ファンタジー/ストーリー

雪矢酢

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第ニ章

十八話 白い炎

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お得な食材を手に入れて上機嫌なアレサ。気分良く帰宅したが様子がおかしい。

「ん、レフト?」

家の中は暗く人の気配がない。
異変に気づきたアレサは食材は置き、すぐさま身構える。

その時、足に何かが当たる。

「ちょっと…レフトっ」

それは意識がないレフトだった。
薄暗いせいか顔色が悪く見え、ぐったりとしている。一旦深呼吸をして冷静になってから脈を確認する。

「よかった…」

ゆっくりと身体を起こしベット運ぶ。現実を知りショックだったのだろうか…私が勝手に医者へ会わせたのが原因だろうかと…いろいろ考え込んでしまう。

手を握り無事を祈るアレサ。
軍や機関と違い当直医がいないため安静にして様子を見るという決断をした。



……ここは…。



目覚めたレフトは周囲を見て驚いた。
大地は腐り草木は枯れ、ここはとても人が住める地域ではない。
まるでこの世の終わりのような…。

「…」

レフトは大陸に、こんな荒れ果てた地域は存在しないと思っていた。

これはまた夢…きっとそうだ…。

すると上空からなんと、あのネズミが下りてきた。
レフトは慌てて身構えるが武器は無い。

ドンという着地音の後、衝撃波が発生する。
魔力が使えないレフトは、吹き飛ばされないように必死だ。

「…くっ…」

厳しい表情のレフトをみて驚くネズミ。
魔法を使えばこの程度の衝撃、わけないだろうといった感じだ。

「…これは現実ではない…」

レフトはそう自分に言い聞かせた。
そう、今は前線を離れて静養している。悪魔は静養していることを知らないはず。夢なら、何でもありだ、理不尽なことも物理の法則を無視したことも平気で起こる。

ネズミはレフトをみているが襲ってくる気配はない。

何かがおかしい。

容姿は確かにシーキヨで遭遇したそれそのものなのだが、どうも中身が違うような変な感じがする。

拳を握るレフト。

やる…か…いや…この状況でやれるのか……。

ニナやアレサは体術の心得があり、丸腰でも十分戦える。だがレフトの体術は素人レベルで、相手は他のモンスターとは桁違いの脅威である悪魔。

「…」

レフトはある決断をした。
そして周囲を見渡す。


「…白い…炎……」


そうか。
ぼんやりと遠方に白い炎が確認できた。

ネズミは見るレフト。
襲ってはこないものの、鋭い爪を出し臨戦態勢のネズミ。


レフトはその炎の方向めがけて走った。
突然の行動に唖然とするネズミ。
だが、すぐに冷静になり納得する。
武器の無い者が戦っても勝機は無い。
レフトの決断は正しい。


ひたすらレフトは走った。
白い炎がある方向へ。
不思議なことに疲労は感じない。
永遠に走れる。

レフト…。
私を探して…ほしいの。


迷った時は白い炎を…。
私を探してほしい。




次章へ続く。
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