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第二章

七話 一騎討ち

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「…あなたから感じるもの……似ている…」


マーガレットは再び剣を手に取る。
ハクビシンは黒帽子をゆっくりと脱ぎ素顔をみせる。


「私はハクビシン、悪魔ロードより受けし腕輪を持つ存在なり」


「…やはり…悪魔の……」


ハクビシンの顔は動物のそれで、生物を変異させるほど腕輪の効力が凄まじいというのがよく分かる。


「……魔吸輪…」


ホープが呟く。


「ホープ様?」


アローがホープの顔を見る。


「あれは人には扱えない狂気の腕輪よ」


「狂気の腕輪ですか…」


「そうよ、悪魔でさえ持つのを拒む、扱いが難しい腕輪」


「そ、そんなものが、何故、ここに…」


「知らないわよ、ロードに何かあったのか、あの魔人ダークコアーが…」


「腕輪の効果は…どんな感じなのですか?」


ガルシアが問う。


「無限魔力」


「えっ…」


「よくは知らないけど、持つ者は無限の魔力を手に入れるってロードが言ってたような……」


「レフトの剣や、セフィアの盾、オメガの箱、そんで腕輪か…」


ため息をつきながらガルシアが嘆く。


「解魔刀という刀もあるのだけれど…扱いにくさは腕輪が最強でしょう……」


ハクビシンがその素顔を見せたことで暴徒らは一斉に逃亡。周囲には瘴気が漂い、無抵抗の者は気分を害してしまう。
話し込むホープらはそれに気づき、具合が悪い者の救助を始める。


「うふふ」


「ほう、この状況で笑うとは…」


「あなたはそこでダウンしている悪魔だかなんだかわからない存在とは違う。解放してみせますわ」


「……」


「ハクビシンさん、一騎討ちお受けしますわ」


剣を振り華麗に構えるマーガレット。
その剣術に目が真剣になるハクビシン。


「ふ、無法地帯だったヘルゲートが安定した理由、今分かった。復興機関レフトーラたちの尽力もあっただろうが…マーガレットガーデン、あなたの存在も大きい…」


「うふふ、私は私のすべきことを全うしているだけですわ」


「…その言葉以上の説得力は…ない」


お互い剣を握る手に力が入る。
一瞬の隙に必殺の攻撃を叩き込む。
そう、この一騎討ちには魔力だのは一切不要。
相手よりも先に一撃を入れる…それだけだ。


「見てられないわ」


ホープは二人から眼をそらす。
ジリジリと距離をつめるハクビシン。
マーガレットは呼吸を整え、眼はハクビシンの動きをとらえている。


「……お互いに……二発目はない…そうでしょうか…」


「ふふ、それはあなた、ハクビシンさん次第ですわ」


「マーガレットガーデン、あなたと戦えて光栄です」


「ふふ、どうやらあなたはこの侵略とは……」


その時、ハクビシンは足元の石ころにつまずき体勢を崩す。
その隙にマーガレットは動いた。
だが、それはハクビシンの作戦であった。


「その集中力があなたの弱点なのです」


体勢を崩したハクビシン。
先ほどのマーガレットがコアーにやったような、崩れた体勢をそのまま敵に倒れ込むという荒業を再現してみせた。
そしてコンパクトながらも鋭い爪を出しマーガレットを攻撃。


「ふふ」


「な、なにをっ」


爪はマーガレットの急所をとらえた。
だが彼女は左手でハクビシンの腕を掴み身動きを封じた。


「この勝負、相討ちとしましょう、うふふ」


「がはあぁぁっ」


ハクビシンの爪はマーガレットの急所をとらえている。
彼女は右手に持った剣でハクビシンの胸部を貫いた。
前代未聞の両者が致命傷という壮絶な一騎討ち。
その光景に周囲は沈黙。
お互いに深手を負っているが両者は倒れない。


「……」


ホープも目の前の光景に言葉を失い茫然としている。


「……私は…倒れるわけには……」


吐血するハクビシン。
どうやらダメージはこちらのほうが大きいようだ。


「ハクビシンさん、終わったんですよ、あなたが腕輪を付ける必要はもうありません。さあ」


ゆっくりと語るように話すマーガレット。
その言葉にハクビシンは爪をおさめ膝をつく。
彼女も剣を捨て自分の傷口を手でおさえる。


「私の……負けです……」


ハクビシンはそう囁くと静かに倒れた。


「勝った…?」


アローたちは口々に話す。


「ハクビシンさんに回復を……うふふ」


マーガレットは皆に伝える。


「……ちょっ、ちょっと、この薬を二人に…」


ホープはアローに小瓶を二本渡す。


「…マーガレット様……」


神々しくもみえるマーガレットに誰もが言葉を失っていた。
コアーに続きハクビシンも倒れた。
これにより戦意が完全に喪失した暴徒らは一斉に投降。
圧倒的な戦力をひっくり返し暴走徒らの襲撃からネオゲートを防衛したマーガレットたち。


「アローさん、まずはハクビシンさんに……」


ハクビシンを介抱するマーガレットだが、倒れたダークコアーから邪悪な力を感じる。


「マーガレット様?」


「みんな、パレスへ避難をっ急いで!」


突然大声を発するマーガレット。


「見事……見事だが……ここからが本番だ。ヘルゲートの者たちに絶望を」


ダークコアーはゆっくりと起き上がりハクビシンの持つ腕輪に魔力を放つ。


「きさまっ」


マーガレットは剣を取りコアーを攻撃する。
だが剣は折れ、彼女はコアーにより四肢を打たれ身動きを封じられてしまった。


「くっ……」


「マーガレットガーデンよ、ハクビシンの真の姿をみるがいい」


「ハクビシンさんは巻き込まれただけ、悪魔の勝手な都合で利用するのはやめなさい」


「くっくっくっ、腕輪を持つことは運命だ。さあ目覚めよハクビシン、そして真の力を解き放て」


「うがああ」


ハクビシンは立ち上がり魔力を全開にして解放する。
その光景はレフトやセフィアに匹敵する絶大魔力。


「…ゲートは…終わった…そして……世界も…」


立ち尽くすホープ。


「ホープ様、パレスへ避難するんです、早くっ」


「逃げても無駄よ、あの動物は無数の怨念を召喚しているわ、さっきの包囲網以上の敵が襲ってくるわよ」


「な、なんと……」


ハクビシンはロードのように目が赤く血走り、毛は逆立ち、温厚だった風貌は狂気へと変貌。
そして断末魔のような雄叫びをあげると大地から無数の邪悪な兵士が出現する。


「さあ絶望が始まる、よくみるがいいぞ」


「うぐっ……」


マーガレットはネオゲートの防衛に成功した。
しかし追いつめられたダークコアーはハクビシンを暴走させゲートを再び襲撃する。
腕輪の魔力が解放され理性を失ったハクビシンは多数の怨念を召喚。
とてつもない数の怨念兵がパレスを襲う。


四肢の急所を打たれて動きを封じられてしまったマーガレット。
圧倒的な戦力差に敗北を悟ったホープ。
しかしアローやガルシアは武器を取り怨念兵へ立ち向かう。
ハクビシンは表情こそ無いが眼からは涙が流れていた。


次回へ続く。
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