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第二章
一話 奇病
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「ねえ」
なんだ?
どこからか声がする。
「ん?」
「これで良かったの?」
「えっ」
「もう、とぼけてるの?」
「ああ、そういうことね」
「そうよ、それで?」
「うん、これで良かったと思ってるよ」
「そう」
…。
まぶしい。
ゆっくりと身体を起こすレフト。
「夢か…それに…ここは…」
木造の一室。
小さなテーブルに木製のベット。
窓があり外は快晴で日差しがまぶしい。
「あら、おはよ」
ガチャりとドアが開きセフィアが入室してくる。
「お、おはよう、ここは?」
突然の入室に戸惑うレフト。
飲み物を用意し椅子に座る彼女。
「休憩所よ、はい飲み物」
「ありがとう」
飲み物を受け取りベットに座るレフト。
「…エンデは?」
「沈んだわ」
「えっ」
「エネルギーの循環機だかが故障して島ごと沈んでしまったわ」
「…あら…」
…これで良かったのか。
アゲインは最後に笑顔をみせてくれた。
考え込むレフトにため息をつくセフィア。
「もう、どうせアゲインのことを考えているのね?」
「う、うん。なんというか…あれで良かったのかなと…」
「あいつは誰かに自分を止めてほしかったのだと思うわ」
「止めてほしかった?」
「永遠の時を過ごすのは……きっと苦痛よ。全てが止まった世界では自分の存在すら止まってしまうかもしれない。その恐怖から、世界を解放し自分を解き放ってくれる存在を待っていたのかもしれないってことよ」
「…難しい…」
「まあそんな考え込まないでいいと思うわよ」
「……そ、そうね」
…ゆっくり休んでくださいアゲイン。
もうあなたを縛るものはありませんから。
「少し歩いてくるわ」
「えっ大丈夫?私もいこうか?」
「大丈夫よ、すぐ戻るから」
レフトはそばにあった杖を取りゆっくり歩く。
セフィアは心配そうにドアを開ける。
「ムリはしないでね」
「うん、ちょっといってくるわ」
休憩所の通路はひんやりとしており人はいない。
受付に一声かけレフトは外に出た。
この休憩所は原生林の前にあり、大自然を感じるつくりが特徴的だ。
「風が気持ちいい」
天気が良く、森林の清々しい空気が彼の身体を包む。
「守れたんだ、本当に良かった」
ゆっくりと道を歩くレフト。
だが突如、身体の異変に気付き歩みを止める。
…魔力を感じない
「まあ仕方ないか…」
再び歩き始めたレフトだが、すぐに原生林から強い気配を感じ立ち止まる。
「……無事に終わりました…」
レフトは原生林に向かって話す。
すると空間が歪み、一帯に防壁が展開された。
「お見事でした。幻獣を代表し感謝しますわ」
「いえ、アーリ様の助言があってこそです」
姿は見えないが妖精アーリが近くにいるようである。
レフトは目を閉じて一礼する。
「あなたの決断により世界は長い呪縛から解放されました」
「…本当に……これで良かったのでしょうか…」
「ふふ、それはこれからのあなたたち次第……そうね、この世界に住まう生命が答えをくれるでしょう」
「…そうですか…」
「レフト」
「はい…」
「呪縛から解放されたのは我々幻獣も同じです。本当に……長かった…」
すると目の前にアーリが姿を現す。
「アーリ様…」
「ありがとうレフト、さあ皆の元へお戻りなさい」
アーリは笑顔をみせると葉へと変化。
フィールドの結界は解除され清々しい風が吹き抜ける。
「帰ろう…みんなのところへ……」
レフトはゆっくり歩き出すが何か様子がおかしい。
…んっ、なんだ…立ちくらみが…。
レフトは気を失い、通行人により休憩所へ運ばれる。
