行く気…?」

 そう訊いた七瀬の声は、少しだけ震えていた。その瞳も戸惑いと不安で揺れている。そこに僅かに見える、強い意志も。
 七瀬にはあたしが忽然と姿を消したところを見られている。
 すべてを理解はできなくても、おそらくぼんやりと。七瀬には状況が見えているのかもしれない。
 七瀬の目の前で消えてから、あたしがどこか遠い場所に居たことを。それがおそらくそう簡単に、行ける場所でも帰ってこれる場所でもないことを。

 ぎゅっと。固く握っていたあたしの拳を七瀬の大きな手のひらが覆う。引き留めるかのように、逃がさないように。
 そんなあたし達を横目で見てリュウは、メガネのフレームを押し上げる。

「…お前の知らない、ゲームの世界の話だ。マオ、とにかくいったんこれで、借りは返した。後のことは、すべて片づけてからだ」

 取り繕うように誤魔化して、リュウは席を立ち教室の扉に向かう。それを視線だけで見送りながら、あたしは七瀬の手を振り払えずに居た。

 チャイムが鳴る。最後のホームルームが始まる合図。がたがたと自分の席に戻る生徒たち。だけど七瀬は動かない。あたしもその目から、逸らせなかった。

「…七瀬は…あたしを、殺せる…?」

 ようやく絞り出したあたしの言葉に七瀬がその目を丸くして、それからあたしの意図を探るような視線を向ける。
 あたしは多分、少しだけ笑っていて。
 そしてもう既にあたしの中で、答えは出ていた。心は既に、決まっていた。

「…もう二度と会えないくらい、遠くに行くのと…死んでしまうことって。同じことだと、思ってた。お母さんが死んだ時。あたしはそれを上手く受け入れられなくて、それで勝手にお母さんの持ち物を棺の中から奪って、縋って…お母さんはただ、どこか遠い場所に居るだけで…いつか、また。会えるんだと、そう思おうとしていた。幼かった…まだ5歳の子どもだった」

 突然だった。失うのが。
 それでもお母さんは、生きていた時でさえ、たまにしか会えなくて、その存在はあまりに遠くて。まだ5歳だったあたしは、実感すら湧かなかった。だけどただ漠然と、あとどれくらいしたら、会えるんだろうと。その答えばかりを探していた。
 だから、あたしは。勝手に自らの世界に閉じ込めた。お母さんの少ない記憶と虚像。幼かったあたしの、愚かで脆い小さな箱庭の世界。

「あたしは、お母さんを殺せなくて。死んだことを受け容れられなくて。だけど周りはどんどん、変わっていく。進んでいく。あたしひとりを置いて。あたしは自分で自分を守る為に、周りみんなを悪者にして、そうして虚勢で生きてきたの。弱くて、ずるくて…あたし、自分が。嫌いだった。大嫌いだった」

 ぐ、っと。思わず拳に力が篭る。そんなあたしの卑怯に握った拳を、七瀬の手は包んでくれる。
 振り上げた拳は必ず誰かを傷つける。他人か自分か、それだけの違いだ。だけど行き場のない思いが拳を握らせる。それすら奪われたらきっと、人は生きてはいけないのかもしれない。
 傷つけていることくらい、解っていた。だけどひとりではどうすることもできなかった。

 あの世界が教えてくれた。
 結局あたしは。自分が一番大事だった。それだけの人間だった。
 ――彼に出会うまでは。
 
「…“さよなら”を、言わなくちゃダメだったの。ちゃんとお別れをしなくちゃ、あたしはきっとまた、前に進めなくなる。だから行かせて、七瀬」

 すべてを持っていくことはできない。
 選んだ先に未来がある。
 未来の為の、選択だ。

「…俺は…待っていても良い…?」

 まるで迷子の子どものように。ひどく細い声で、七瀬が縋るようにそれを訊いた。
 あたしはただ、微笑みだけを返す。
 確かなことは何も言えない。果たせない約束は残酷な楔になるだけ。

 さんざん心配ばかりかけて、都合よく七瀬の気持ちを利用しとうよしているあたしのことなんて、見放してくれて良い。そう思うのに。
 それができないからこんなにも苦しいことくらい分かっていた。

「だめ。七瀬は…待たないで。七瀬はきっとあたしを殺せない。だけどあたしは、七瀬の傍には居られない」

 初めて人を、心から拒絶した。この手を振り払う為に。自分の意思を通す為に。
 真っ直ぐな七瀬のその瞳が陰る。哀しみで光りが失われていくように。
 ぐ、っと一度だけあたしの拳を握っていた手に力が篭り、それからゆっくりと、抜けていくのがわかった。

 静かにあたしは席を立つ。俯く七瀬を置いて。
 僅かに距離をとった場所に居た加南たちが、会話が終わったのかと視線を向けるも、あたしと七瀬の間に流れる異様な空気を素早く感じ取り、「真魚」と声をかけたのは早帆だった。
 いつも弾けるように笑う早帆の、珍しいくらいに真剣な顔。早帆もうっすらと何かを感じていたのかもしれない。まっすぐな視線があたしに突き刺さる。

「…よく、分かんなけど…夏休み、うちらと遊べるんだよね?」

 少しだけ慎重に、言葉を選ぶ素振りが珍しい。ちらりと早帆その視線が七瀬を見やり、すぐにあたしに戻ってくる。
 あたしは笑って答えた。ちゃんときっと、笑えていた。
 最後にみんなの顔をしっかりと目に焼き付ける。俯く七瀬の顔は、さっきので充分。胸が痛むくらいで良い。それが自分が選んだ道。

「――うん、忘れものを取ってくるだけ。今度はあたしが、先に行って待ってるから」

 先生が来るより先に教室を出る。その長い廊下の先にリュウが居た。あたしの姿を確認して、見計らうように歩き出す。あたしも早足でその背中を追った。
 拳の中の、貴石いしが熱い。あたしの熱か。それとも呼応する誰かの心か。
 迷いはない。前だけを見ていつの間にか走り出していた。


 自分より大切な人ができた。
 だからあたしは行く。その人のもとへ。
 そしてちゃんとお別れをする。今度こそ。

 ――生きているから、それができる。
 それが今のあたしの、心からの望み。

 きっとあたしはかつての“伝承の少女”のように、国や世界を救うような、救世主になんかはなれないだろう。
 あたしはただ。
 ただひとりと、そのひとの生きる場所を護りたい。
 自分よりも誰よりも世界よりも。大切で、大事で、何よりも守りたくて、そして幸せになってほしくて。
 ただ生きて、倖せになってくれればそれで良いと思えるひと。そこにあたしが居なくても良い。それであなたを泣かせても。
 心は、置いていく。あなたの傍に。




 ――シアが、好きだ。



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