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第一章

序幕

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大陸にある各国が歩み寄るきっかけにと、復興機関は秘密裏に使者や密使を世界中に走らせていた。
そして開催された会合だったが、悪魔を崇拝する謎の組織に襲撃されて復興機関最高司令オールは帰らぬものとなってしまった。
機関とヘルゲートの連携により組織の騒動は鎮圧されたが、世界は謎の組織に対抗できるのか。
そして組織の狙いはいったい…。
物語は組織の襲撃により急展開となる。




ダークパレスにて

ヘルゲートを統治する者たちが住まうとされている宮殿。
宮殿の周囲はレフトがいた頃とは激変していた。
ならず者がたむろし、力が絶対であった荒れた光景は消え失せ、整備され手入れされている緑道や外観はより洗練されている。
権力保持の理由からどぎつい装飾が目立っていたが現在は美しさと性能を合わせた機能美を中心にリフォームがされ、巨大化した入口にはより多くの者が訪問しやすいように所々に工夫がされている。



「うむ、これほどとは…」

「ほんと…これはレフトがみたら卒倒するわよ…」

「まあそうだろうよ、いろいろあったからな。ほらいくぞ」

オメガ、ニナ、そしてガルシアは復興機関代表としてパレスに出向いていた。
宮殿内部は空間を巧みに使い、広々としつつも精密な受付窓口など、復興機関の受け付けとは比べ物にならない。

「…すごいわ」

「うむ、ここは大陸一の建造物やもしれん」

「失礼、復興機関である。取り次いで頂けると助かります」

ガルシアは受付に対応をお願いする。
荒々しいガルシアだが、節度がある人間へと成長しているようだ。

「ふっ」

「うむ」

その様子に笑う二人。

「あ?なんだよ気持ち悪いな」


「あんた、丸くなったわね」

「えっ」

ガルシアの肩をポンポンと叩くニナ。
それの手を恥ずかしそうに払う。

「う、うるせえな…」

「えっと…復興機関の皆様…よろしいでしょうか」

「これは失礼」

受付が三人に話しかける。

「奥、三番の部屋でお待ち下さい」

「取り次ぎ感謝します。では」

一礼し部屋へ向かうガルシア。
二人も受付に会釈しあとについていく。
この通路は人がいない。
指示された部屋はシンプルな商談部屋といったところだ。

「ふう」

「さてさて」

「うむ、進展があればよいが」

適当な椅子に座る三人。
すぐに部屋をノックする音がしてフラットと、細身の女、そして最後にガチムチの男が入室してきた。

「復興機関の皆さんお疲れ様です」

機関の三人に挨拶するフラット。
その対応にすぐに立ち上がるガルシアだが…。

「ふふ、お構い無く。堅苦しい挨拶はいらないわ」

そういうと細身の女も適当な椅子に座る。
ガチムチ男は一礼し同様に座る。

「うむ、いつかは親書で世話になりました。気付かず失礼を」

「いえ、こちらこそ名乗らず申し訳なかったです、私はマーガレット、ふふ、以後よろしくお願いします」

「オレはバルタ。オメガ殿、腕前は聞いております。だがアンドロイドというのはどうも信用できなくて……近いうち手合わせ願いたいところで…」

ガチムチはイキってオメガを挑発する。
その行為にマーガレットは瞳を閉じてバルタの口を勢いよくふさぐ。

「がはっ」

「無礼だぞ、バルタ」

「も、申し訳ないオメガ殿…」

重苦しい空気がただよう。
ニナもとっさに銃を構え室内は一触即発であった。


「お前は相変わらず血の気が多いな…まあ許してやってほしい。さて本題を…」

動じることなく淡々としているフラットはポケットから三枚の写真を取り出しテーブルにひろげる。

「うむ、これは」

皆がその写真に集まる。
荒れ地に薄暗い岩のような物体が写っている。

「邪神ダルガニス崇拝組織の潜伏先と思われる場所だ」

「ダルガニスだとっ」

オメガが突然大声を出す。
普段冷静なオメガの珍しい行動に驚くニナ。

「ちょっと、いきなり大声はびっくりするでしょっ」

「うむ、すまない」

「ふふ」

「オメガ殿、ダルガニスを…知っているのですね?」

「うむ」

「…ダメだ、話についていけねえ…」


みんながオメガに注目する。


「これで組織の正体が判明した。悪魔崇拝組織はダルガ教である」

「ダルガ教?」

誰もがその名を知らない。

「ダルガニスという未知の存在、邪神と呼ばれる神をこの世に降臨させようと各地で騒ぎを起していた狂気の集団だ。とっくの昔に滅びたはずなのだが…」

「報告書ではこの集団、かなりの規模と書いてあるぞ。武力による大陸支配のタイミングを狙っており、その戦力は人やモンスターなどの混合部隊や特殊な道具や武器、防具を所持している模様…とある」

