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第一章
十二話 謎
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集落の一件はレフトが盗賊団の包囲網と戦力を削ぎ、行方不明だったカレンが戻り、暴走した主力を討伐した、という内容でレフトたちは機関へ報告した。
事実モンスター化したワルを討ったのはカレンだ。
当然のことだがカレンは機関から状況説明を求められている。だが本人に記憶があるのかは不明だ。カレンは機関の医務室で厳重に守られてレフトたちですら面会謝絶だった。しばらくして状況説明をする連絡を受けレフトは会議室へと向かった。
「失礼します」
ドアを開け入室する。
正面に三人の質問官らしき人物がいる。おそらくは情報課の幹部だろう。
カレンは疲労感こそありそうだが、以前のような禍々しい雰囲気は無い。
レフトは会釈し、質問官が指示した席につく。
質問官は手元の書類をお互いに確認して、この状況説明会が始まる。
「辺地にて十分な支援が無いなかでの活躍、ありがとうございました。多くの者が救われたことでしょう。被害を最小限に抑えた危機管理能力にはただ感謝です」
「時間が惜しい、私が覚えていることを話す。よろしいか?」
いきなりカレンが身をのりだししゃべり出した。質問官はうなずき手を差し出し許可した。
「すみません、いきなり大声で。私は鋼鉄のサソリという団体を追っていました。シーキヨを乗っ取る計画や世界を再建するだの物騒な噂があったからです」
「なるほど、確かに自警団を名乗っていますが、シーキヨはわりと安全でその必要性が疑われていますね。やっていることは破壊行為らしく、実体がつかめない」
「はい、何度か争いになったことがありますが、すぐさま逃走する為、普通に追いかけているだけでは言われているように全体が掴めませんでした」
カレンは淡々と説明を続ける。
レフトもシーキヨへ来てこの団体と衝突していた。あの時もすぐ逃走していたなあ~と思い出していた。
「そこで秘密裏に団体と接触して内側へ潜り込もうとしたわけです」
「なるほど。それで今まで潜入捜査をしていた、そういうことでしょうか」
質問官はカレンへ詰め寄る。
「はい、団体への忠義として仮面を渡されました。不思議なことにそれをつけてからの記憶がないのです。気づくと機関の医務室でした。その間私は何をしていたのでしょうか…」
質問官が問う場で本人が問う…というむちゃくちゃな展開にレフトは動じることなくただ話を聞いている。この状況で考えられる事は主に二つだと思う。
本当に記憶が無いのか。
カレンが嘘をつけているのか。
「それを我々が知りたいのです。カレンさん、あなたの功績や特殊部隊については評価しますがこれ以上機関に属して活動することは難しいです。申し訳ないですが、除名処分とします」
「!」
…まあ当然だろう。
部隊は全滅したのか、そもそもどこにいるのかすらわからず、本人の記憶も曖昧。
いくら仮面の効力とはいえ、殺人疑惑や破壊行為の噂まであり、機関の信用問題にもなるため妥当な判断だといえる。
「そうですか。私は悪いことをたくさんしていたのですね」
カレンの表情は暗い。
「まずは医務室でゆっくり休んでください。今後についてはまたご連絡致します」
カレンは席を立ち、一礼して医務室へ戻っていった。レフトも退室しようとしますが、質問官が話を始める。
「レフトさん、実はお話しておくことがあります。とても重要なお話です」
神妙な面持ちの質問官たち。
「何でしょう、カレンのことですか」
「はい」
「実はあなたが再び集落へ向かってすぐに、機関にある報告がありました」
「?」
「墓地内部でカレンさんの遺体が発見されました」
次回へ続く
事実モンスター化したワルを討ったのはカレンだ。
当然のことだがカレンは機関から状況説明を求められている。だが本人に記憶があるのかは不明だ。カレンは機関の医務室で厳重に守られてレフトたちですら面会謝絶だった。しばらくして状況説明をする連絡を受けレフトは会議室へと向かった。
「失礼します」
ドアを開け入室する。
正面に三人の質問官らしき人物がいる。おそらくは情報課の幹部だろう。
カレンは疲労感こそありそうだが、以前のような禍々しい雰囲気は無い。
レフトは会釈し、質問官が指示した席につく。
質問官は手元の書類をお互いに確認して、この状況説明会が始まる。
「辺地にて十分な支援が無いなかでの活躍、ありがとうございました。多くの者が救われたことでしょう。被害を最小限に抑えた危機管理能力にはただ感謝です」
「時間が惜しい、私が覚えていることを話す。よろしいか?」
いきなりカレンが身をのりだししゃべり出した。質問官はうなずき手を差し出し許可した。
「すみません、いきなり大声で。私は鋼鉄のサソリという団体を追っていました。シーキヨを乗っ取る計画や世界を再建するだの物騒な噂があったからです」
「なるほど、確かに自警団を名乗っていますが、シーキヨはわりと安全でその必要性が疑われていますね。やっていることは破壊行為らしく、実体がつかめない」
「はい、何度か争いになったことがありますが、すぐさま逃走する為、普通に追いかけているだけでは言われているように全体が掴めませんでした」
カレンは淡々と説明を続ける。
レフトもシーキヨへ来てこの団体と衝突していた。あの時もすぐ逃走していたなあ~と思い出していた。
「そこで秘密裏に団体と接触して内側へ潜り込もうとしたわけです」
「なるほど。それで今まで潜入捜査をしていた、そういうことでしょうか」
質問官はカレンへ詰め寄る。
「はい、団体への忠義として仮面を渡されました。不思議なことにそれをつけてからの記憶がないのです。気づくと機関の医務室でした。その間私は何をしていたのでしょうか…」
質問官が問う場で本人が問う…というむちゃくちゃな展開にレフトは動じることなくただ話を聞いている。この状況で考えられる事は主に二つだと思う。
本当に記憶が無いのか。
カレンが嘘をつけているのか。
「それを我々が知りたいのです。カレンさん、あなたの功績や特殊部隊については評価しますがこれ以上機関に属して活動することは難しいです。申し訳ないですが、除名処分とします」
「!」
…まあ当然だろう。
部隊は全滅したのか、そもそもどこにいるのかすらわからず、本人の記憶も曖昧。
いくら仮面の効力とはいえ、殺人疑惑や破壊行為の噂まであり、機関の信用問題にもなるため妥当な判断だといえる。
「そうですか。私は悪いことをたくさんしていたのですね」
カレンの表情は暗い。
「まずは医務室でゆっくり休んでください。今後についてはまたご連絡致します」
カレンは席を立ち、一礼して医務室へ戻っていった。レフトも退室しようとしますが、質問官が話を始める。
「レフトさん、実はお話しておくことがあります。とても重要なお話です」
神妙な面持ちの質問官たち。
「何でしょう、カレンのことですか」
「はい」
「実はあなたが再び集落へ向かってすぐに、機関にある報告がありました」
「?」
「墓地内部でカレンさんの遺体が発見されました」
次回へ続く
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