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第一章

一話 本部奪回作戦

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復興機関。

本部は暴徒たちにより陥落した。
各地の機関はそれぞれ独立しており、この本部陥落の知らせに各支部は対応に困っていた。
一国の戦力に匹敵するヘルゲート支部とシーキヨ支部は本部への対応に追われていた。


シーキヨ支部


「状況を把握してから動く…それがよかろう?」


現在のシーキヨ支部はゼットが統括している。
レンやミツキなど実力者が多く支部は強固な基盤がある。
ゼットとシフ、そして国のアルフレッドら騎士と学者たちは今後について議論していた。


「ヘルゲートは既に臨戦態勢だ。シーキヨも一緒になって戦闘体制となれば市民はどうなる?」


ゼットは冷静だ。


「アルフレッド、国はどういう見解を?」


「復興機関に一任です。アレサ隊長が退役されてから国は武力を放棄したようなものなので」


「まあおかげで平和なんだがねえ…」


皮肉るシフ。
シーキヨはとても安定した国になっていた。
近辺にある砂漠の水がめが一帯を巡りこの地域はより活性化している。


「国で何かあれば知らせてくれ」


「承知した」





その頃、復興機関本部を奪回すべく動き出したガルシアたちは、荒れ果てた本部へ到着していた。


「二人とも、ここに……メテオがいる…」


「…」


「ああ、わかるぜ…空が紅い元凶はここからみたいだ…」


言葉を失うアン。
ガルシアは集中し冷静に周囲を警戒する。
本部の建物から禍々しい紅い柱が立ち、それが上空に拡がり空をそめている。


「なんというか……ここで兵器と戦うのか…」


「ガルシア、不安ですか?」


アンは彼の腕をにぎる。


「お、おう……バイオ様がこんな大役を俺に頼むとは…」


「それだけあなたが信頼されているのよ」


アンとガルシアのやりとりをみて表情が和らぐセフィア。
そんな三人の前に暴徒が現れる囲まれてしまう。


「おい、こいつヘルゲートのガルシアだぞ」


「…セフィア様が何故復興機関の者と?」


暴徒はダルガ教の残党や復興機関の者で構成されている。
残党はセフィアの実力を知っているので迂闊に攻撃はしてこない。


「うわ、なんだか奇妙な組み合わせですね」


困惑する暴徒たちを退け一人の男が三人の前に立つ。
小綺麗な服装の彼は凛々しい表情でいきなり小さな笛を取り出した。


「さて」


「まずい、こいつは指名手配されている犯罪者だ」


「犯罪者ですって?」


ガルシアは二人を後退させる。
すると内部から合成獣キメラが駆けつけた。
キメラは研究者自身守るように立ち三人を敵と認識したようである。


「私はサイレント、君たちを内部に入れるわけにはいかない、さあみんなで三人を拘束してくれ」


サイレントは暴徒たちに指示を出す。
キメラは彼の前から三人を睨み付け、暴徒たちはおびえつつもガルシアたちへ攻撃をする。


「しかたねえ、戦闘を許可する」


ガルシアは抜刀し二人に戦闘許可を出す。
アンも抜刀し剣をなぎはらう。
すると衝撃波が発生し暴徒たちを直撃。
一瞬に多数の暴徒が倒れた。


「これは…素晴らしい…」


その様子に笑みをうかべるサイレント。


「そのキメラを連れて去りなさい」


アンは前進しサイレントに近づく。
暴徒たちは恐怖からか彼女に道を譲る。
そんな暴徒らをキメラが蹴散らす。
雄叫びをあげアンを敵視する。


「セフィア様、ガルシア、下がって下さい」


アンは剣を構えキメラと対峙する。


「えと…セフィアさん?」


「ふふふ、セフィアでよいですよガルシアさん」


「おう……えーと…教団の残党にはあんたの説得が絶大だと思う。投降する者をまとめて一ヵ所に集めてくれ」


「承知しました」


「あんたが動くのはどうしょうもなくなった時だわ。メテオがここにいるとすれば…戦力は温存しておきたい」


「冷静に部隊を指揮する能力が高いですね、さすがですガルシアさん」


「…昔、レフトと一緒に兵法を勉強したのでね…」


「分かりました。では戦力を分断させます。申し訳ないのですが、剣を一本貸してくれますか?」


「おう、ほら」


ガルシアは出陣時、三本の剣を持つ習慣がある。
そのうちの一本をセフィアに渡す。


「レフトーラさんが魔封剣を使わない意味が分かりました。悪魔武器の使用は控えるべきでしょう」


「えっ…」


するとセフィアは本部にむかって衝撃波を放つ。
キメラとサイレントはそれをギリギリで避けるが、本部の入口は放たれたエネルギーが直撃し、建物は緊急警報が響く。


「あら……」


「セフィア様、もう少し加減すべきかと…」


「おいおい、何なんだこの人は…」


恐怖で震えるサイレント。
