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第一章

十三話 二人の女子

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……夢か。
ここは夢の中か…。


夢を見ているということは…また寝ているのか…。


夢の中で自我を保つことは難しい。
そもそも睡眠は突然始まる。
眠い眠いと思っていると、突然睡眠がスタートする。
よって、見ているモノがすぐに夢であると理解するのは困難である。


「……なんだ」

目の前に人形がある。
それはいきなり魔力を解放してレフトに襲ってきた。

「ちっ…魔力を解放したことで戦闘に意識がいったということか……」

ゾルムの協力により絶大な魔力を解放したことでレフトの精神は揺れている。本来は少しずつ意識を戦闘にむけさせる方法が望ましい。だがアレサの強引な指導により、レフトは一気に機関の頃に立ち戻った…気持ちだけは…。

精神と肉体は気持ちと乖離し、不安定になっている。
ホープはこれを恐れていた。


人形は激しくレフトを攻撃する。
ダメージこそ無いが、これが現実であった場合、レフトは完敗だろう。
反撃し応戦しているレフト。

「攻撃が…当たらない」

人形が素早い訳ではない。
レフトが弱すぎるのだ。

人形は構え、より洗練された魔力を解放した。それはレフトが放つ蒼い魔力そのものだ。

「なるほどね…こりゃ勝てる気がしないわ」

膝をつき、屈するレフト。
そこに魔力をまとった人形が近づく。
己の現実を突き付けらたようだ。
人形は攻撃をすることはなくレフトを見ている。

「よくわかった。自分のおかれている立場を理解した」

レフトがそう言い放つと人形は消え、同時にレフトは倒れた。



コンコン。
扉をノックする音がする。
寝ていたアレサが起き上がり応対する。

「はい…」

「ミーナです。ちょっとお時間よろしいですか」

「ええ」

扉を開け中へ招くアレサ。
一礼してアレサについていくミーナ。
以前と違うミーナの様子にアレサはすぐ気づいた。

「どうぞ、座って」

「ありがとうございます」

「ミーナ、顔に活気があるわね」

「え、そうですか」

「じっくりみていたわけじゃないけど、前とは違う印象よ」

「前向きになれる気がします。正直、私は先が決まっていました」

「ごめんなさい。それより用があったのでは?」

「ああ、そうでした。これこれ」

するとミーナは広告のような用紙を取り出しアレサに渡した。

「…闘技大会の案内?」

「はい、レフトさんのリハビリにどうだろうとレオが…」

「…武器の使用は認めるが魔法は禁止…」

「細かいルールがあるようで、それがレフトさんにはぴったりなのでは?」

「…参加させるわ」

「え、レフトさんに聞かないでいいんでしょうか?」

「大丈夫よ。任せて申し訳ないけど参加するよう手続きしてもらえるかしら?」

「それは構いませんけど…」

「賞金の一割を手数料として渡すわ」

「そんな、なんかレオも参加するとか言ってましたよ」

「レフトが出れば、まず彼が優勝するわ」

「それはそうでしょうけど……おそらくレフトさんは手加減しますよ。そんな感じがするわ」

「くっ…ミーナ、さすがね。よくわかっているわ」

「日頃の鍛練の成果を発揮するのがこの大会の主旨でしょうから。武人のような方と相対したら…」

「甘いのよねレフトは……」

アレサの考え込む姿を見て笑うミーナ。

「何よ、笑うようなこと言ったかしら?」

「ごめんなさい。アレサさんはとても強くてちょっと怖いイメージがあったのですが…」

「私が怖い?」

「それが話すとそんなことなくて。普通の女子だなと…」

「ふっ…女子か」

うつむくアレサを見て、戸惑うミーナ。

「変なこと言ってしまったらごめんなさい」

「いえ、ミーナ。私、嬉しくて」

「アレサさん、大丈夫ですか」

「うん、私、仕事が忙しくて友達との時間はほとんどとれないのよ。だがらここにきていろいろ考えさせられるわ」

「そうですね。ここは本当に良い集落です」

「大会の手続きはお願いね」

「はい、戦う男子を二人で応援しましょう」

「ふふ。そうね」



和やかな会話をした二人。
戦闘モードに立ち直れないレフトだが、それはアレサも同じだろうか。

闘技大会。

何かありそうなこの大会は五日後の開催である。

次回へ続く
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