原因は疲労と魔力消滅による身体への負荷だと診断された。
己の力を捨てて世界を救ったレフトーラを英雄と呼ぶものは多い。
シーキヨやヘルゲート改め、ネオゲートとして再出発した地域では彼を称え、国に住まうことを望んだ。だがレフトはひっそりと国を去る決断をした。
「ここに置くぜ」
「うん、ありがとうガルシア」
ネオゲート、その舵取りは旧復興機関の者たちが率先しており、絶大な支持があるガイアが主として市民を導いている。
復興機関という組織は解体され、各国にあった支部は国により吸収され各々がそれぞれ得意な分野で活躍をしている。
ガルシアはアンと暮らしながら国の復興に尽力していた。
アンは戦いから身を引き、ガルシアとの生活を楽しんでいた。笑顔が増えた彼女は幸せそうである。
「じゃあいってくる」
「うん、気をつけてね、私も片付けたらすぐいくわ」
今日はヘルゲートを守るため戦ったバイオガーデンの国葬日。
元復興機関の者たちが中心となり、ネオゲートの関係者はかつてのダークパレスを改装したエターナルパレスを解放。
「おはようございますガルシア様」
「おはよう、朝早くから受付、ありがとな」
パレス入りするガルシア。
セキュリティーに会議室へと案内される。
「どうぞ」
「ありがとう」
部屋に入れるとそこにはマーガレットと鳥人アロー、そしてゼノンブールが席に着いていた。
「遅れて申し訳ございません、ガルシア到着しました」
「ふふ、お久しぶりですねガルシアさん」
「はっ、マーガレット様、お元気そうで」
「おい、ガルシア、嫁はどうしたんじゃ?」
「ゼノンブール様、アンは家を片付けてこちらへ合流します」
器用に二人へ対応するガルシア。
「わかった、それでは話を始めるよ」
アローが書類を皆に配り場を仕切る。
三人は書類に目を通してアローを見る。
「どういうことだ?」
ガルシアはアローに問う。
「バイオ様を慕う者は多い。私もそうだが、いまだに信じられないのだ」
「ちっ…まだ言ってんのか…」
「ガルシア、我々は目の前で見たのだ……確かに絶大な力ではあったが……」
ゼノンブールが話す。
「バイオ様に…戻ってきてほしいと願うのは……皆同じだろう?」
アローはみんなの顔をみる。
「おい、そんなことはできないし、もう十分だろが…」
「ガルシアさん、バイオさんは…」
「待てマーガレット、わしから話す」
「承知しましたわ、大老」
何とも言えぬ空気の室内。
「バイオは意識がない昏睡状態なのじゃ」
「な、なんだと?」
ガルシアはみんなの顔を確認する。
「落ちつけ、確かに一度は脈が止まっていたんじゃが急に蘇生した……だが昏睡状態なのじゃ……」
「…」
言葉を失うガルシア。
「ガルシアさん、バイオさんは今、生死をさまよっている、私はそう思うのです」
「マーガレット様?」
「レフトがエンデに向かってすぐ、我々は何か呪縛のようなものから解放されたような感じがした、それが関係しているのかもしれぬ」
「……何かからって……抽象的すぎる…だろうに」
「ふふ、実はバイオさんのように昏睡状態になった人は他にも多数いるのです」
「ああ、それの……調査ですか…」
「そうじゃ、この国葬はバイオを目覚めさせるための布石じゃ」
「この不可解な、人が急に昏睡状態なる事態を止めねばならん」
アローが語る。
「なるほど。つまり、この葬儀で不審者がいたら捕まえろ、そういうことですか?」
皆に問うガルシア。
「ふふ」
「そうじゃ」
「さすがガルシア隊長、では早速部隊の指揮を」
「…」
ミミズクとガイアは一時的だがシーキヨにいるため、現在、兵の指揮はガルシアがおこなっている。
部隊を動かすためにゼノンブールたちはガルシアの協力を要請したのだ。
レフトは滅びの運命から世界を救った。
だがその代償は大きく困難の壁がそびえていた。
次回へ続く
なんだ?
