ファンタジー/ストーリー

雪矢酢

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第一章

十一話 闘気解放

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殺気を感じてとっさに構えるレフト。
怪しげでいかにも呪われていそうな仮面をつけた剣士が襲いかかってくる。なかなかの剣術ではあるがレフトは難なく回避し攻撃は当たらない。

「ほう、まだこんなのがいたのか」

仮面の剣士は剣を構え集中する。
するとオーラのようなものが発生し身体を包み込んだ。

「やめろ、闘気を解放したらここがさらに荒れるぞ」

「なるほど、そこらの賊とは違うようだね、面白い」

仮面剣士は剣を両手持ちにしてレフトに斬りかかる。
レフトは太刀筋を先読みカウンターにて応戦。
仮面剣士はカウンターに対応できず大ダメージを与える。
仮面剣士の刃がレフトにかかる前に強烈な突きが腹部に命中しており仮面剣士は激しく嘔吐し倒れ込む。

真剣だったら即死だろう。
だが、鞘に入った剣は鈍器そのものでありこれはこれで痛い…痛打といえるだろう。

「…うぐぅ…貴様…何者だ」

「レフトーラだ。カレン、目を覚ませ」

「レフトーラ?」

するとカレンは急にもがき苦しむ。
おそらく仮面だろう。
意志や記憶など人の全てを仮面が制御しているようだ。
やがてショックで気絶してしまう。

「なぜここにカレンがいる?」

行方不明だった機関の者がシーキヨ外れの集落で発見された。

磔にされた長はすぐさま緊急治療され命は救われた。モモの的確な判断により被害は少なく多くの人命が守られた。
モモはレフトにここで起こったことを説明した。

「レフトさんが機関へ報告へ行ってすぐに入れ違いでワルが再び襲撃してきました」

「ふむ」

「ワルはモンスター化しており、腐敗したゴムのような身体でした。長が痛めつけられてあのようになりました」

「モンスター化しても意識があったのか」

「はい、一緒にいた科学者っぽいのがあの盗賊団の黒幕です」

「なるほどね、冷静に事を進めていたが、ワルとカレンにやられたか」

「だいたいそんな感じです。エスカレートするワルの横暴に味方ですら警戒し、そして裏切られた…悪党の末路ですね」

カレンは偶然ここを通りかかったのか…
あるいは…
水がめに関係しているのか。

「まあ仮面が取れないと本当にカレンなのかわからない。剣術は少々カレンのものとは違ったが…」

突然仮面の剣士を休ませていた部屋から争う音が聞こえる。

何かが起きた。

急いで現場へ向かうレフトとモモ。

ちょうど部屋から外に出た仮面の剣士は、
抜刀しており刀身には血液がついていた。

「人を…斬った…か」

レフトは静かにつぶやく。
剣士はレフトやモモを敵と認識したようで
剣を構える。

「レフトはん、もう以前のカレンさんとちゃいますわ、腹をきめや」

モモの大声が集落に響く。
レフトも剣を構える。

「さっきは見事だったが二度はない」

剣を強く握り集中する。
レフトはその殺気を感じて危機を察知する。

「バカヤローが、ここらを吹き飛ばすつもりか。モモ避難だ、すぐにここから逃げてくれーっ」

モモは即行動し、大きく手を振り残っていた人々を退避させる。

レフトは剣を地面に突き刺しゆっくりと目を閉じる。

剣士は叫びながら闘気を解放。
すさまじい衝撃波が周囲に発生するが、
レフトが展開した魔法陣に全て吸収される。剣士は何が起こったのかわからない表情でキョロキョロしている。
剣を引き抜いたレフトはその勢いで縦に振る。先ほどと似たような衝撃波が剣士に直撃する。
剣は砕け仮面も粉々、素顔は美しい女性だ。

「…カレン」

モモはカレンの元へ駆け寄り応急措置をする。

「さすがレフトさん、素顔は無傷です」

「…」

行方不明の者が何故ここにいたのか。
さらに人を殺めてしまったのか。

レフトはひとまずカレンを抑えたが、集落はひどく荒れてしまった。モンスター化したワルはおそらくカレンが討ったのだろう。周囲をよくみるとゴム質の肉片がそこらに散らばっている。

ゲーハの行方はわからない。
ゆっくりカレンを起こし二人は休める部屋へ入る。

「カレンの剣は正確な突きがメインだったんだ。例えば腕の急所を突くことで抵抗力を容易に奪い相手を無力化、それを連続でこなせば地区の制圧や争いを簡単に終結できた。一対多数に絶大な強さを発揮していたんだ」

モモは処置をしながらレフトの話をきいている。

「そんな強者が何故あんな怪しい仮面をつけていたのかしらね?」

「そうね、ちと力みすぎてしまって…」

勢いあまって仮面を破壊してしまったレフトは申し訳なさそうである。

そんな感じの会話中、突然カレンが目を覚ます。

「ここ…は」

荒々しさはなく、これが本来のカレンなのだろうか。

「レフト? あんたここで何を?」

「ちょっとあってね。それより身体は大丈夫?」

カレンはゆっくりと身体を起こす。ところが痛みがあるのだろう、表情が険しい。

「今は休んだほうがいい」

レフトはそう言うとカレンを支え、寝かしつけた。

次回へ続く

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