その時、怯えるキメラにアンは峰打ちをして気絶させる。


「命は奪わん、投降せよ」


今度はサイレントと対峙するアン。
本部の建物からは避難する者が次々と現れ、それをセフィアが誘導している。


「…こりゃ…ある意味悪夢だ…交通整理かよ…」


戦意が失せたサイレントは投降するが、その時、彼の後方からソロモンが現れる。


「ん、アン、気をつけろ、そいつは武器を持っているぞ」


「ちっ」


空間を移動したソロモンはアンに斬りかかるがガルシアの声にてアンは攻撃を回避できた。
身体のバランスを崩したソロモンは彼女の峰打ちでキメラ同様に気絶。


「ガルシア、こいつは復興機関の者だな?」


「ああ……だがおかしい、まるで洗脳されたようだ」


考え込む二人だが、次の瞬間、本部の上階部分がいきなり爆破。
空に立つ紅い柱の下にハザークメテオが確認される。



「おい、あれが…」


「む、ガルシア、構えろ」


メテオは突然周囲をなぎ払うレーザーを発射。
辺りは火の海となる。


「セフィア、こいつはヤバいぞ」


「ガルシアさん、メテオはまだエネルギー不足です。今の一撃で力を使い尽くしたように見えます」


「おう、そうなのか…」


「セフィア様、ガルシア、強い殺気を感じます」


「え」


火の海を両断しセフィアに衝撃波が放たれる。
だが、アンはそれを無力化する。


「ほう、ちょっとは骨がありそうだな」


衝撃波が放たれたところにはフォーマルな服装の男が立っている。



「私はフリータ、以後お見知りおきを」


丁寧な挨拶で温厚そうだが、アンは彼の本当の姿を見抜いていた。


「最初から全力でいく」


アンは突如ナーガへと変身しフリータを攻撃する。
怪物化しつつも的確な攻撃をするアンだが、フリータはひらりと躱している。

「…ガルシア…逃げろ……そしてレフトたちを呼べ…」


崩壊しつつある本部からゴズが出てくる。
ソロモンに回復薬を飲ませて撤退するようだ。


「おいおい、ちょっと待て、どういうことなんだ?」


セフィアは投降者をまとめ、アンは交戦中。
ガルシアはゴズにつめより状況説明を求めた。


「あの武器商人と研究者が暴徒を率いて攻めてきたんだ。そのすぐ後に空からあのデカブツが降ってきた」


「メテオだな…」


「名は知らない。研究者は手鏡のようなものを使い、皆を洗脳した。そっからは地獄だ」


「味方は…誰もいないのか?」


「ふふ、本部には各地の支部ほどの戦力はないんだ…危機に気づいたこいつは結構強いほうだが……このざまだ」


ゴズはソロモンを起こして逃亡を始める。


「オレたちはそこの投降者たちを連れてシーキヨまで逃げる。あの女性二人と協力して時間をかせいでくれ」


「ちっ……制圧から救出になるとはな……分かった」


「すまない」



ガルシアはセフィアに合図する。


「何でしょう?」


「この者が投降した連中らを率いてこの場を離れてくれる。われわれはその時間をかせぐ」


「それはひと安心です。こんなに人が多いとアンは戦いにくいでしょう。あの子は周囲の被害を気にして実力を発揮していないわ」


その言葉に声を失うゴズとガルシア。


「アン、もう大丈夫よ。全力で戦いなさい」


その声にナーガの変身を解くアン。


「ほう…本気になりましたか…」


「慈悲は…もうないぞ…」


「くっくっ」


するとフリータは拳銃を取り出しアンを狙う。
二丁拳銃は美しい装飾がされており、特殊な武器だと一目でわかる。


「む、あれは…」


「アン、気をつけて、アレは特殊な武器よ」


フリータはニヤリと笑うとアンの足へ弾丸を放つ。
魔力が込められた弾丸は彼女の足元を凍結させ動きを封じた。


「ちっ…魔弾を放つ銃だったか…」


「君は復興機関らしいが、どうやら新入りのようだね」


「くっ…」


アンは氷を砕こうとするが、これは魔力が込められているようで足元から身体中に氷が広がる。
二人はすぐに加勢するが、フリータはそれを制止する。


「彼女の命は既に僕の手中にある。動くとどうなるか…わかるね?」


「きさま…」


「あらあら…こうもアンが容易くやられるとは…」



絶望するガルシア。
一本とられたと相手を賛美するセフィア。


「見たか、信者たちよ。僕の力があればヘルゲートをおとせる。さあ共に立ち上がるのだ」


「おいおい…」


逃亡するゴズに目を向けるフリータ。
その時、アンの足元に剣が突き刺さる。
その剣は氷を吸収しアンを救出する。


「あれは、レフトか…助かったぜ」


「…レフトーラさん…ではないわ」



「バカな魔力を吸収だと」




上空からゆっくりとアンの元へ着地したのはデルタだ。



「私が相手だ」


次回へ続く。
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