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第二章

十話 ガーディアンフォース

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ハクビシンを暴走させたダークコアー。
だがハクビシンは自身に打ち克ちマーガレットに助けを求めた。
それに納得できぬコアーはさらにハクビシンを追い込み、凄まじい数の怨念兵にてパレス陣営を絶望させた。

土壇場で魔力が消失してしまった打つ手無しのマーガレット。
そこへ大陸を統一したミミズクが怨念兵を圧倒する援軍を連れて登場。さらにゲート、もう一人のガーディアン、バイオが現れる。


「バイオさん…そんな……」


「マーガレット、思うことはあるでしょうが、今は目の前の猫を鎮めることが最優先。さあ手を」


「させぬっ!させぬぞっ!!!」


コアーは魔力を全開にしてバイオとマーガレットの接触を阻止する。
放心状態のマーガレットを氷結魔法で拘束。
足を凍らされて身動きができない彼女。
魔力が消失しているため拘束を解くことができない。


「うっ……この程度の魔力で……」


「これでマーガレットは封じた、次はきさまだ」


「うふふ」


光剣を召喚しバイオに襲いかかるコアー。


「魔人ダークコアーよ、相手になろう」


「なっ」


バイオはマーガレットが放つ暗黒を呼び出しコアーの光剣を分解。


「その魔力、きさま…何者だ…」


「何者? 私はゲートのガーディアンよ」


「ちっ…」


「ガルシア隊長、兵士をすぐに後退させなさい」


バイオの突如の命令に戸惑いつつも対応するガルシア。


「はっ、直ちに」


そして遠方のミミズクに部隊後退の合図をする。
ミミズクはすぐさま号令の笛を吹き一軍を操作、統率のとれたその動きにて集団は速やかに後退。


「き、きさま……圧倒な戦闘力に一軍を指揮する優れた能力……」


「魔人ダークコアー、その動きを封じます」


杖を召喚したバイオはその杖でコアーの胸部を貫く。


「ふぐぉぉっ」


バチバチと魔力がスパークし、そのショックにてコアーは意識を失った。


「これで……魔人はしばらく動けない…」


バイオは片膝をつき自分の胸部を抑える。


「バイオさん、まだ身体が……」


その様子を心配するマーガレット。
ハクビシンも痛々しい眼差しを彼女へとむける。


「時間がないわマーガレット、手を貸してちょうだい。この猫を解放しなければゲートの未来はない…」


「わ、分かったわ、手を…」


必死に手を伸ばしバイオの手を掴もうとするマーガレット。


「うふふ、あなたのことを私は信じているわ」


「えっ……バイオさん?」


マーガレットがバイオの手に触れる。
するとバイオは笑顔をみせ、身体が音もなくゆっくりと崩れていった。


「そ、そんな…そんな……」


その瞬間マーガレットは全身にみなぎる力を感じる。
魔力が戻り身体は優しい光りで包まれた。



マーガレット、私たちの力でゲートを守りましょう。
さあ、猫を解放しましょう。



「バイオさん…」



マーガレットは足を封じている凍りを破壊しハクビシンの前に立つ。


「マーガレット、そしてバイオ殿…」


ハクビシンはそっと腕を上げる。
その禍々しい腕輪をマーガレットは確認。
鋭い眼光をむける。


「……あれは…ガーディアンフォース……」


ホープが呟く。


「ガーディアンフォース?」


護衛をしているアローが話す。


「ええ、ガーディアンフォースは究極の合体魔法……」


「先生?」


「あの二人……レフトーラ君たちと同じく、世界を救った……」


マーガレットからまばゆい閃光が放たれ周囲を照らす。
怨念兵はその光りにて昇天しハクビシンの魔吸輪はボロボロと崩れ、灰のように消えていった。
魔力を失ったハクビシンは身体が縮小し一般的なそれへと戻った。


腕輪が消滅したことでこの戦いは終わった。


「終わった…のか…」


ガルシアは周囲を確認する。
ホープはバイオへの想いがこみ上げてその場を離れる。


「…」


「先生…」


「ちょっと一人にして…まさかあの子が…ガーディアンフォースを発動させるとは……」


「……あまり遠くには行かぬよう…お願い致します…」


ただならぬホープの様子にアローは状況を察した。
昇天した怨念がキラキラと輝きその様は実に神々しい。


「…バイオさん……そんな…どうして…」


その場に泣き崩れるマーガレット。
感情のままに泣き叫ぶ彼女。
そんな彼女の側にハクビシンが寄り添う。


「あら、ずいぶんとまあ……」


魔力が消失したことで本来の姿に戻ったハクビシン。
言語も失い、マーガレットへすり寄ることで意思表示をしている。


「うふふ、ごめんなさいね、私がしっかりしないとね」


ハクビシンを抱えてガルシアの元へ向かうマーガレット。
多くの兵士がマーガレットにひれ伏し、戦闘を終結させた彼女を讃えた。
ミミズクが率いた大集団は町に向かい戦いの後始末を引き受けてくれた。


