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第ニ章

十話 愛を感じる時

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「そう」

「承知しました」

診療所に集まるレフトたち。
夜になり激務から解放されるホープ。
ヴァンが食事を用意し皆が食卓を囲む。

レフトはみんなに復興機関を離脱したことを伝えた。
どうであれレフトはレフトであり、機関だろうが関係ない。

「今頃、機関は大変でしょう。レフト様の後を継げる者は存在しないでしょうし…」

「はっきりしているのは、今後は復興機関が敵になる可能性があるってことね」

アレサは冷静に状況を整理する。

「そうですね。我々は一国の軍隊以上の戦力があるかもしれません」

「ちょっと、我々って…ここで争うのは止めてちょうだいよ。協力はするけど診療所は集落にとって必要なのよ」

「ここは今後、俺が守る」

キバが集落の警備隊を組織するようだ。

「レフトーラ君はとにかくその翠の宿?ってところへ行くことをすすめるわ」

「そうね、宝珠のことやドラゴンも気になるけど情報がないわ。ならば確実なところからいきましょう」

見えているところから潰していくというアレサの提案は実にシンプルである。

「ですが、翠の宿なる場所はかなり危険だと思います」

「…制御不能の兵器が徘徊しているわけだものね」

レフトはリバスの記憶がよみがえる。
再びリバスのようなアンドロイドがいたら…。

「レフト…」

アレサも同様にレフトを止められなかった記憶がよみがえる。

「…」

そんな二人を心配するヴァン。


「ねえちょっと、暗いのよ、あなたたちは!」

気まずい雰囲気をホープが変える。
このメンバーはなんだかんだでバランスが良い。
明日、レフト、アレサ、ヴァンは原生林の東南部にあるらしい翠の宿へ向かう。
キバは診療所に残り見張りを続けるとのことである。
ホープは自室へ戻りヴァンとキバは夜の見回りへ出かけた。
つかの間ではあるがレフトとアレサには二人の時間ができた。


「ねえレフト」

「ん」

「私はどこまであなたについていくわ」

「えっ…急にどうしたの?」

「私はあなたを止められなかった」

「…」

アレサはうつむく。

「暴走したら叩き伏せようというくらい覚悟を決めていたの…だけど……だけど…」

泣き出したアレサを抱きしめるレフト。

「もう…大丈夫だよ、大丈夫」

「あの時、あなたは…泣いていたわ」

「…」

「ごめんね…私……涙を見たら動けなくなってしまったの」

「人間は矛盾しているよね」

「えっ…」

「リバスが突然討たれてかなしみ、討ったライフを憎み怒った。相反する感情が停滞して、自我を失っていたんだ」

「ねえレフト」

「ん?」

「リバスのこと、好き?」

「えっ…」

「…私…リバスの気持ちがちょっと理解できたの」

「…」

レフトの手にアレサは自分の手を重ねる。

「もしその宿にリバスがいるのなら私は……」

「アレサ…」

アレサはレフトが持つ剣を指差す。

「リバスを選ぶならその剣で私を…」

「やめてくれっ」

突然大声を出すレフト。
この時間にやや近所迷惑である。

「アレサ、うちらは夫婦だよ」

「…」

「ごめん不安にさせちゃったね」

レフトはアレサの手を握る
するとアレサの瞳から涙が流れる。


私は……愛されている。


アレサはレフトの優しさをその身に感じた。
悪魔だとか人間だとか関係ない。


「ふっふ」

「どうしたの急に笑って」

「私は人間を憎んだわ。絶滅してしまえばいいとすら思ったわ。だけどその人間をまた好きになり愛を知った」

「…」

「私は信じることが怖かったけど、あなたを信じたい」

「うん、信じたまえ」

「ふっふっふ、何それ」

笑顔が戻った。


「リバスがいようが信じてほしい。うちら夫婦の絆を」

「絆…」

「それに今後の状況次第だけど復興機関が敵になる可能すらある」

「ええ、それは私も気になっていたわ」

「機関の相手はさすがにきつい。それに…」

「そうね、オメガや嬢ちゃんとは戦いたくはないわ」

「…魔封剣はジジさんに預けているよ」

「わかったわ。だけどその剣も劣らず凄まじい力を感じるわ」


するとホープが現れ呆れた様子で話す。

「もう、いい加減に寝なさいよ。アレサは無理しちゃダメ。レフトーラ君はアレサをとめなさいよ」


ガミガミと説教が始まる。


つかの間の夫婦の時間であった。



次回へ続く


「レフト…ありがとう…」








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