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第二章

四話 宿屋再スタート

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「知っていることを話してもらおう」

ソロモンが捕縛したジダヌへの尋問が始まった。
尋問官二名と上層部二名は控えめで傷つくことはない。
部屋の外ではニナたち含め、多くの者が待機している。

「まさか本部を襲撃してくるとはびっくりしたよ」

「でも被害は少ないし問題ないでしょう」

話題は襲撃のことが中心で、皆、本部襲撃は驚いたようだ。

「うむ」

「ドルガが部隊を率いたという感じではなかったわね」

「うむ、実はこの襲撃、カモフラージュかもしれない」

「えっ…」

「ここはしばらくかかる。先にあの少女に話を聞こう」

「少女? 」

「ミラといったか」

「ああ、お嬢さんね」

「おそらく魔法で洗脳されていたのだろう」

「ジダヌ以外にも危険分子とやらが…」

「うむ」

二人はミラがいる病室へと向かった。
復興機関が揺れてる時、レフトたちは宿屋でのんびりとしていた。
酒場は賑やかで少し前に吹き飛んだことが嘘のようである。



「平和だねえ」

酒を飲まずに茶で一息いれるレフト。
 アレサはお酒らしき飲み物を手にしているが、酔っている様子はない。

「よかった。あなたがリラックスしてくれて嬉しいわ」

「ここへ来てよかったね、ありがとうアレサ」

「ふっふ」

「ところでそれってお酒かい?」

アレサの飲み物に指差すレフト。

「そうよ。飲みたいの?」

「そうね、ちょっと気になったのよね」

レフトはその飲み物をまじまじと見る。
透明な液体だが、そこそこきつい臭いがする。

「やめておいたほうがいいわよ」

真剣に忠告するアレサだったが、すでにレフトは一口飲んでいた。

「うげ…こ…これは……」

飲み物を吐き出し倒れるレフト。
その様子に周囲のお客がすぐに従業員を呼ぶ。

「…」

そりゃ倒れるよって感じでレフトを見つめるアレサ。

「奥様、どうされま…ってレフトさん?」

「ああ、ダン。ごめんなさい、動かすと後々大変だから少しここで旦那を休ませてもよいかしら?」

「もちろん、ですが、ここはうるさいですよ」

「いいわよ、他のお客には迷惑をかけないから」

一礼し仕事に戻るダン。
やはりベルーナが不在だと忙しそうだ。

「ここはベルーナがいるべきところ…なのかしらね」

そんなことを思いつつ口を開けて気絶しているレフトを見つめる。

ふふ、あなたはあなたよ。
悪魔だろうが人だろうが関係ないわよ。

そんな賑わう酒場に突然目出し帽の三人組が武器を持って入ってくる。
略奪にきたのだろう。

「おい、酒盛りはここまでだ、金目のモノを出せっ」

大声を出す首謀者らしき人物。
だが客は誰一人その者を相手にせず飲み続けている。

「おいおいっ、どうなってんだよ、ここは…」

戸惑う三人組。

「よう、威勢はいいが場違いじゃぞ。やるなら受けるが…やめときなされ」

親切なのか、挑発なのか、よくわからない言葉を放つ老人。

「爺さん、その金ピカの杖をよこしな」

三人組の一人がその杖を奪おうとする。
だが、老人はその杖を持つと神速の抜刀で目出し帽を斬る。
素顔を晒したその者は一瞬、何が起きたか理解できなかった。

「ふ~ん、あの抜刀術は見覚えがあるわね」

ボソとつぶやくアレサ。
酒場は静まり略奪者の三人は固まっている。

「これ以上は怪我するぞ」

ふらふらと起き上がり、よぼよぼながらも確かな剣気が漂う。

「くっ…どうする」

そこへ、なんとベルーナとアッカが帰ってくる。
騒ぎを聞きダンが駆けつける。



「帰ってこれたか…これはレフトに土下座モノだわね」


「ただいまダン、この騒ぎは一体?」

「物騒なモノを置き君たちも飲みなさい」

アッカは略奪者から武器を取りあげ即破壊する。
その力に驚き大人しく席に座る三人組。

「かっはは、さあ飲もうぞい」

老人は三人に酒を振る舞う。
ダンはベルーナとアッカに耳打ちしアレサのほうに手を向ける。

「奥様…」

アレサたちに気づいた二人。

「奥様、その節は…」

「いいよ、これでこの宿屋が重要だって心の底からわかったでしょう?」

「はい、それにレフトさんや奥様の行動は後のことを考えていたと…」

「私は本当にここを破壊するつもりだったわよ」

「…」

黙り込むベルーナとアッカ。

「奥様はそんなことしませんよ」

ダンがいきなり会話に加わる。
ダンの登場よりもその発言に怯える二人。

「奥様は本当に破壊する場合は無慈悲に、予告なく執行すると私は思います」

「ふっ」

ダンの言葉にニヤリと笑うアレサ。

「…そういえば…ここは吹き飛んだのに…もう?」

アッカが周りをみて話す。

「これが……宝珠の力…なのかもね」

「奥様……宝珠は危険かと…」

アッカがアレサに問う。

「私も宝珠はドラゴンを召喚したり危険な石かと思っていたわ」

「はい」

とりあえずみんなが座り、話し合いというか飲み会のような雰囲気になる。
ダンは従業員に指示をしている。

「宝珠が何なのかは知らないけど…ベルーナが願った、宿屋をやりたいという純粋な思いが…」

アレサが語ることに驚く三人。
凄まじい戦闘能力で冷酷な印象であったアレサがあろうことか思いを語っている。

「何よ?どうしたの」

ぼーっ聞いている三人。

「い、いえ、宝珠に建築機能があったとは…」

アッカが突然、レフトのようなギャクを放つ。


そんなこんなで四人は会話を楽しむ。
人らしさを学んでいるダン。
ベルーナは涙を流し喜んだ。
アッカはそんなベルーナを支え、時には寒いギャクを放つ。


「…そういえば…レフトさんは…お休みですか?」

アッカが起きないレフトについてアレサに質問する。

「ああ、疲れているのよ。レフトは優しすぎるから」

「…」

その言葉にベルーナは涙が止まらない。

「奥様とレフトさんの行動があったからこそ我々は帰ってこれたのです」

アッカは深々と頭を下げる。

「私たちが干渉すべきではないと思っていたわ。何度も言ったけどここへは静養で来たのだから」

「はい」

「レフトは復興機関を去ったから出先で問題が起ころうが力は使えない」

「…それは…」

「もし魔力を解放していたら、客含め全てが消滅していたわ」

「…」

「ちょっと、これじゃあ私が脅しているみたいでしょうが…」

「いえ、お二人に会えて本当によかった」

「奥様、本当にレフトさん…大丈夫ですか?」

「えっ」

血の気が引いて真っ青な顔だ。
さすがにこれはヤバいとアッカが部屋に運ぼうとする。

「…一体何を…」

アレサは表情を変えずアッカにグラスを渡す。

「うえ、これ…アルコールそのものじゃないですかっ」

ダンがレフトの状態を確認する。

「奥様、これは部屋に運んで医者に見せたほうがいい。よろしいでしょうか」

わりと状況が悪化しつつあるため、アレサはダンにお願いした。



「あちゃ…ごめんね…レフト」



次回へ続く。
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