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第2章 眠れない騎士アランの憂鬱

9.はじめての人_①

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 いつの間にかワンピースの裾から、アランの手の平がフェリーチェの太腿を撫でていた。
 ゆっくりと肌を滑り、目的地へと迷いなく距離を詰めていく。
 指先はどこか冷たいのに、触れられた部分は熱を帯びていくから不思議だ。呼吸がだんだん上がっていく。上手なキスの仕方も知らない。

 優しく触れているようでいて、その手の動きは遠慮ない。
 そのひとつひとつにフェリーチェが内心戸惑っている内に、恐怖とは相対する小さな快楽が燻っていくようだった。まだそれを快楽とも知らずに。

 口づけの度に体を揺らし強張らせるフェリーチェにアランはおかしそうに笑う。だけどその手が緩むことはなかった。

 胸元のリボンが解かれ、ボタンが外され、肌を晒されていくのに、為すがままに身を委ねるしかできない。
 まぐろ宣言をしておいて良かったと内心思う。この状態で自分から動くことなど到底むりだ。通じなかったけど、まぐろ。
 
 一瞬だけ意識が削がれた時だった。太腿を撫でてていた手が、フェリーチェの下腹部に触れる。
 びくりと一際大きく体が跳ねて、無意識に悲鳴が漏れそうになるのを咄嗟に自分の手の甲を押し付けて堪える。

 アランが一瞬だけ手を止めた。フェリーチェの様子を伺うように、小さく顔を覗き込む。

「……やめる?」
「い、いえ……!」

 ふるふると勢いよく首を振って応える。
 ここまで来たらやめられない。

 フェリーチェの返事を受けて、アランの指が侵攻を再開した。

 はじめは、下着の上から。薄い布地越しに触れられて、なのにそのつたない感触に、余計に煽られる気がした。
 何かを確かめるような、探るような手つき。
 そっと隙間から入り込んだ指先がフェリーチェのぬかるみに触れる。
 体はしっかりと反応していることにアランは薄く笑い、フェリーチェは泣き出したい思いに駆られた。
 心と体の感覚がまるでちぐはぐで、急に心許なくなる。
 
 大丈夫、フェリーチェは、この体は、経験済みのはず。
 最初の痛みもないし、慣れているのなら順応もはやいはず。
 その先の快楽など記憶になく知らずとも、どうにでもなる。あとは流されてしまえばいい。

 そう思っていたのに。
 アランの指が挿入れられた、その瞬間。

っ、」

 今度は堪える暇もなかった。
 痛い。きつい。ちょっと待ってほしい。
 押し込まれる違和感と異物感に、体が必死に抵抗しているのが分かる。

「……きっつ……濡れてはいるんだけどな」

 ほんの少しだけ、アランが動かした。むりやり捻じ込まれる感覚にフェリーチェは思い切り眉根を寄せて、咄嗟にその腕を掴んだ。

「ま、待って、アラン、さま……!」
「もう少し濡らそうか、舐めていい?」
「な、……?」

 舐める? ドコを?

「は……! 初めてでそれは無理……!!!!!!」

 思わず本音が盛大に漏れた。
 漫画や小説で得た知識としては知っていても、実際に行う身としてそれは流石にハードルが高過ぎる。
 前世でもそれらはすべて次元の向こうでの出来事でしかなく、自分にとっては縁遠いものだと思っていたし、実際死ぬまでその通りだった。
 いくらその次元を越えたとはいえ、どうしたって羞恥の方が勝ってしまう。

 フェリーチェの叫びに流石にアランが動きを止めて顔を上げた。

「……え、うそでしょ、はじめて……?」

 これまではあくまで気持ち的な問題で、そうだった。初めてだった。なにもかも。
 ――だけど。

 流石にこの違和感は拭いようがない。
 明らかに不慣れな感覚。痛みと違和感。

 おそらく、初めて。
 “フェリーチェ”は、処女だ。

「わ、わかんないけど、痛い、いったい、無理……!」
「えぇ~~……オレのがムリなんですけど、ここまできて止めんの」

 それはこっちの台詞だ。
 完っ全に想定外だった。


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