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第ニ章
十話 始まりの旅立ち
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身構えたレフトにただならぬ圧を感じたコト。
攻撃が…くる。
目を閉じたレフト。
と、次の瞬間オメガの時と同様に神速の一撃をコトに放つ。
コトは反撃をあきらめて防ごうと構えた。
「おっと」
「えっ…」
レフトは寸前で攻撃を中断した。
コトはダメージを覚悟していたが、直前で止まったレフトを見て一気に脱力した。
「いい運動になったよ」
ニッコリと笑うレフト。
その顔をみて安心するコト。
勝敗や倒すためではなく、お互いを知るための手合わせ、レフトはそれが目的であった。
「レフトーラさん」
「ん」
「今は負傷中という報告を受けており、そのためガードを、ということですが…」
「そうよ、左腕の調子が悪くてね」
「…」
冗談はやめてくれ。
負傷? どこがだよ…。
コトが感じのはそんなとこであろう。
万全の状態では勝負にならない…そう思った。
「よくわかりました」
「えっ、何がよ」
「次元が違うようです」
「次元って…」
「貴重な経験ができました」
「手合わせならいつでも付き合うよ」
その時、訓練場に身なりの整った者が現れた。
「ここにいましたか。コトさんに緊急の依頼がありまして」
「今はガードの任務中なのですが」
「とりあえず聞いたら。んで内容は?」
「レフトーラさん」
「いいよ。話してみたら」
「…」
「よろしいでしょうか」
「わかりました。どうぞ」
話を聞いてもらえるとわかり、ほっとするその人物。
レフトは剣を持ったまま、コトは腕組をしている。
「モンスターの討伐なのですが」
「お断りします」
「えっ」
「レフトーラさんを戦闘に巻き込むわけにはいきません。別の者へ回して下さい」
「ですが…」
「あなたは何者ですか」
コトはその人物に鋭い眼光で問う。
ガードの任務についている者へ新たに依頼が入ることはありえない。この人物は機関の者ではない。
「私は依頼を伝えにきた者で…」
「ならば…」
コトは構えた。
これにはさすがに驚くレフトとその人物。
「ここは機関の本部であり、身元不明の人物が存在するなどありえない」
「…」
「まあ一理あるわ…わかるように説明してもらおうかな」
レフトはその人物へ伝えた。
すると観念したような素振りで、深いため息の後にその人物は口を開いた。
「私は情報課のライと言います。すぐに名乗らなかった失礼をお許しください」
「…」
二人は無言で聞いている。
「私はある人物にコトさんを連れて来いと脅迫されているんです」
「私を…いったいなぜ…」
「コトさんを洗脳してレフトさんと戦わせるためらしいです」
「…くだらないねえ」
「その人物の名は…サナ」
「魔女…か」
「はい」
レフトとライは魔女サナを知っている。
「サナ殿は…そうか、今はここにいるんだよね…なるほど」
レフトは事情を理解したようだ。
「レフトーラさん、どういうことでしょうか」
「再生会…だね」
「はい。サナがここに?…機関にいるのですか?」
「ちょっと前に魔法剣士に襲撃された時、サナ殿も一緒だった。今は病棟で治療中だと思う」
「魔法剣士…まさか四属士が…」
「ああ、火や水やらの属性特化の魔法剣士だったね」
ライはそれまで恐れていた存在が倒れたことで動揺している。
「仮にサナ殿がコトに接触しても洗脳はできないと思うよ。魔法剣士たちの撃破もコトなら十分可能だろうし」
「それほどまでに…」
「つまり、病棟にいるサナという人物をつめてくればよい、そういうことでしょうか」
コトが口を開く。
今はレフトのガード中であり、この件はさっさと済ませたい、そういった感じだろう。
「私はガードでありチームは組んでいません。本来そんな人物に依頼するのはおかしなことですが、レフトーラさんが許可してくださるなら」
「サナ殿含め再生会とは関わらないほうがいいね。機関に調査を依頼するといいよ。コトがわざわざ動く必要はない」
ライにとっての脅威であるサナは、もうかつての力はないと伝えるレフト。再生会がどのくらいの勢力であるか不明のため、そこは機関に任せるのがよい、というのがレフトの考えでライは納得したようだ。
「申し訳ありませんでした」
そう言うとライは去った。
「再生会…胡散臭い集団のようですね」
「ああ、団結するのはいいけど危険な思想や破壊活動等はやめてほしいよね」
レフトは細剣を片付けて訓練場を後にした。
「食事をして今日は休むとしよう」
「承知しました。では料理を…」
「いや、食堂で済ませようよ」
「ありがとうございます。作る手間が省けます」
食堂はぼちぼち人がいる。
レフトたちは隅っこの席に座った。
「んで、コトはずっとガードを?」
「いえ、もともと私は治安課でしたが急に派遣課へ配属されました」
「よくあるね、おそらくは派遣課の誰かがトラブルにあったパターンかもよ」
「はい、欠員したようで…」
「派遣課は実力がない者が配属されると悲惨だよ」
「私はこのガードが終了したらとある国へ派遣される予定だそうです」
「えっ、それ話して大丈夫なの?」
「はい、レフトーラさんなら」
「遠いのかい?」
「はい、とって遠くて、争いがある大陸の一国だそうです。なんでも真っ白な国らしいです」
「どんな大陸でも、危険な国だろうが大丈夫だよ」
二人は和やかに食事を済ませた。
「それじゃあ、また会えるといいね」
「なんだか派遣前にレフトーラさんに会えて良かったです」
「頑張ってね。自分を信じて、いってらっしゃい」
コトの物語はここから始まるんだなと思うレフトだった。
別れは新たなるスタート、ということもある…のだろうか。