資料を読み上げるフラット。

「うむ」

「ふふ」

「なるほどね。その邪神教をみんなで退治しましょうってことかしらね」

ニナがフラットをみる。
ゆっくりうなずくフラット。

「ヘルゲートは変わった。ミミズク殿やバイオ殿の尽力により復興機関との強い友好関係がつくれたんだ」

「…えっ…そうなの?」

ニナはガルシアを睨む。

「お、おう。フラット殿はよく機関に訪問されミミズクさんやバイオ様と議論を…二人はヘルゲート出身だから意気投合…」

「だったら何故報告をしないのよっ!!」

ニナはガルシアを怒鳴り問いつめる。
そんなニナの肩に手をおきフラットが話す。

「ニナ殿、あなたも知っての通り、ヘルゲートにはヘルゲートのやり方があるのだ。ここの機関はそれを理解し尊重してくれている。だからこそ環境を変えることへの協力が得られ国内の浄化は成功したのだ」

ゆっくりとした口調で話すフラットの言葉で落ち着くニナ。

「……わかったわ、怒鳴ってごめんなさい」

「お前たちが本部に戻り、さらにレフトが抜けたと報告があった時、オレはミミズクさんに本部へ連絡し応援要請を進言しただ」

「うむ」

「ふふ、皆様、思い出話に熱が入っておりますね。ですがそろそろ本題に入っていただきたいですわ」

「マーガレット、軌道修正ありがとう」

フラットはオメガをみる。

「うむ、失礼した。この教団組織は未知の存在であるダルガニスのためなら命を捨てたり、強奪などを躊躇せず実行するということである。正体が判明した今、個人的にはそのアジトと思われる場所へ攻め込むべきだろう」

「えっ、ちょっとオメガ、何言ってんのよ、偵察してからのほうが…」

ニナの意見を振り切りオメガは話す。

「フラット殿」

「なんでしょう?」

「おそらくこれは罠です。敵は捕虜にわざと写真を見せるよう洗脳したのです。おそらく策士がいる。その者の裏をいかねば……我々は負ける…」

「…」


全員が沈黙する。


「敵はこちらを、ニナの言うように偵察を出して様子をみるだろうと思っているはず。だがそれでは敵が次の一手を出す時間を与えてしまうことを意味する。その考えての裏をいかねばならんのだ」

「なるほど、一理ある」

「ふふ、先制攻撃かしらね」


罠だ?
さすがにそりゃ深読みしすぎだろ?
ニナの言う通り、優秀な派遣課の連中を飛ばせばいいだろ?
ガルシアはそんなことを思う。


「うむ、フラット殿、場所を教えてほしい」

「オメガ殿がいくと? …奇襲といい、策士といい、何か隠しておられるな?」

「…ちょっとオメガ?」

「うむ、事を急ぐのには訳があるのだ」

「ふふ、動くにしても最低限のことは教えていただきたいですわね」

「敵の重鎮であろうドルガというものが、現在は戦闘不能であること、そして大陸全土の戦いになる前に決着をつける必要がある。時間がかかれば敵の武力はどんどん増大していく…そうなれば手がつけられない」

「奇襲には奇襲…か」

「ふふ、仕返しですねゾクゾクしますわ」

「オメガ…」

「うむ、復興機関からは私が行く」

「ちょっとどういうことよっ!」

「時間はないが検討されよ。二日後に支部にて答えを」

オメガはそういうとガルシアとニナを連れ部屋を出た。





ヘルゲート支部会議室にて。


「あっちゃ……」

ミミズクは腕を組み渋い顔だ。

「納得いかないわよオメガ」

「そうだ、一人で行くだ?…そんなんみとめねえぞ。うちらは仲間だろうが」

ニナとガルシアは荒れている。
オメガは鎮座し目を閉じている。
部屋には報告を受けたミミズクとバイオがいる。

「うふふ、ひとまず組織のことはおいておき。ニナさん、珍しいですわね?」

「えっ」

「うむ」

「ニナさん顔色…悪いですよ?」

ミミズクがニナの顔を覗き込む。
そして手を額に当てると…。

「すごい熱ですよっ!」

「……あれ…」


そしてニナは倒れた。





ヘルゲートを襲撃した組織、ダルガ教のアジトらしき写真が出てきた。
そして今こそ攻撃のチャンスというオメガ。


謎のダルガ教とは?



大陸に迫る危機、だがその時ニナは突如倒れてしまった。
ヘルゲートは復興機関と協力しアジトへの攻撃を受け入れるのか。
大陸の危機に各国はどう立ち向かうのか。



次回へ続く。
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