「終わったのですね……マーガレット様」


「はい、ガルシア隊長」


「皆、マーガレット様に敬礼」


兵士は一斉に立ち上がりマーガレットへ敬礼した。


「うふふ、防衛できたのは皆さんのおかげです」


凛々しく気丈に振る舞うマーガレットだが、バイオを失ったショックは大きい。


「ふっふっふっ、絶望は…本当の絶望は…これだよ…」


その時瓦礫から凄まじい魔力を放つ物体が現れる。
それは体内に超圧縮された魔力が今にも破裂しそうな魔人ダークコアーだった。


「て、てめえっ、まだ生きていたかっ」


ガルシアを筆頭に兵士は一斉に武器を取りコアーを囲む。


「待って、攻撃してはダメよ…」


マーガレットが叫ぶ。


「手に入らぬならば…壊すのみ、きさまらの絶望を楽しみ、我とと共に散るがいい」


コアーを刺激すると大爆発し、ゲート含め周辺地域は焼け野原と化すだろう。


「こ、このやろ……」


ガルシアは拳を握り自分の無力を嘆く。
ガルシアだけでない、皆、目の前で爆弾となっているコアーをどうすることもできない。


「マーガレットガーデン、さあどうする? 我はきさまの苦悩が極上の喜びだ」


「うふふ」


マーガレットは表情を変えずハクビシンを兵士に預け、コアーに右手をむける。


「……お前にはできんよ」


「…」


対峙するマーガレットとダークコアー。
両者とも表情はなく、異様な空気が漂う。


「ふふふ、全てを終わらせてくれようぞ」


コアーの身体から不気味な音が響き周囲に緊張が走る。
その時、あろうことかマーガレットは膨張するコアーの顔面を掴んだ。


「があああ、き、き、きさま正気か…」


「マーガレット様っ」


周囲はマーガレットの行動に驚き、それを止めようとする。


「私の全魔力でお前の爆破を抑え込む」


「くっくっくっ、大陸が消し飛ぶほどの爆破をきさまが抑え込む?」


「…」


「きさまの力の根元は攻であろう?力には攻と防があり両方持ち合わせるのは不可能。復興機関には双方持つ化け物がいると聞いたが…今はその人物は不在とみた」


「だまれっ!!!」


怒り狂い、感情をむき出しにするマーガレット。
力が強まりコアーの顔面が潰れ出す。
額から魔力がにじみ彼女の手はダメージを受けてしまう。


「その手を離すがいい、爆破が早まりきさまの絶望を楽しむ間もなく終わってしまうぞ?」


「…」


手を離し落胆するマーガレット。
どうすることもできない。


「きさまは我を倒した、さらには無限召喚兵を封じ、そしてハクビシンをも解放。完全に我は敗北した。だがな……」


魔力がより強化されるコアー。


「敗北し勝利する。きさまが言った悪魔の矛盾、悪魔を滅ぼしたいが、尊敬する悪魔も存在する。それを今、返そう」


「…」


マーガレットは膝をつき脱力。


「さあ、全てが終わる、ふはははっ」


ダークコアーが炸裂し大爆発の瞬間、マーガレットは突如魔法防壁に包まれる。


「こ、これは」


ダークコアーの目の前に魔封剣と魔造鏡が飛来、地面に突き刺さる、
そして飛んできた方向には浮遊する男女がいた。


「…救世主…」


「うがあああぁあっ」


自身が絶望し大爆発するダークコアー。
だがその爆破は剣と盾によって容易に抑え込まれゲートは救われた。


「マーガレットさん、遅れてごめんなさいね」


「もう大丈夫ですよ」


「間に合って良かった。本当に…」


二人の姿を見たマーガレットは安堵、そして気を失った。



ネオゲート襲撃はマーガレットらの活躍により被害は最小限であった。
暴走したダークコアーは大陸の英雄らによって封じられゲートの防衛は成功。
影に潜む邪悪は討たれた。

時を同じく、別行動していたアレサらは人が突然昏睡する核心に迫っていた。


次回へ続く。 
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