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第一章

十一話 魔と人が交わる存在

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ダルガ教のアジトらしき施設を爆撃し見事四天王を倒したフラットたち。
だが、フラット本人、マーガレット、さらにアレサが重傷を負う。
怪我人を飛空艇に運び、レフト、ニナ、オメガの三人は施設の地下へと向かった。

「うむ、ここは…本拠地ではないな」

オメガは地下室の様子からそれを察する。
地下は穴を掘り出したような簡素なつくりだ。

「爆撃がすごかったのかな?人がいない」

「うむ、確かに地上を一掃するほど爆撃は凄かった…だが…」

「人の気配が全くしないのよね。まるで危険を察知して逃亡したというか…」

ニナは銃を手にし奇襲に警戒している。

「ヴァンを連れてくればよかったかな…はは」

レフトは笑いながら話すがニナとオメガの冷ややかな視線をあびる。

「うむ、ヴァン殿は実に優秀である。ぜひ機関に」

「あなた、彼に頼りすぎて注意力がなくなってるんじゃないの?」

「…」

久しぶりに組んだ三人は、ついつい会話に夢中になり、突然拓けた場所に出たことに気づかなかった。


「んっ」


周囲の異変にニナが気付く。
目の前には巨大な魔法陣が描かれており奥には祭壇がある。
どうやらここは何かの儀式を行うところのようだ。

「うむ、すまない、気が緩んでいた」

「いや、誰の責でもない、ここは…」

レフトは周囲を調べる。

「ドルガは…いないわね」

奥から声がする。



「足りない」



奥にある祭壇から魔術師らしき人物が転移してくる。
四天王と同じく白いローブを纏っている。


「足りない…エターナルたちだけでは…」


魔術師は祭壇にある鏡のようなものに話しかけている。

「魔造鏡か…」

ニナが確認する。
すると魔術師は杖を召喚しニナに火の玉を放つ。


「ついにここまで来たか」


「その鏡は破壊するわ」


ニナは氷の弾倉を装填し放つ。
銃弾は火の玉を打ち消し貫通、そのまま魔術師の杖に命中する。


「ふお…き、きさま…」


杖を持つ右手ごと凍りつき魔術師は戸惑っている。
すぐにオメガとレフトが拘束にかかる。
二人の接近に何かの覚悟をした魔術師は左手で凍っている右手を切断する。


「なっ」


「うむ、一旦距離を」


「ぐふ、せめて我の…我の血を…」


魔術師は切断された右手を振り回す。
血が魔法陣に飛び散ると不気味な笑みを浮かべる。
その奇行に危険を察知したニナ。


「ちっ、いろいろ聞きたかったけど…」


素早く弾倉を再装填し魔術師の急所に狙う。
後退した二人はニナを中心に身構える。


「射つんだ」

「ニナっ!」


ニナは二人の声を聞き弾を射つ。
魔術師は何かを仕掛けようとしたが、ニナに急所を撃ち抜かれ祭壇後方へ倒れた。


「……命中は…した」


「ニナ、助かったよ」


「うむ」


三人はゆっくり祭壇へ向かう。
不気味なくらい静かな空間に足音が響く。


「むっ」


殺気を感じたオメガは左腕でニナをかばった。
腕には二本の短剣が命中しており、それは彼女を狙ったものだった。


「オメガありがとう」

「うむ、やはりもう一人いる」

「…二人とも…側に…」


…アサシンか。
見えないのならここら一帯を吹き飛ばす。

身構えるレフト。

「レフト…ここらを吹き飛ばすつもり?」

レフトの考えをすぐに察するニナ。
オメガはレフトの顔をみる。

「加減はするよ」

するとレフトは魔力を解放した。
地下室は激しく揺れ、祭壇はガタガタと音をたて松明が倒れ木製品に引火。


「ちょっとレフトっ」

「うむ、以前とは桁違いだ。このままだと…ここは崩落する」

レフトはゆっくりと前進する。
祭壇上にあった魔造鏡に炎を放ち融解する。
宿っていた魔力は液体となった鏡ととも消滅。
鏡の消滅と同時に魔術師の血が反応する。
そして魔法陣が怪しく発光する。
何かの危険を感じたレフトは二人を退避させる。