どこからか声がする。
「ん?」
「これで良かったの?」
「えっ」
「もう、とぼけてるの?」
「ああ、そういうことね」
「そうよ、それで?」
「うん、これで良かったと思ってるよ」
「そう」
…。
まぶしい。
ゆっくりと身体を起こすレフト。
「夢か…それに…ここは…」
木造の一室。
小さなテーブルに木製のベット。
窓があり外は快晴で日差しがまぶしい。
「あら、おはよ」
ガチャりとドアが開きセフィアが入室してくる。
「お、おはよう、ここは?」
突然の入室に戸惑うレフト。
飲み物を用意し椅子に座る彼女。
「休憩所よ、はい飲み物」
「ありがとう」
飲み物を受け取りベットに座るレフト。
「…エンデは?」
「沈んだわ」
「えっ」
「エネルギーの循環機だかが故障して島ごと沈んでしまったわ」
「…あら…」
…これで良かったのか。
アゲインは最後に笑顔をみせてくれた。
考え込むレフトにため息をつくセフィア。
「もう、どうせアゲインのことを考えているのね?」
「う、うん。なんというか…あれで良かったのかなと…」
「あいつは誰かに自分を止めてほしかったのだと思うわ」
「止めてほしかった?」
「永遠の時を過ごすのは……きっと苦痛よ。全てが止まった世界では自分の存在すら止まってしまうかもしれない。その恐怖から、世界を解放し自分を解き放ってくれる存在を待っていたのかもしれないってことよ」
「…難しい…」
「まあそんな考え込まないでいいと思うわよ」
「……そ、そうね」
…ゆっくり休んでくださいアゲイン。
もうあなたを縛るものはありませんから。
「少し歩いてくるわ」
「えっ大丈夫?私もいこうか?」
「大丈夫よ、すぐ戻るから」
レフトはそばにあった杖を取りゆっくり歩く。
セフィアは心配そうにドアを開ける。
「ムリはしないでね」
「うん、ちょっといってくるわ」
休憩所の通路はひんやりとしており人はいない。
受付に一声かけレフトは外に出た。
この休憩所は原生林の前にあり、大自然を感じるつくりが特徴的だ。
「風が気持ちいい」
天気が良く、森林の清々しい空気が彼の身体を包む。
「守れたんだ、本当に良かった」
ゆっくりと道を歩くレフト。
だが突如、身体の異変に気付き歩みを止める。
…魔力を感じない
「まあ仕方ないか…」
再び歩き始めたレフトだが、すぐに原生林から強い気配を感じ立ち止まる。
「……無事に終わりました…」
レフトは原生林に向かって話す。
すると空間が歪み、一帯に防壁が展開された。
「お見事でした。幻獣を代表し感謝しますわ」
「いえ、アーリ様の助言があってこそです」
姿は見えないが妖精アーリが近くにいるようである。
レフトは目を閉じて一礼する。
「あなたの決断により世界は長い呪縛から解放されました」
「…本当に……これで良かったのでしょうか…」
「ふふ、それはこれからのあなたたち次第……そうね、この世界に住まう生命が答えをくれるでしょう」
「…そうですか…」
「レフト」
「はい…」
「呪縛から解放されたのは我々幻獣も同じです。本当に……長かった…」
すると目の前にアーリが姿を現す。
「アーリ様…」
「ありがとうレフト、さあ皆の元へお戻りなさい」
アーリは笑顔をみせると葉へと変化。
フィールドの結界は解除され清々しい風が吹き抜ける。
「帰ろう…みんなのところへ……」
レフトはゆっくり歩き出すが何か様子がおかしい。
…んっ、なんだ…立ちくらみが…。
レフトは気を失い、通行人により休憩所へ運ばれる。
原因は疲労と魔力消滅による身体への負荷だと診断された。
己の力を捨てて世界を救ったレフトーラを英雄と呼ぶものは多い。
シーキヨやヘルゲート改め、ネオゲートとして再出発した地域では彼を称え、国に住まうことを望んだ。だがレフトはひっそりと国を去る決断をした。
