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第ニ章
五話 土の魔法
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刺客を返り討ちにしてきたレフト。
彼の腕は不安定ながらも最低限の機能はしていた。
だが戦闘が続けばいずれは壊れてしまうだろう。
事実、レフトは無理して戦っており、いずれ腕が壊れるだろうとは感じていた。
「…あれ、起きたのね」
アレサが起きる。
軍のパレードで疲労していたのだろうか。
表情が疲れているように思える。
「…ここに来たのは少し身を潜めたいと告げるためなんだ」
「えっ…身を潜めるって休養するってことかしら」
「うん、しばらく戦闘を避け、落ち着いた日常を過ごそうとおもうんだ」
「そうなの。それを聞いて安心したわ」
アレサはお茶を入れてレフトに差し出す。
「ありがとう。アレサは長期の休養はできるの」
「私? もしかして一緒に休養しようってことかしら…」
「うん。以前に話していたから…」
そう、どこかでのんびり二人で過ごしたい。
アレサはレフトに話していた望みだ。
「それ…本気かしら。なんでまた急にそんな決断を…」
「魔法剣士に二度襲われて気付いたよ」
「ああ、再生会のね」
「そうそう。自分が狙われているってことがよくわかったよ。それの影響で周囲が傷つくのはつらい」
「私はあなたと一緒に行きたい。けど今は行けないわ」
「…そう…だよね」
「軍は大丈夫だけど、もし悪魔が再び襲ってきた時、指揮する者が不在だと…」
「それは心配ない」
突然、声がして病室の扉が開く。
「ごめんね、お二人さんを邪魔しちゃ悪いと思ってたのだけど…」
ニヤニヤとニナが言う。
オメガと二人でここに駐在するって言ってたっけか。
「アレサ、軍の事はわからないが、可能ならレフトと一緒にいてほしい。我々はしばらくシーキヨの近辺に駐在することになった」
急展開に驚くアレサ。
「私は…」
「レフトの事、頼んだわ」
「うむ、お互いにゆっくり休んでもらいたい。悪魔の事は皆に任せるのがよかろう」
オメガとニナの言葉が心に響くアレサ。
「レフト…私は…」
「どのくらいの期間かはわからないけど…」
二人の気持ちを察したニナはオメガと病室を後にした。
「ねえレフト、少し外の空気を吸いたいわ。表に出てみない」
スッと立ち上がり支度をするレフト。
「お散歩だね」
二人は病院の中庭にあるベンチまで歩いてきた。
「こんな穏やかな気持ちになれたのは久しぶりだわ。ずっと仕事だったから…」
「ああ、復興は大変だと思うよ。それを指揮しているアレサはすごいよ」
「機関の方々の協力があってこそよ。雑務をまとめて引き受けてくれるのでとても助かっているわ」
「もう一度聞いていいかな…」
「えっ…休養のことなら…」
アレサが答えようとした瞬間、
二人の間を引き裂くようにベンチが壊れた。
二人とも殺気を感じ、直撃は回避したが、何が起きたのかわからなかった。
「…最後の刺客…土の魔法剣士…か」
「つぶてのようなものを放った…そんな感じかしらね」
ベンチの破損部分を見て状況分析したアレサ。
「レフト…この件を片付けたら私はあなたと一緒にいくわ」
そう言うとアレサは静かに目を閉じた。
レフトは剣を病室に置いてきたため戦うことができない。
それを知ってか、レフトにめがけて無数の小さな石が放たれた。
それを衝撃波で粉砕するアレサ。
「レフト、離れないで」
「すまない…剣を」
「いいの。ここは私が何とかするわ」
警戒する二人の前に、ゆっくりと歩み寄る者がいた。
「姿を見せるとはたいした自信だな、名乗るがよい」
アレサは軍人口調になり問う。
「私はグラン。そこの復興機関レフトーラに用があります。シーキヨの者は下がってもらおうか」
「グラン殿、いきなり攻撃しておいてその言い草はなかろう」
「下がらぬならば二人とも拘束するまでだ」
グランは構えた。
大地が震え、周囲の土が浮上し塊となって二人を襲う。
「ちっ…ここは病院だぞ」
所かまわず暴れるグランにレフトは困惑する。
騒ぎにすぐさま病院関係者が駆けつける。
だが無数の土の塊が一斉に放たれ、周囲を無差別に攻撃、破壊する。
「歯向かう者は根絶やしにする」
狂気に支配されような攻撃で破壊される病院。
だが次の瞬間、一発の弾丸がグランの左肩に命中する。
「ぐあっ…だ、誰…だ…どこから…」
怯んだ一瞬の隙にアレサは距離をつめ渾身の一撃を腹部に放った。
「がっ…」
ものすごい一撃で後退りし倒れるグラン。
衝撃のショックでピクピクしているが、ここは病院なのですぐに治療ができるため命に別状はない
だろう。
周囲を見渡すアレサ。
三階にはニナがおり手をふっている。
それに手をふって応えるアレサ。
「申し訳ないです」
病院関係者に謝罪するレフト。
アレサはグランを起こして看護士に引き渡し後を任せた。
「私は軍に報告にいってくるわ。これで刺客は全部…よね」
「おそらく。アレサありがとう」
「いいの。後で病室に行くわ。またね」
再生会といういまいち全貌が見えない団体からの刺客は全て撃退したレフト。