「二人とも外へ退避を。よくわからない魔法陣が起動したみたいだわ」


「うぬ、魔造鏡が何かのストッパーになっておったか」


「騙し討ちやトラップ、さらにはアサシンとか…もう最悪だわ」


「ひいぃぃ」


隠れてニナを奇襲したアサシンが姿を現す。
悪魔らしきその者はオメガたちと一緒に逃亡。


「ちょっと、あんた誰よ」

「後で全て話します。今はとにかく逃げましょう、魔人が起動します」

「魔人だとっ!」

魔人という言葉に反応するオメガ。

「何?魔人?」

ニナがオメガに聞く。

「悪魔と人を魔力と機械で無理やり合成させた兵器だ……」

「魔人はボスが魔法陣の中に隠し、ここぞって時に起動するよう魔術師に指示してました」

「あんた、よくしゃべるわね…」

「あっしは悪魔でして。悪魔はもともとよくしゃべりますぜ、姉さん」

「…なんなのよ、こいつの強引な一体感は…」

「うむ、友好的で助かる。とりあえずおぬしをヘルゲートへ連れていく」

「へい、あっしはジホウといいます」




三人は地上に出て直ぐに飛空艇へと退避。
二人はザギに飛空艇を浮上させるよう頼んだ。
そして中ではレフトが単身残って戦っていることを伝えた。


「最近は獣人に竜人、さらには幻獣、そして魔人……本当に懐かしいわね?オメガ」


「うむ、まるで昔のようだ」


デッキで会話するオメガ、フラット、アレサ。
ニナはザギと操縦室にいる。
マーガレットは具合が悪いようで部屋にて休憩中だ。

「魔人か…かつてヘルゲートにも出現した」

「えっ」

「うむ」

驚くアレサ。

「あんた、魔人を倒したの?」

「ああ、魔法陣に封印していた団体が誤作動を起こしてな…アレはかなり強かった」

「うむ、さすがだ。見事」

「マーガレットも一緒だった。アレは一人ではきびしい。レフトーラは本当に大丈夫なのか」

「うむ、大丈夫だ。場所的に三人で戦うのは難しい。地上に出てきたら援護にいく」

「魔人を倒したのが事実なら最後の一体ということね」

「…最後の?」

「魔人は確か三体いるって話だったわよね。私たちも一体倒しているから、あんたが倒したってなら残りは…ここにいる一体…」

「うむ」




地下では…。


…これでみんなを巻き込む心配はない。

地下は炎が広がり祭壇は激しく燃えている。
その炎を魔法陣が吸収している。


「仕上げだ、我を吸収するのだ…」


炎上する祭壇から魔術師が飛び出し魔法陣に取り込まれた。


「くっ…まだ息があったのか」


魔法陣の発光は止まり陣から化け物が現れる。
四本指から伸びる鋭い爪。
頭にある二本の角が魔力の器らしく強烈なオーラを放っている。
背丈は人と変わらない。
どこか不気味な外見が人外であり悪魔とも異なる。
獣のような顔がレフトを見つめる。


「強者よ、名を聞こう」


「レフトーラ」


「レフトーラ、我はデボロス。人と悪魔によって造られた魔人という存在である」


…見た目は化け物だけど高度な知性があるみたいだね。

レフトは身構える。


「待てレフトーラ。我と共に戦わんか?」

「…」

「我は人と悪魔を愛しておる。そしてこの忌々しい魔法陣に封印した憎きアイツと悪魔ドルガを憎んでおる」

「アイツ?…言いたいことはそれだけかい?」

「ふむ、分からぬか?我々は戦う理由がないのだ。戦う相手は世界の平和を脅かすこの教団、つまりそれを率いているドルガであろう?」

「ドルガは既に致命傷を負っている、それに教団の四天王と呼ばれる者たちも倒れたよ」

「なるほど、だが教団はそう簡単に滅びはしないぞ。そなたが思っている以上の戦力があるのだよ」

「…」

「我とそなたは似ておる」

「似ている?」

「そなたからは何故か瘴気を感じるぞ。お主と似た人物を知っておるが……人であるが人にあらず。ならば悪魔か?」

「どうだろうね…どっちでもないのかもね」

「そうだ、どっちでもないのだよ。そなたらは我と同じ、魔人という存在なのだよ」

「魔人ねえ……」

炎は鎮火しており一部倒壊しているが地下はひとまず崩落の恐れはない。


「受けて立つぞレフトーラ」


デボロスは刀を召喚しゆっくりと抜刀する。

「これはカイトの技術者が造った斬魔刀。この刀の前で魔法は使えない。文字通り魔力を斬ることが可能だからだ」

刀を振り華麗に構えるデボロス。

「ふっ」

レフトはそんなデボロスを鼻で笑い魔力を解放する。


「な、なんだ…と」


再び地下は激しく揺れデボロスは怯えている。


「魔力を斬る?ならばぜひみせてもらおうかな」


レフトは魔力をさらに高める。
身体が浮上し地下は激しく揺れ崩れ始めた。

「ここはもうダメだ。上いくよ」

レフトは魔人の首を掴み急上昇する。
魔人は無抵抗で脱力しているが顔は笑っている。



次回へ続く。

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