「ここに置くぜ」
「うん、ありがとうガルシア」
ネオゲート、その舵取りは旧復興機関の者たちが率先しており、絶大な支持があるガイアが主として市民を導いている。
復興機関という組織は解体され、各国にあった支部は国により吸収され各々がそれぞれ得意な分野で活躍をしている。
ガルシアはアンと暮らしながら国の復興に尽力していた。
アンは戦いから身を引き、ガルシアとの生活を楽しんでいた。笑顔が増えた彼女は幸せそうである。
「じゃあいってくる」
「うん、気をつけてね、私も片付けたらすぐいくわ」
今日はヘルゲートを守るため戦ったバイオガーデンの国葬日。
元復興機関の者たちが中心となり、ネオゲートの関係者はかつてのダークパレスを改装したエターナルパレスを解放。
「おはようございますガルシア様」
「おはよう、朝早くから受付、ありがとな」
パレス入りするガルシア。
セキュリティーに会議室へと案内される。
「どうぞ」
「ありがとう」
部屋に入れるとそこにはマーガレットと鳥人アロー、そしてゼノンブールが席に着いていた。
「遅れて申し訳ございません、ガルシア到着しました」
「ふふ、お久しぶりですねガルシアさん」
「はっ、マーガレット様、お元気そうで」
「おい、ガルシア、嫁はどうしたんじゃ?」
「ゼノンブール様、アンは家を片付けてこちらへ合流します」
器用に二人へ対応するガルシア。
「わかった、それでは話を始めるよ」
アローが書類を皆に配り場を仕切る。
三人は書類に目を通してアローを見る。
「どういうことだ?」
ガルシアはアローに問う。
「バイオ様を慕う者は多い。私もそうだが、いまだに信じられないのだ」
「ちっ…まだ言ってんのか…」
「ガルシア、我々は目の前で見たのだ……確かに絶大な力ではあったが……」
ゼノンブールが話す。
「バイオ様に…戻ってきてほしいと願うのは……皆同じだろう?」
アローはみんなの顔をみる。
「おい、そんなことはできないし、もう十分だろが…」
「ガルシアさん、バイオさんは…」
「待てマーガレット、わしから話す」
「承知しましたわ、大老」
何とも言えぬ空気の室内。
「バイオは意識がない昏睡状態なのじゃ」
「な、なんだと?」
ガルシアはみんなの顔を確認する。
「落ちつけ、確かに一度は脈が止まっていたんじゃが急に蘇生した……だが昏睡状態なのじゃ……」
「…」
言葉を失うガルシア。
「ガルシアさん、バイオさんは今、生死をさまよっている、私はそう思うのです」
「マーガレット様?」
「レフトがエンデに向かってすぐ、我々は何か呪縛のようなものから解放されたような感じがした、それが関係しているのかもしれぬ」
「……何かからって……抽象的すぎる…だろうに」
「ふふ、実はバイオさんのように昏睡状態になった人は他にも多数いるのです」
「ああ、それの……調査ですか…」
「そうじゃ、この国葬はバイオを目覚めさせるための布石じゃ」
「この不可解な、人が急に昏睡状態なる事態を止めねばならん」
アローが語る。
「なるほど。つまり、この葬儀で不審者がいたら捕まえろ、そういうことですか?」
皆に問うガルシア。
「ふふ」
「そうじゃ」
「さすがガルシア隊長、では早速部隊の指揮を」
「…」
ミミズクとガイアは一時的だがシーキヨにいるため、現在、兵の指揮はガルシアがおこなっている。
部隊を動かすためにゼノンブールたちはガルシアの協力を要請したのだ。
レフトは滅びの運命から世界を救った。
だがその代償は大きく困難の壁がそびえていた。
次回へ続く
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