戦線から離脱を決断したレフトの腕は果たして完治するのだろうか。
次回へ続く
彼の腕は不安定ながらも最低限の機能はしていた。
だが戦闘が続けばいずれは壊れてしまうだろう。
事実、レフトは無理して戦っており、いずれ腕が壊れるだろうとは感じていた。
「…あれ、起きたのね」
アレサが起きる。
軍のパレードで疲労していたのだろうか。
表情が疲れているように思える。
「…ここに来たのは少し身を潜めたいと告げるためなんだ」
「えっ…身を潜めるって休養するってことかしら」
「うん、しばらく戦闘を避け、落ち着いた日常を過ごそうとおもうんだ」
「そうなの。それを聞いて安心したわ」
アレサはお茶を入れてレフトに差し出す。
「ありがとう。アレサは長期の休養はできるの」
「私? もしかして一緒に休養しようってことかしら…」
「うん。以前に話していたから…」
そう、どこかでのんびり二人で過ごしたい。
アレサはレフトに話していた望みだ。
「それ…本気かしら。なんでまた急にそんな決断を…」
「魔法剣士に二度襲われて気付いたよ」
「ああ、再生会のね」
「そうそう。自分が狙われているってことがよくわかったよ。それの影響で周囲が傷つくのはつらい」
「私はあなたと一緒に行きたい。けど今は行けないわ」
「…そう…だよね」
「軍は大丈夫だけど、もし悪魔が再び襲ってきた時、指揮する者が不在だと…」
「それは心配ない」
突然、声がして病室の扉が開く。
「ごめんね、お二人さんを邪魔しちゃ悪いと思ってたのだけど…」
ニヤニヤとニナが言う。
オメガと二人でここに駐在するって言ってたっけか。
「アレサ、軍の事はわからないが、可能ならレフトと一緒にいてほしい。我々はしばらくシーキヨの近辺に駐在することになった」
急展開に驚くアレサ。
「私は…」
「レフトの事、頼んだわ」
「うむ、お互いにゆっくり休んでもらいたい。悪魔の事は皆に任せるのがよかろう」
オメガとニナの言葉が心に響くアレサ。
「レフト…私は…」
「どのくらいの期間かはわからないけど…」
二人の気持ちを察したニナはオメガと病室を後にした。
「ねえレフト、少し外の空気を吸いたいわ。表に出てみない」
スッと立ち上がり支度をするレフト。
「お散歩だね」
二人は病院の中庭にあるベンチまで歩いてきた。
「こんな穏やかな気持ちになれたのは久しぶりだわ。ずっと仕事だったから…」
「ああ、復興は大変だと思うよ。それを指揮しているアレサはすごいよ」
「機関の方々の協力があってこそよ。雑務をまとめて引き受けてくれるのでとても助かっているわ」
「もう一度聞いていいかな…」
「えっ…休養のことなら…」
アレサが答えようとした瞬間、
二人の間を引き裂くようにベンチが壊れた。
二人とも殺気を感じ、直撃は回避したが、何が起きたのかわからなかった。
「…最後の刺客…土の魔法剣士…か」
「つぶてのようなものを放った…そんな感じかしらね」
ベンチの破損部分を見て状況分析したアレサ。
「レフト…この件を片付けたら私はあなたと一緒にいくわ」
そう言うとアレサは静かに目を閉じた。
レフトは剣を病室に置いてきたため戦うことができない。
それを知ってか、レフトにめがけて無数の小さな石が放たれた。
それを衝撃波で粉砕するアレサ。
「レフト、離れないで」
「すまない…剣を」
「いいの。ここは私が何とかするわ」
警戒する二人の前に、ゆっくりと歩み寄る者がいた。
「姿を見せるとはたいした自信だな、名乗るがよい」
アレサは軍人口調になり問う。
「私はグラン。そこの復興機関レフトーラに用があります。シーキヨの者は下がってもらおうか」
「グラン殿、いきなり攻撃しておいてその言い草はなかろう」
「下がらぬならば二人とも拘束するまでだ」
グランは構えた。
大地が震え、周囲の土が浮上し塊となって二人を襲う。
「ちっ…ここは病院だぞ」
所かまわず暴れるグランにレフトは困惑する。
騒ぎにすぐさま病院関係者が駆けつける。
だが無数の土の塊が一斉に放たれ、周囲を無差別に攻撃、破壊する。
「歯向かう者は根絶やしにする」
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だが次の瞬間、一発の弾丸がグランの左肩に命中する。
「ぐあっ…だ、誰…だ…どこから…」
怯んだ一瞬の隙にアレサは距離をつめ渾身の一撃を腹部に放った。
「がっ…」
ものすごい一撃で後退りし倒れるグラン。
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だろう。
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「申し訳ないです」
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「いいの。後で病室に行くわ。またね」
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次回へ続く
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