次回へ続く
攻撃が…くる。
目を閉じたレフト。
と、次の瞬間オメガの時と同様に神速の一撃をコトに放つ。
コトは反撃をあきらめて防ごうと構えた。
「おっと」
「えっ…」
レフトは寸前で攻撃を中断した。
コトはダメージを覚悟していたが、直前で止まったレフトを見て一気に脱力した。
「いい運動になったよ」
ニッコリと笑うレフト。
その顔をみて安心するコト。
勝敗や倒すためではなく、お互いを知るための手合わせ、レフトはそれが目的であった。
「レフトーラさん」
「ん」
「今は負傷中という報告を受けており、そのためガードを、ということですが…」
「そうよ、左腕の調子が悪くてね」
「…」
冗談はやめてくれ。
負傷? どこがだよ…。
コトが感じのはそんなとこであろう。
万全の状態では勝負にならない…そう思った。
「よくわかりました」
「えっ、何がよ」
「次元が違うようです」
「次元って…」
「貴重な経験ができました」
「手合わせならいつでも付き合うよ」
その時、訓練場に身なりの整った者が現れた。
「ここにいましたか。コトさんに緊急の依頼がありまして」
「今はガードの任務中なのですが」
「とりあえず聞いたら。んで内容は?」
「レフトーラさん」
「いいよ。話してみたら」
「…」
「よろしいでしょうか」
「わかりました。どうぞ」
話を聞いてもらえるとわかり、ほっとするその人物。
レフトは剣を持ったまま、コトは腕組をしている。
「モンスターの討伐なのですが」
「お断りします」
「えっ」
「レフトーラさんを戦闘に巻き込むわけにはいきません。別の者へ回して下さい」
「ですが…」
「あなたは何者ですか」
コトはその人物に鋭い眼光で問う。
ガードの任務についている者へ新たに依頼が入ることはありえない。この人物は機関の者ではない。
「私は依頼を伝えにきた者で…」
「ならば…」
コトは構えた。
これにはさすがに驚くレフトとその人物。
「ここは機関の本部であり、身元不明の人物が存在するなどありえない」
「…」
「まあ一理あるわ…わかるように説明してもらおうかな」
レフトはその人物へ伝えた。
すると観念したような素振りで、深いため息の後にその人物は口を開いた。
「私は情報課のライと言います。すぐに名乗らなかった失礼をお許しください」
「…」
二人は無言で聞いている。
「私はある人物にコトさんを連れて来いと脅迫されているんです」
「私を…いったいなぜ…」
「コトさんを洗脳してレフトさんと戦わせるためらしいです」
「…くだらないねえ」
「その人物の名は…サナ」
「魔女…か」
「はい」
レフトとライは魔女サナを知っている。
「サナ殿は…そうか、今はここにいるんだよね…なるほど」
レフトは事情を理解したようだ。
「レフトーラさん、どういうことでしょうか」
「再生会…だね」
「はい。サナがここに?…機関にいるのですか?」
「ちょっと前に魔法剣士に襲撃された時、サナ殿も一緒だった。今は病棟で治療中だと思う」
「魔法剣士…まさか四属士が…」
「ああ、火や水やらの属性特化の魔法剣士だったね」
ライはそれまで恐れていた存在が倒れたことで動揺している。
「仮にサナ殿がコトに接触しても洗脳はできないと思うよ。魔法剣士たちの撃破もコトなら十分可能だろうし」
「それほどまでに…」
「つまり、病棟にいるサナという人物をつめてくればよい、そういうことでしょうか」
コトが口を開く。
今はレフトのガード中であり、この件はさっさと済ませたい、そういった感じだろう。
「私はガードでありチームは組んでいません。本来そんな人物に依頼するのはおかしなことですが、レフトーラさんが許可してくださるなら」
「サナ殿含め再生会とは関わらないほうがいいね。機関に調査を依頼するといいよ。コトがわざわざ動く必要はない」
ライにとっての脅威であるサナは、もうかつての力はないと伝えるレフト。再生会がどのくらいの勢力であるか不明のため、そこは機関に任せるのがよい、というのがレフトの考えでライは納得したようだ。
「申し訳ありませんでした」
そう言うとライは去った。
「再生会…胡散臭い集団のようですね」
「ああ、団結するのはいいけど危険な思想や破壊活動等はやめてほしいよね」
レフトは細剣を片付けて訓練場を後にした。
「食事をして今日は休むとしよう」
「承知しました。では料理を…」
「いや、食堂で済ませようよ」
「ありがとうございます。作る手間が省けます」
食堂はぼちぼち人がいる。
レフトたちは隅っこの席に座った。
「んで、コトはずっとガードを?」
「いえ、もともと私は治安課でしたが急に派遣課へ配属されました」
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「はい、欠員したようで…」
「派遣課は実力がない者が配属されると悲惨だよ」
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「えっ、それ話して大丈夫なの?」
「はい、レフトーラさんなら」
「遠いのかい?」
「はい、とって遠くて、争いがある大陸の一国だそうです。なんでも真っ白な国らしいです」
「どんな大陸でも、危険な国だろうが大丈夫だよ」
二人は和やかに食事を済ませた。
「それじゃあ、また会えるといいね」
「なんだか派遣前にレフトーラさんに会えて良かったです」
「頑張ってね。自分を信じて、いってらっしゃい」
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別れは新たなるスタート、ということもある…のだろうか。
次回へ続く
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